第63話 目覚め
「ん……此処は……?」
目を覚ましたのは何処かの部屋のベットの上だった。
「痛っ……」
状況を確認しようと身体を起こすと左肩付近に痛みを感じた。
確か……姿を変えられたルミの姉と接触して、それで元に戻す賭けに出て……その為に己の肉を喰わせた、それで意識を失ったんだったか。
「ん?」
そこでふと、腹部辺りに重さを感じる事に気付いた。
右手で支えながらゆっくりと身体を起こせば椅子に座ったまま俺の腹部に顔を預けてうつ伏せに眠っているクロエの姿があった。
また反対には同じ格好でラニとラピスの姿がある。
「「「すぅ……すぅ……」」」
寝息が聞こえる事から寝落ちしてしまったのだろう。
恐らくクロエ達は俺の看病をしていたのだろう、だからベットの際の椅子に座っているのだろう。
両手を伸ばし優しくその頭を無でればクロエはくすぐったそうに身体をひねる。
ラニとラピスはねだる様に自ら頭を揺らした。
『起きたのね』
(ルナ様)
そんな風に3人を撫でていると脳内にルナ様の声が響いた。
いつもと変わらぬ様に装っていらっしゃるがその声に若干の安堵の溜め息が混じっていた。
(御心配おかけしました、あれからどれくらい経ちました?)
『今日で2日よ』
(そうでしたか)
どうやら2日間眠っていたようだ。
ルナ様の話では俺が眠っていた2日間の間に俺の看病及び護衛と地下の探索の二手に別れて活動、地下で発見された亡くなっていた里の住民全員を地上へと連れて来て埋葬したとのこと。
(ルミの姉はどうなりました?)
『安心して、一命は取り留めたわ……』
ルミの姉はなんとか命を取り留めた様で一安心。
しかしルナ様の言葉に少し違和感を覚えた。
それを確認しようとルナ様に呼び掛けようとした所で部屋の外から声が聞こえてきた。
「そろそろ起きないかな……」
「そうね……起きて欲しいね……あっ」
開け放たれた扉からルミとその姉が現れた。
姉がルミに車椅子に押されて。
【一命は取り留めたわ】
【一命は】
そういう事か。
ルミの姉は姿こそ取り戻して命も取り留めたが足が動かなくなってしまったのか……。
自分が原因と考えそうなシャルルが変に思い詰めてなければ良いが……。
『はぁ……相変わらず他人の事ばかり気にしてるわね、少しは自分の事も大事にしなさいよ』
(ミミティ居たのか)
『居たわよ!?』
ルナ様しか話し掛けて来なかったから居ないと思ったけどそんな事は無かった。
「起きたんだ!良かったぁ……」
二人してホッとした様な表情をする。
ルミ達にも相当心配を掛けてしまった様で申し訳無いな。
「昇!改めて紹介するね!私のお姉ちゃん!」
「初めまして、姉のルイナです。ルミ共々助けて頂きありがとうごさいました、昇様」
ルミの後に続き車椅子に座る少女、ルイナさんがペコリとお辞儀をした。
こうして見ると……ルミより大きいな……何がとは言わないが。
「様付けしなくて良いですよ、私は切っ掛けを与えただけで元に戻したのは女神様達ですし……それに足も」
「ふふっなら昇、私に敬語は不要よ、後足だけれど」
「時間は掛かるけれど歩ける様になるよ、弟君」
後ろからやって来たエイア様が微笑みながらそう告げた。
要するにリハビリをすればまた歩ける様になるとのこと。
一生下半身不随にならなくて良かった。
「私他の皆にも昇が起きた事伝えてくるね!」
「こらルミ、走ると転ぶわよ」
「大丈夫ーーーー!!!」
他の者を呼びに走ったルミの声が遠ざかって行く。
その様子を見てルイナさんが困ったように笑う。
ちなみにルイナさんが座ってる車椅子は俺の記憶からアリシア様達が作ったとのこと。
「どれだけ心配させたら気が済むのかな?」
「すいましぇん……」
それから起きたラニとラピスを交互に撫でながら待っていればルミに呼ばれて駆け付けてきたアリシア様に頬を抓られた。
「全く……はいこれ」
ようやく解放された俺の頬。
手を離したアリシア様は自身の胸元から赤色の丸い物を取り出して俺に手渡してきた。
……何処から取り出してるんですかこの方……。
しかもなんか生暖かいし……まさか生肌で持ってた……?
「これは……?」
「ルナの血で作った昇専用の痛み止めの飲み薬だよ、まだ痛むでしょ?」
「ルナ様の血?!大丈夫なんですか?!」
主にルナ様の怪我!いつ怪我したの?!
治療はしたの?!出血量は?!
「むぐっ」
『怪我してないから速く飲みなさい』
(もう飲んでます、と言うか飲まされてます)
いつもの如く急に発生したルナ様の手が俺の手のひらから薬を強奪しそのまま口に運ばれた。
ルナ様の柔らかな手の感触を感じながら薬を飲み込む。
「効くまで少し掛かると思うからそれまでは我慢してね」
「はい……所で何故ルナ様の血で痛み止めを……?」
「女神達の中で昇と一番相性が良いからね、そのルナの血に痛み止めの効果を付与すると昇にも効くみたいだから、これはノルンの未来視で確認済みだよ」
相性の良いルナ様の一部(今回は血)を取り入れる事で俺の特異性をある程度軽減するとかそんな感じだろうか。
まぁそれは置いといて俺が目を覚ましたから次の目的地に向かう話になった。
「ルミ、ルイナさん、一緒に来ないか?」
2人だけ、特に今のルイナさんは1人では歩けないしルミも大変、それに悪魔のこともあり此処が安全とは言えないから俺は2人を誘った。
「誘いは嬉しいけど、一緒には行けない。迷惑を掛けちゃうから」
「ルイナさんの事なら別に」
「違う昇、お姉ちゃんじゃなくて私達の能力の方」
「私達と一緒に居るとずっと雪が降るし、酷いときは吹雪に見舞われるわ」
ルミの話にルイナさんが直ぐに補足を入れてくれた。
「その点については解決する筈……その前に2人共、アクセサリーは何が好み?首飾り、腕飾り、指輪とか」
「?……私は首飾りかな」
「私は髪飾りが良いわね」
とルミとルイナさんが答えた。
それを聞いた俺はアリシア様に目配せすればサムズアップが返ってきて━━━。
「はい、昇君」
扉の向こうからヴィシー様が首飾りと髪飾りを持ってきた。
いや作るの早すぎんだろ。
どうやら大量出血した俺の血を回収し、ノルン様の未来視で俺のやりたい事を見てくれた様で予め作っておいてくれた様だ。
なおノルン様は未来視の使い過ぎて疲れたらしく俺に憑依して眠っているとのこと。
ルミに首飾りをルイナさんに髪飾りを渡す。
その後効果を見てもらうために外に出てもらった。
「凄いっ!お姉ちゃん!空が晴れてる!」
晴れ渡る空にルミは大興奮、そんなルミを見てルイナさんも嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう昇、お陰で妹のあんな嬉しそうな顔をまた見ることが出来たわ」
「俺はただ血を提供しただけだよ、加工したアリシア様達にお礼を言っておくれ」
「こういう時は素直に受け取るものよ、昇」
俺の返答にルイナさんは苦笑いしながら言った。
次回より第4章となります。
今後ともよろしくお願いします。




