第5話 不思議な人族との出会いと救出
女神ノルンSide
本当に急だった。
ルナに裏切られ、捕まった私達。
そして危うく穢されそうになった所を名も知らぬ人族の子に助けられた。
魔族を一方的に叩きのめした彼は牢屋の中へと入りアリシア姉様と私、妹達を鎖から解放してくれた。
彼はその後私達を捕らえていた鎖に気絶させた魔族を繋がらせた。
恐らく逃走までの時間稼ぎのつもりなのでしょう。
「ありがとう、貴方名前は?」
「ジョン・ドゥ……話は後だ、この上で捕まってるクロエを救出後他の奴隷達も解放して逃げるぞ」
ジョン・ドゥと名乗った彼はそのまま獣人の子達と合流、猫獣人の子に手を繋いで貰って暗い洞窟内を進んでいった。
色々と聞きたいことがあるけれど今は彼に付いて行くしか無いわね。
怯える妹達を連れて私とアリシア姉様もジョンの後を追う。
「クロエが……居るんだね……」
「そうみたいですね」
クロエ。
それは姉様が選んだ光の聖女。
ルナによって捕まり私達を捕らえるための人質とされた娘。
そのクロエが此処に居るとジョンは確かに言っていた。
暗い洞窟を進みその出口らしき所へ到着。
「しっ……」
ジョンが自身の口に人差し指を当てて私達を見渡した後光に差し込む出口の戸を少し持ち上げて周りを見渡した後、戸を全開で開けて上へ上がる。
獣人の子達が上がり私達に手を差し出す、戸惑う妹達を安心させる為に私がまず先に行く。
出口から出た先は何処かの建物内、既にジョンの姿は見えなかった。
「ジョンは?」
「あちらに……」
ジョンと手を繋いでいた猫獣人に尋ねると指を指した、その先でジョンが地べたに這いつくばりながら進んでいるのが見えた。
「あれは……!」
「しっ!」
「ご、ごめんなさい……」
ジョンの向かう先を見て付い声が漏れてしまい猫獣人の娘に注意されてしまったわ。
「所で貴女、名前は?私の名前はノルンよ」
「申し遅れました、私の名はフィアナと申します」
いつまでも猫獣人では良くないから名前を尋ねればそう返事が返ってきた。
フィアナ、良い名前ね……。
「フィアナ、ジョンは何をする気なの?」
「クロエ様を助ける、としか分かりません」
そうでしょうね、ジョンの動く先に捕らわれているクロエが居るもの。
けれど仲の良さそうなフィアナですらジョンが何をしようとしているのか分からないのね……。
ジョンは未だに地べたを這いつくばりながらゆっくりとクロエに近付いて行っている。
捕まっているクロエの直ぐ傍には見張りの魔族が一人だけ。
「ひっひっひっ、今頃お前の信仰する女神様も穢されてるだろうな」
「っーーーー!」
「何言ってるか分かんねぇよ、役立たずの聖女様」
あまりの静けさに見張りの魔族がクロエに話し掛けた声が聞こえた。
「それと、今の自分の状況を忘れるなよ。あんまり喚くようならてめぇを喋れなくなるまで鳴かせても良いんだからなぁ」
「っ……」
下卑た目をクロエに向ける魔族、その視線に晒されたクロエが怯え身動ぎをした。
「唆るなぁ、堪らぬ色気で誘うなよ聖女様ぁ、今ここで食いたくなっちまう……」
「っ!っーーー!っーー!」
「だから何言ってるか分からねぇって言って━━ぐきっ?!」
そうして無理やりクロエを襲おうとした所にジョンが先程の様に飛び掛かりその首を絞めた。
苦しさに藻掻く魔族と突然の出来事に固まるクロエ。
陰で見守っていたフィアナはジョンが飛び付いたと同時にクロエの下へと飛び出した。
私とアリシア姉様達も他の獣人の子達と共にクロエの下へ向かう。
「クロエ!」
「アリシア様!それにノルン様達も!ご無事でしたか!」
「あぁ、彼に助けられた。クロエも無事で良かった」
フィアナによって束縛から解放されたクロエとアリシア姉様が話す。
クロエは視線をアリシア姉様から助けてくれたジョンへと移す。
その動きに我に返った私達も見張りの魔族と戦っているジョンに視線を向けた。
「えぇ……」
私達が感動の再会を果たしてる間にジョンは魔族を打ち倒していたわ。
なんならもう気絶させた魔族を縄で縛ってた。
あまりの手際の良さにクロエは顔を引き攣らせていたわ。
「この後この街の奴隷達も解放して逃げるんだが……」
「何か問題が?」
「実はこの辺の地理に詳しくなくてな……道案内を頼みたい」
「ははっ、そのくらいなら問題無い」
笑うアリシア姉様。
道案内って……ジョンはどうやってここまで━━━ああ、ルナが教えたのね。
一時的にとは言え悪魔側に付いたルナなら私達が何処に囚われているとか分かるだろうし此処を突き止めたのも辻褄があうもの。
「待って下さい!」
アリシア姉様との話を終えたジョンはそのまま外へと向かった所でクロエが声を掛けた。
「助けて頂きありがとうございます」
「礼なら後だ、今は━━」
「それで、貴方はルナ様なんですか?」
クロエの言葉に皆が静まり返った。
何故ここでルナの話が出てくるのかしら……?
というか何故この男の子がルナに?
「……」
「誤魔化しても無駄ですよ、私はアリシア様から授かった力で貴方の奥に確かに居るのが見えます。憑依、しているのですよね?」
「俺は」
『ショ……ジョン良いわ、私が出る』
ジョンが何か言おうとした矢先、ルナの声が響いた。
そしてジョンの肉体からスッーとルナが現れた。
これは驚いたわね……まさかジョンに憑依してたなんて……それを見破ったクロエは流石アリシア姉様が選び力を授けた聖女と言った所かしら。
「っ!?」
フィアナ達も突然の事に驚きその場から下がり臨戦態勢を取った。
それもそうでしょうね、だって目の前の彼女は裏切りの女神なのだから。
とは言って仕方ないことだから私やアリシア姉様は勿論妹達も恨んではいない。
ルナの立場を自分に置き換えた場合、私も同じ事をする可能性が高いし。
けれどそれは私達の話であってクロエとはまた別。
「久しぶりね、皆」
「……」
「そうよね、許せないわよね、私の事……それだけの事をしたのだもの……」
何処か諦めた様な表情のルナに対しクロエは無言で近付いていくだけ。
そして目の前に立ったその時。
「っ!!!」
バチン!!!!
「痛っ……」
ルナは抵抗すること無くクロエからの張り手を受けた。
「これで、許しますっ!」
深く息を吐いたクロエは言葉を続ける。
「事情は悪魔共から聞き入れてます、もし私が同じ立場なら同じ選択をしていたかも知れませんし……。それにルナ様は再び私達を助けに来てくれました、だからこの件はこれで終わりにしましょう」
「ありがとう……本当にありがとう……」
「良かったなルナ」
泣くルナをアリシア姉様が抱き寄せる。
被害者の聖女クロエから罰を受け、許されたことでルナの重荷は解けたでしょう。
クロエもその苦しみを少しでも軽くする為に平手打ちしたみたいだし。
「あら?」
ルナとアリシア姉様の感動の再会なのに何故かそっと姿を消そうとするジョンを見つけて私は咄嗟にその腕を取った。
「ちょっと何処に行くのよ」
「いや、邪魔かと思って……」
「何が邪魔なのよ、貴方が居なければ会えなかったのよ?もっと自信を持ちな━━」
「ジョンから離れて頂戴」
復活したルナに手を掴まれそのまま無理やりジョンから引き剥がされた。
ルナの奴……ジョンの事物凄く気に入ってるじゃない珍しい……。
場も落ち着いたので早速行動を再開する。
「ではルナ様」
「ええ」
名前を呼ばれたルナ様は当たり前の様にジョンに憑依した。
「いや待って下さい何で平然としてるんですか?!」
クロエの言いたい事も分かるわ。
彼……ルナ程の神が憑依したって言うのに何でそんなに何ともない顔をしてるのよ……。
クロエですら同等のアリシア姉様が憑依されると凄まじい疲労感に襲われて動きが鈍くなるというのに……。
最初はルナに意識を手渡しているのかと思ったけれど普通に自分で動いてる様だし……。
「ジョン、平気なのかい?」
「特に何ともないです」
『あっそうだ!貴女達もジョンの中に入りなさいよ!その方がバレにくいし!』
ルナがとんでもない事を提案してきた。
あんた……お気に入りの子を廃人にでもする気なの……?
「物は試し、やってみましょう」
「どうなっても知らないからね……」
そして試しにアリシア姉様が憑依した。
けどジョンは何ということもなく、平然としていた。
『え……?本当に何ともないのかい?』
『ね?大丈夫でしょ?』
それからアリシア姉様に続き私達も憑依したのだけれど、ジョンは私達全員が憑依しても特に疲労を感じてない異常っぷりを見せた。
ジョン貴方は一体……。
「もう何が何なのか……」
あまりの状況にクロエが目を回してる。
「流石ジョン様……!」
フィアナは目を輝かせてるわ……。
その後ジョンは移動を再開。
フィアナ達と連携し他の奴隷の子達全員を解放する事に成功。
「後はこの街から脱出するだけね」
ルナの声が響く。
「街から脱出した後の道案内なら任せて」
「頼む」
アリシア姉様との話し合いを終えたジョンを先頭にして街からの脱出を開始した。
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