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セカンド・ワールド〜女神救出から始まる物語〜  作者: 唯ノ蒼月
第3章 雪の里

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第59話 変化の悪魔と追いかけっこ

アリシア様達と別れて進んだ俺の先に現れた細身の悪魔。


(こいつだな?)


『ええ、変化の悪魔、ガムビチェインで間違いないわ』


そうか、こいつが。


「━━━━━━」


未だに俺に気付かず後ろを向いて何やら呟いている悪魔、ガムビチェインに近付く。


「クソッボクの実験体が揃いも揃って反応が無くなってる!」


何かしらの方法で変化させた雪の里の女性達の異変を感知、そして此処で倒された事に気付いたようだ。


「はっ!?だ、誰だお前は?!」


足音に気付き、奴は振り返った。

何処か怯えているような感じから気が弱いのだろうか。

それともそういう風に見せて油断させようとしているのか、まぁそんな事は俺には関係ないがな。


「ん?魔力が無い……興味深い、良い実験になりそうだな……」


『あ゛あ゛?コイツ私の昇を実験台にしようって言うのかしら?』


『お、落ち着いてルナ』


俺を見て、魔力が無いという特殊な肉体に怯えよりも好奇心が勝った様で奴はそんな事を呟いた。

そしたらルナ様がキレた。

憑依しているヴィシー様がルナ様を宥めているのが脳内に響く。


「此処に来るまでに」


「ん?」


一歩ずつ奴へと歩み、距離を縮めながら問いかける。


「雪の里の女性達が変質させられていた」


一歩進む。


すると奴は一歩後退った、それを縮めるように一歩踏み込む。


「氷の戦士、下半身や腕など身体の一部が無く、死んだ者達……」


奴が下がる、俺が詰める、それを繰り返しながら言葉を紡ぐ。


「お前だな?」


「ひ、ひぃ!!!!!」


奴は突如叫び声を上げながら後ろへと振り向き駆け出し、机やら棚やらを倒して奥へと逃げる。

俺はその棚を破壊して奴を追う。


通路に設置された棚やら机やらを倒して俺が来るのを妨害しているが、その程度で止めれるはずが無い。


ガタガタッ ガタン!!!


「わざわざ居場所を教えてくれるなんて偉いな」


通路を曲がった先、俺の視界から逃れた後もそんな風に物を倒すから音が発生し行き先が分かる。


「……丁度良い、使わせてもらうか」


散乱した机の上に置かれたナイフを幾つか回収しつつ奴を追い掛ける。

そして奴の姿を視認した瞬間、投擲する。


「ひっひぃぃぃ?!」


「ちっ……外した」


ナイフは奴が倒した棚に突き刺さった事で当たることは無かった。


「く、来るな来るな来るなぁ!!!!」


「あ゛?」


奴が此方に向けて幾つかの物を投げ飛ばしてきた。

数瞬後、それは顔の付いた長細い何かに変わった。


「コロ……シテェ……」


「……」 


投げ飛ばされて来たそれらを全て斬り捨てる。

ナニカが身体に付着する。

赤色(・・)だ。


「アァァァァ」


「ごめん、もう、俺じゃ助けられない」


奴から投げ出されるものを斬りながら、言葉を放つ。

奴の能力で身体が完全に変化したこの子達を助ける術は……ない。

こうやって終わらせてやる事がせめてもの救いだと思う。


「ス、ストックが……!」


今なお逃げ続ける奴の声が微かに聞こえた。

これが油断を誘う為のものじゃ無ければ奴の手札が一つ減ったと言うこと。

さっさと捕らえたい所だ。


『昇』


(何ですか、ルナ様)


追い掛けている時にルナ様が話しかけて来た。


『昇、私とヴィシーが囮になって悪魔の足を止めるわ』


(駄目です、危険すぎます)


ルナ様は勿論ヴィシー様にもそんな危険な事はやらせたくはない。


『大丈夫よ、悪魔の足を止めるだけ、その隙に昇が悪魔を倒せば良いのだから』


確かに何かある前に奴を殺せば良い。

そう、倒せば良いだけだ。

だがそれでも危険な事に変わり無い。


『昇君、足止めは私とルナに任せて』


「……分かりました」


『むぅ……まぁ良いわ』


何処か納得がいかないと言った雰囲気のルナ様。


憑依を解いたルナ様とヴィシー様は互いに頷き奴を追う、俺はその少し離れた後ろを奴に気付かれないように進む。

ミミティにはそのまま憑依しておいてもらう。


それから少し、奴が逃げ込んだ部屋へとルナ様達と侵入、俺は即座に物陰に隠れる。

ようやく奴は足を止めたんだ、ここで確実に仕留める。


「な、なんとか巻いたか」 


「待ちなさい」


「ヒィッ!?……ん?お前は……ヴィシーにルナ!」


先程までの怯えは何処へやら、ルナ様とヴィシー様の姿を見た奴が卑しい笑みを浮かべた。

それを見てルナ様は平然としているがヴィシー様は自身の身体を腕で隠した。


「へ、へへ、ボクはツイてるな、ここでヴィシーの他にルナを見つけるなんて」


両手を前に出し、ルナ様達に躙り寄る。


『まだ駄目よ』


最早ルナ様達にしか眼中に無いし背後から近寄ってやろうかと思ったがルナ様からはまだとのこと。


「リューヌを知ってるかしら?」


「ひ、ひひっ、知ってるとも!ボク達が可愛がってやったんだからなぁ!」


「っこの!」


怒るヴィシー様をルナ様が手で制止する。

まだ何か聞き出したい事があるのだろうか。


「あの子の、リューヌの持ってた剣は?」


「それなら今はフラムマが持ってるさ!だからお前を探してたんだ!何せリューヌしか直に触れないからなぁ!」


リューヌ様の持つ剣、それを触るのにルナ様の何かが必要なのだろうか。

あ、ルナ様からオッケーの合図が来た。


「ひ、ひひっ!だがボクはそんな事はどうでも良い!お前と瓜二つのリューヌをヤッた時にお前もこの手で汚してやりたいって思ってたんだ!孤高で気高く胸も大きいお前をっ!遂にその日が来た━━」


「おい」


「へ……?」


「俺の女神様と気安く喋ってんじゃねぇよ」


「ゴボッ!?」


肩に手を置き、恐る恐る振り向いた奴に言葉と共にその顔面に拳をお見舞いする。

ちゃんと吹っ飛ばす先もルナ様達から離れるようにしてある。


奴は棚にぶつかりそのまま棚やそこに置かれていた物体に押しつぶされる。


俺はルナ様とヴィシー様と合流、直ぐに憑依させてそのまま奴へと駆ける。


「い、痛いぃ!ひ、ひぃ?!」


「ふっ!」


「ぎゃぁ!?あがぉっ!?」


起き上がり逃げ出そうとした奴の襟を掴み再び顔面を殴り抜ける。

そのまま馬乗りになって数回、十数回と殴り続ける。


「ひゃ……ひゃすへけ……」


「おい」


馬乗りになったまま奴の首元を掴み上半身を起こす。


「ひぃぃぃぃぃぃ!!!!!」


「形を変えられた者達を元に戻せるのか?正直に言えば助けてやるかも知れねぇぞ?」


ミミティ『昇?!』


「む、無理だっ!い、一度形を変えた者はその姿から元の姿に戻る事はないっ!」


「そうか……」


首元から手を離し身体を起こす。

正直に話して助かると思ったのか安心した様に息を吐く悪魔のガムビチェイン。

だが俺が剣を手に持った途端再び慌てふためく。


「ひっひぃ?!しょ、正直に話だろ!?た、助け……!」


「貴様に変えられて!戦うしかなく!死んでいったあの娘達は決し助けを請わなかったぞ……!」


「た、助けてくれっ!」


「死ね、腐れ外道が」


一閃。


俺は剣で悪魔の首を刎ねた。


形を元に戻せるのなら、他に居るかも知れない娘達を助けてやれるから生かそうとは思ったが、それが出来ないのなら生かすつもりはない。

情報を抜き取る事も出来たかも知れないが生かしておくと危険と判断してのことだ。


「アリシア様達の下へ戻ります」


万が一復活とかすると嫌だから泣き別れた悪魔の頭と襟元を掴んでアリシア様達の下へと向かう。

この悪魔は万全を期してアリシア様達に処理してもらいたいからな。

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