第6話 撤退1
月光昇Side
アリシア様や聖女達の救出に成功、そして無事に街からも脱出する事が出来た。
俺達はこのままアリシア様の案内の下、この地域からの脱出を図る。
『現在私達の居る此処は魔族の支配地域で危険だ、まずは魔族の支配するこの地域から離脱する必要がある』
アリシア様がちょっとした説明をしてくれた。
ちなみに俺がこの世界の人間ではない事は既にルナ様から女神様達に知らせている。
「ちなみに他に捕らわれている女神達は?」
『捕まったのは私達だけ、クロエの他に捕まった重要人物も居ないよ』
『敗走はしてるみたいだけれど』
『誰のせいよ!誰の!』
アリシア様との会話に混じり念話でワーワー話し出すルナ様とノルン様。
なんだかんだ互いに仲良さそうだし、今の感じも楽しそうなので良かった。
「ジョンさん、改めてお礼を、助けて頂きありがとうございます」
「クロエさんだったか、気にするな」
「そういう訳にもいきません、それと私の事は親しみを込めてクロエと呼び捨てで構いません」
「なら俺もジョンと呼び捨てで良い」
「はい!よろしくお願いしますねジョン!」
笑顔のクロエを見て素直な良い娘だなと思った。
クロエの着る服はアリシア様から与えられた神聖な法衣らしく、白色のそれを着る彼女には凄く似合っていた。
ルナ様達もそうだったが奴隷の服を着せられていた訳ではなくそのままの装いで囚われていた為に少し服が傷んでいた。
アリシア様曰くそういった服で最後に穢されればより深い絶望を与えられるからだろうとの事。
特に聖女であるクロエとかは【女神に選ばれた聖女】と言う強い思い入れがあり、その特徴とも言える法衣姿のままの方が強く意識させられるからだろう。
それを偶然とはいえ未然に阻止し悪魔達の力の増強を防げたのは大きい筈だ。
今のうちに此方の戦力を揃えておきたい所か。
とは言え、アリシア様達の脱走が判明するのも時間の問題だ。
脱走に気付いた悪魔側は直ぐに追っ手を放つだろうし、より一層強く攻め入って来るだろうから速い所アリシア様達の仲間と合流して迎え撃つ準備をしたいがそう上手くいくだろうか。
此処で悩んでいても仕方ない、今は一刻も早く魔族の支配地域から脱出しなきゃな。
俺達は未だ日の昇らぬ闇夜の中を進む。
進み続ける事数時間、日が昇り周囲の姿がより鮮明に見えてきた。
そんな中で見た平原、それは戦の火に焼かれていた。
焼け焦げた匂いは文字通り焼けていたからか。
「なんで焼けているんだ……?」
「それは此処が主戦場だったからです」
俺の疑問に答えてくれたのはフィアナだった。
「聖女クロエ様やアリシア様達が捕まったと聞き、何もしない私達ではありません。私達は勇者様と共にアリシア様達の救出の為に強行したのです、その時の戦場が此処です」
やっぱり女神達の救出は計画していたんだな、それでこの地にて両軍が激突したと。
「ですが勇者様はアリシア様達の力を受けれず、また無理な進軍を続けた我々は疲弊し補給もままならず敗走しました……私達もその時捕まった者です」
目を伏せ申し訳無さそうに告げるフィアナ。
「魔族達は恐らくですが勇者様達の追撃を行っているかと」
見張りの魔族が少ないのも追撃に向かわせたからか。
「アリシア様達が主戦場近くの街に囚われていたのも勇者達が敗走した事からの安心感からか」
「いえ、既に此処が前線からそれなりに離れているからだと思います。私達は勇者様を先頭に敵の前線を強行突破して来ましたので」
「……そうなると敗走した勇者も今結構危険な状況じゃないのか……?」
スッ……と視線を逸らすフィアナ達。
……やっぱり絶望的過ぎないこの状況?
俺達は敗走した勇者達を探しながら魔族の領域から脱出を目指す事になった。
ちなみに勇者の居場所に付いてはおおまかではあるが力を与えたアリシア様が分かるそうで、取り敢えずはこのまま進めば良いそうだ。
ぐぅ〜
「す、すいません……」
誰かの腹の音が鳴ったかと思えばクロエが頬を赤らめお腹を押さえながら呟いた。
どれ程捕らわれていたか分からないがまともな食事を与えられるとも限らんし仕方ないな。
俺はお腹を空かせたクロエに見張りの魔族から奪った握り飯を渡す。
「これを、倒した見張りの魔族から奪っといた」
「えぇ?!いつの間に……」
クロエの他にも数人お腹を空かせていたのでその子達にも与える。
そのまま魔族と会うことも無く、平原から森へ入りその森を抜けた。
森を抜けた先に川が流れていた。
川の向こうはまた平原。
「飲めるかな」
『問題無く飲めるよ』
アリシア様が確認してくれた。
先を急ぐとはいえ休息も大事、川を越える前に此処で水分補給をしよう。
「にしてもどうやって越えるか、近くに橋は無いしな……」
「私達が数人でジョン様を担いで行きましょうか?」
「いや流石にそれは申し訳無い」
どう川を越えるか悩む、下手すると流されそう出し。
皆と話し合った結果は何人かの獣人達が縄を持って進み、後発隊がその縄に捕まって進むことになった。
そう決まればと服を脱ぐ女性獣人達。
『閉ざせ』
『照らせ』
そして突如閉ざされた視界、その真っ暗な闇の中で突如強烈な光に襲われた。
「うおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」
「ジョン様!?」
俺は目を押さえて蹲った。
誰かが背中を擦ってくれている。
《あ、ごめんなさい、つい……》
《あ、ごめん、つい……》
ルナ様とアリシア様が謝罪した。
悪気は無かったし、仕方ない……。
木に括り付けた縄を持って数名の獣人達が川に飛び込み向こう岸まで辿り着く。
なお服は後ほど火の魔術とかで乾かす事になったので裸ではない。
「良いですよー!」
向こう岸の獣人達が縄を固定した合図が来た、俺達は……というか俺とクロエ等人族以外しか縄に掴まってないわ。
フィアナも泳いで渡ってる、てか俺の直ぐ傍でスピード合わせて泳いでる、器用だな。
川を渡った後俺とクロエはフィアナの魔術で濡れた服を乾かしてもらった。
服を乾かしたら縄を魔術で燃やし先に進む。
あれから結構時間が経ち日も完全に昇った為、魔族達に脱走がバレて追っ手が放たれている可能性が高いな。
平原から再び森に入って少しした時。
「ジョン様、少し問題が……」
「食料か?」
「はい、食料が残り少ないです。私が言う前に理解されるなんて、流石ですジョン様」
「そうか……」
フィアナからの好感度が勝手にどんどん上がっていく……。
にしても、ここに来て食料問題か。
街から脱出するのを優先してたから持ってきていた食料もさほど多くない、食料は少ないが脱走した者達はおおよそ10名と多い。
人数が多ければ多いほど食料の消費も早い。
「ジョン、どうしましょう……」
『どうするのかしら、シ……ジョン』
クロエとルナ様の同じ言葉、けれどその言葉から感じ取れる感情に違いがある。
クロエは不安や心配が滲んだ声音、けどルナ様からはそう言った負の感情は感じ取れず普通だった。
『信頼されているねジョン』
『人族に興味を示さなかったあのルナがそんなに信頼するなんて凄いわね』
『うっさいわね』
『本当の事じゃない、人族に興味を示さないし、態度は冷たいし、こんな風に憑依だってしたことないじゃない』
『ノルン……それ以上ショ……ジョンに余計な事吹き込むとその胸の無駄にデカい脂肪の塊を引き千切るわよ』
『あんたの方がデカいじゃない!』
『2人共いい加減にしなよ』
ルナ様とノルン様の言い合いに仲裁に入ったアリシア様。
仲睦まじくて大変よろしいが俺はそれどころではない。
無駄にクロエやフィアナ達から信頼を寄せられているせいで食料危機のこの状況で期待の眼差しを向けられているんだ……。
だがそんな直ぐに直ぐ食料を手に入れる事なんて出来はしない。
森の中だから見つけられる?そんな事は無い。
そもそもこの世界に来てまだ1日と経っていないから食える木の実とか知らん。
何か手は無いかと思った時、進路方向から何やら音が聞こえた。
「しっ……」
全員に合図を出し、静かに茂みの中から様子を伺う。
その先で戦闘が行われていた。
片方は敵である魔族、もう片方は杖や剣を持った耳の長い人。
「エルフッ」
『落ち着きなさい』
森の奥でエルフと出会い上がる気分、ルナ様に即座に釘を刺されてしまった。
またフィアナ達の反応を見るにあのエルフも味方の様だ。
味方との合流と共に食料も見つけたぞ。
俺はフィアナ達に笑い掛ける。
「見つけたぞ、食料」




