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セカンド・ワールド〜女神救出から始まる物語〜  作者: 唯ノ蒼月
第3章 雪の里

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第57話 確かに響いた『声』

「シャルル、大剣の相手を頼めるか?」


「任せてよ!」


俺の願いに火魔術を付与した剣を構えて答える。

その姿は自信に満ちていた。


さて、再び相まみえた氷の女戦士達。

この戦闘において一番の足手まといは間違いなく魔術を扱えない俺。

リーゼロッテは竜種であり火属性である竜の息吹を放てるしラニとラピスも火魔術が扱えると分かった。


「来るよっ!」


シャルルからの声に意識を戻せばそれぞれの氷の戦士達が動き出していた。


「曲刀持ちは俺が行きやす!」


「1人で大丈夫か?!」


「問題無いですぜ!」


力強いティガーは1人で曲刀持ちの相手をしに駆ける。


次に動き出したのはフィアナとローナの2人だ。


「短剣の相手は私とローナでやります!」


「こっちは任せなよ!」


「じゃあ私とセレスティナで残った直剣持ちね」


「クロエは昇様達を守って下さい!」


次いでマリアとセレスティナが動く。

それぞれがそれぞれの相手を始める。


俺とラニ達はクロエに守られながらシャルル達を見守るだけ。


シャルル達の中で一番不利なのはティガーだ。

シャルルは剣をマリアは魔術を用いて戦うのに対してティガーは己が身体一つで戦っているからだ。


だから俺はティガーの方を見ていたのだが、どうやら心配は杞憂だったようだ。

振るわれる曲刀を躱して懐に入り込み拳を振るう。

勿論その拳にはシャルル達同様に火魔術による炎が揺らめいている。


ティガーは振るわれる曲刀を避け、時には自身の腕で受け止め……。


「あれ普通に腕で受け止めてるけど斬れたりしないのか……?」


「魔術で固めてますから大丈夫ですよ」


目の前で繰り広げられる光景にクロエに聞けば当たり前の様に返答が返ってきた。

いや確かに腕で受け止める度にガキィィィン!!って剣を腕にぶつけても鳴らない筈の音がするけどさ。


ティガーは大丈夫みたいだから他に視線を向ける。


フィアナとローナは素早さで短剣二刀流を圧倒してる。

常にどちらかが相手の注意を引き、その隙をもう片方が狙っているみたいだ。

ティガーやシャルルの様に一対一ではないからこそ出来る事だな。


直剣を相手取るマリアとセレスティナは火魔術による遠距離戦闘を仕掛けている。

近距離に入り込まれて直剣を振るわれても防壁を展開して対処している。

また防壁も全身を覆わずに盾の様に小さく展開する事で強度を上げている。


シャルルは流石勇者と言うべきか、既に大剣持ちの片腕を切り飛ばしていた。


「問題無く終わりそうだな」


「そうですね」


この里に来る直前に相手したからか、シャルル達は順調に氷の戦士達を追い詰めている。


パキッ


「そのまま油断せずに仕留めていこう」


「うん!」


元気良く返事をするシャルル、他も頷いたのを確認。


━━━パキッ


少し肌寒くなった気がするな。

ルミ達の能力でこの里の周辺は冷える。

シャルル達の様に動いていないから寒いのだろう。隣にいるラニとラピスも寒いと言っているし。


「ほら、こっちおいで」


「うん」


ラニとラピスを呼び寄せ俺の着る外套で覆う。

このまま寒い状態で放置して風邪を引いては可哀想だからな。

クロエは大丈夫と言っていたから大丈夫だろう。

仮に大丈夫じゃないとしても外套はもう無理だし、リーゼロッテの火で暖を取るしか方法がない。


パキパキッ


「……なんだ?」


突如、一段と強烈な寒さに襲われ、それと同時に周囲が凍り付く。


そして通路の奥、そこから足音が響いてきた。


その足音を聞いて氷の戦士達は後ろに飛び退き、左右に別れて待機する。


通路の暗がりから姿を現したのは頭部がひび割れた氷狼に背負われた下半身の無い女戦士。

それは里の前で出会った氷狼と女戦士だった。


行進を止め此方を一瞥する氷狼の女戦士。


『━━━━━━━━━━━━!!!!!!!』


「ちっ!」


「やらせません!」


此方を見るや凄まじい咆哮と共に突進を開始した氷狼の女戦士。

クロエが防壁を張ってくれたから無事だったが、直撃していたらただでは済まないな。


バキッ


「嘘っ!?」


クロエの張った防壁にヒビが入った。


「このっ!」


クロエを援護するべくラニとラピスが周囲に炎の柱を生成、再び拘束を試みるも女戦士はクロエの防壁を足蹴にして炎柱の範囲外へと離脱した。


「里の前で戦った時より動きが良いな……」


ラニの呟きの通り、あの女戦士先程より明らかに動きが良い。

それにさっきの一撃でクロエの防壁にヒビを入れると良い、前とは別人と見た方が良いな。


クイ、クイ。


そんな氷狼の女戦士は氷狼に乗ったまま俺を手招く。


「誘われているし、俺も少し踊るとしようか、此処で誘いに乗らないのは紳士じゃないからね」


「ちょっ、昇!?駄目ですよ!?昇!!!」


外套を脱ぎ、ラニとラピスに被せ直して氷狼の方へと歩く。


アリシア『この場で紳士云々は関係無いかな』


ノルン『昇、後で説教よ』


【悲報】説教確定。


冗談はさておき、彼女の狙いが俺に集中しているのならラニ達から離れれば幾らか安全だろう。

他の女戦士達はシャルル達が相手してるから大丈夫だろう。


問題はあの素早い氷狼、どうしたものか━━━。


そう思ってた時、相手に変化が訪れた。


氷狼が溶けて、女戦士を覆う。


そして次第に人型へと整っていくとそこには美しいドレスの様な服装を身に纏った女戦士がいた。


彼女はただ、静かに槍を構える。


「お互い、準備万端のようで」


それに答えるように俺も拳を構える。







━━━━来るっ!




跳躍、そこからの振り下ろしを身体を横にしつつ前に進む事で懐に入り込む。


続いて横薙ぎに払われる槍を左腕で受けつつ右拳を振るう。


『━━━!』


「思ったより柔らかいなっ!」


触れた頬は柔らかく、まるで本物の肌(・・・・)の様だ。

相手の顔から表情を読み取る事は出来ないがなんとなく驚いている様な気もする。


一歩下がる、開く距離。

それを一歩踏み込む事で潰す。


相手に距離を取られれば此方が不利になる、死に物狂いで距離を維持しろっ!


追い払う様に再び横薙ぎに払われるのを身体と腕で挟んで止める。

受け止めてるけど痛い事に変わりは無いので早い所勝負を決めたいところ。


槍を強く引っ張り彼女の体勢を崩し素早く首に両腕を回して膝蹴りを腹部に叩き込む。

膝蹴りで前のめりになった彼女の片腕と後頭部を掴みそのまま地面へと叩き付ける。


起き上がろうと転がり仰向けになった彼女の顔面に追い打ちの拳を叩き付ける。


バキッ


何かが割れた音がした。


『━━━!』


「っ!」


その音に気を取られ、その隙に彼女が起き上がり距離を取る。

ヒビ割れた顔、どうやら先程の音は顔にヒビが入った音だったようだ。









━━━━━『『『『パリン』』』』



『ア━━━━━━』


再び何かが割れる音が今度はこの広場全体、幾重にも重なり響いた。

その音を聞いた彼女に一瞬の隙が出来て。


「終わりだ」


その隙を逃すこと無く距離を詰め、抜いた短剣を心臓へと突き刺す。










『ア……ァ……』


『声』が響く。









『良かっ……タ……』


俺達によって倒された女戦士達の『声』が、確かに響いた。


『見知ラぬ方ヨ』


響いた声に俺は短剣を突き刺した女戦士を見る。

俺との戦いに敗れた女戦士の身体が崩れてゆく。

ヒビ割れ崩れた氷の顔の奥に、俺達となんら変わらない肌の色と優しい瞳を見た。

その瞳はルミにとても似ていた。


『娘を……ルミ……を……よろシク……お願いします』


消えゆく程にか細い、女性の声。


「お母様……?」


その声はルミの声と共に周囲に溶けて消えた。

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