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セカンド・ワールド〜女神救出から始まる物語〜  作者: 唯ノ蒼月
第3章 雪の里

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第52話 雪の里へ

あれから数日掛けて補給路の確保と拠点の強化を終え、今日俺達はいよいよ雪の里へと向かうこととなった。


「ハァッ!」


「踏み込みが甘い」


「きゃん?!」


と言うのに朝から俺はシャルルを相手に組手をする事になってしまった。


振るわれたシャルルの拳を逸らしつつその勢いを利用する為手首を掴んで引っ張り、足を引っ掛けながら後頭部を掴んで地面へと叩き付ける。


「まだまだぁ!」


「ガラ空き」


「あたっ?!」


負けじと立ち上がり此方に向かってくるシャルルの拳を身体を真横にして避けてその額に軽く手刀を叩き込む。


「相手から目を逸らすな」


「わわっ?!」


手刀を叩き込まれた勢いで一瞬視線が上にズレた隙に背後に回り込んだ片腕をシャルル首に巻きつけて苦しくならない程度に絞め上げる。


「ほんの一瞬の隙がこうして相手に攻撃の機会を与えてしまう」


首絞めを解きトンッと軽くシャルルの背中を押す。

押された事でフラフラっとシャルルが2歩3歩と進む。


アリシア様達から俺が異世界からやって来た事を聞いたシャルル達。

またアリシア様からお願いされ俺の記憶の一部を見せた事で俺が爺ちゃんに教わった徒手空拳の技術を知り、シャルルが自らその技術を教えて欲しいと頼んできたのでこうして教えている訳だ。


「あのシャルルがまるで相手になってません……」


クロエが驚き目を見開いている。

無論聖女であるクロエにも頼まれて彼女にもシャルル同様施している最中だ。


幼馴染みであり、勇者となったシャルルの強さを誰よりも知ってるクロエだからこそ驚いているのだろう。


「ふふっ流石私の昇」


「勇者が昇に勝てるわけ無いわよね〜」


それに対してルナ様とミミティは自分の事のように誇らしげに胸を張っている。


と言うかミミティは何故俺が当たり前に勇者に勝てると疑わないのだろうか。


「助けてもらった時も見たけれど、本当に凄いわね……」


「凄い……」


「流石僕達を助けに来た昇だね!」


そして見学してるノルン様達。

クロエ同様驚いている女神様達の中で唯一ルナ様みたいに胸張ってるのがティア様だ。


「2人共、今日はその辺にしてそろそろ出発するよ」


「分かりました、シャルル、今日はお終いだ」


「は~い」


アリシア様に呼ばれて組手を終了、汗をかいているから風呂でさっぱりしておいでとアリシア様に言われてシャルル、クロエと共に風呂へ向かう。

組手の際にアリシア様の御姿が見当たらないと思っていたがどうやら風呂の用意をしていた様だ。


そして当たり前の様に混浴になってる……。


「ふぃ〜気持ち良い〜」


「はぁ……気持ち良いですね〜……」


湯船に浸かり顔がふやける2人。

そんなシャルルやクロエの他に当たり前の様にルナ様やミミティまで入ってるんだよな……。


「昇って本当に強いね〜」


「一手も触れられませんでした……」


「これも爺ちゃんのお陰だね」


徒手空拳の技術は亡くなった爺ちゃんによってみっちりと仕込まれた。

故に素手のみの格闘戦なら幾ら勇者であるシャルルといえど今なら簡単には負けないとは思ってる。


無論シャルルやクロエはアリシア様より加護を与えられているから決して弱い訳では無い、格闘戦だって覚えればあっという間に俺より強くなるだろう。


事情が事情だから仕方ないがやはり此処は異世界、魔術や神々の加護とかには憧れちゃうよね。


そう言えば……この戦闘技術を教えたのは友人達以来か……。


「昇のお爺様が問答無用で昇の腕の関節外してたのはちょっと……」


「あはは……驚いちゃった……」


感慨に耽っているとクロエとシャルルが爺ちゃんの所業(組手)に引いてた。

俺の記憶を見たって聞いてたけどそれも見てたのね。


「シャルルやクロエにはやらないけど、場合によっては倒した後に追い打ちで顔を殴る事もある」


「「ワァ……」」





汗も流せたので風呂から上がり、アリシア様達と合流する。


「それじゃ行こうか」


アリシア様の言葉に頷き荷馬車に乗り込む。

これから馬車で山の麓まで行き、そこから徒歩で山を登って雪の里へと向かう感じだ。


「……」


「よしよし」


揺れる荷馬車の中、不機嫌なラニをラピスが宥めている。

姉を宥める妹……あれではラニの方が妹っぽく見えてしまうな。


「何笑ってる」


「ごめんって」


「違う昇じゃない、そこの赤髪の女だ」


ラニとラピスの事が微笑ましくて微笑んでいたからお気に召さなかったと思ったら違った。

ラニの特等席である俺の膝に座る赤髪の女神、フォティア様の事が気に入らないようだ。


「昇と一緒に旅出来るのが嬉しくてさ〜」


「……」


「落ち着いてラニ」


ラニを見ながら俺にもたれてくるティア様。

それを見たラニの眉間にシワが寄り、それをラピスが宥める。

それを見ていたティア様が更に身体を預けてくる。


「おい、昇にもたれるな」


「なんで?君には迷惑掛けてないでしょ?」


純粋な疑問、其処に煽る意思は無い。

ちなみにラニも羨ましくて言ってるのでは無い。

今の状況でもたれるとある事が起きるからだ。

それは━━━


「わっ!?」


突如弾かれるように前に転がるティア様。

弾かれた理由は俺の胴体から伸びる2つの手に押されたからだ。


「な、何するんだよルナ?!」


「私の昇に近付き過ぎ」


自身を押した犯人にティア様が抗議の声を上げる、それに反応するように身体の半身を顕にしたルナ様。

そう、ティア様を押したのは俺に憑依していたルナ様だ。

ラニはこうなる事を分かってたからティア様に言ったんだ。

ちなみにルナ様はラニにはそれなりに甘いので押し退ける事はしない。


ではラニが何故知ってるか、それは既に何回もノルン様が押されているからである。


「ルナだけのじゃないでしょ?!」


「いいえ、私のよ」


「コラ、ティア、静かにしないか」


「ルナ様も、その辺にして下さい」


この狭い所で言い争いが発生すると休んでいるフィアナ達に悪いので俺とアリシア様で御二方を止める。


「昇が言うなら仕方ないわね」


「むぅ……」


素直に言う事を聞いてくださったルナ様、ティア様は納得してなさそうだがそれでも留まってくれた。


その後憑依を解かれたルナ様に抱きしめられつつ、ラニを膝上に座らせ、ティア様とラピスがそれぞれ腕に抱きつく形で収まった。

アリシア様含む他の女神様は全員憑依してる。


その後山の麓まで数日掛けて進む間、アリシア様達が代わる代わる腕に抱き着いてきていた。

唯一ルナ様だけは変わらず毎日だが。


シャルル「明日の朝、馬車を降りて山を登るよ」


「分かった、明日に備えて今日は早めに寝るとしよう」


そして翌日の朝、朝食を済ませたら直ぐに出発する。

女神様達とミミティ、精霊のマリアを憑依させラニ、ラピスの様子を気に掛けながら山を登る。

リーゼロッテは竜の姿で俺の頭に乗っかってるから気にしない。


雪女達の能力で周囲が冷えるのは知っているので防寒着も問題なし。


山を登れば登っていく程に雪が降り積もっていく。


山道を通っていると開けた場所に出た。


「何か来る……!」


開けた場所を通り抜けようとした時、地響きが鳴りシャルルが何かを感じたようで剣を構える。


徐々に近付く地鳴り、そして木々の向こうから何かが飛ぶ。


それは俺達の行く手を阻むように目の前に落ち、その衝撃で積もっていた雪がぶわっと舞った。


一閃。


舞う雪の中から何かが動く、そしてその衝撃で雪が散る。


雪の中から現れたのは氷の狼に乗った氷の戦士だった。

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