第47話 北上準備
今後の方針も決まり支度を始めて数日。
ようやく準備を終えた俺達はいよいよ今日、出発する。
「むぅ〜〜〜」
そんな中、指揮所内で頬を膨らませて如何にも不機嫌なシャルル。
理由は単純、俺と別れる事になったからだ。
「そう怒るなって、また合流するんだから」
俺は変わらず北上するのだが、シャルル達第1軍は西へ部隊を進めることになった。
どうも西側に魔族の大規模部隊が居るらしく第3軍、第4軍と共に突破に向かうらしい。
ちなみに第2軍はクロエ抜きで此処の修繕と守備に付くそうだ、クロエはシャルルと一緒。
無論アリシア様もシャルル達に付く。
「昇、ヴィシーを連れて行ってあげて、あの娘なら誰も何も言わないし問題にならないから」
「ヴィシー……?」
「水の女神ヴェシーナ、ほら私達と一緒に捕まっていた水色の長い髪の娘よ」
アリシア様の言葉に首を傾げた俺にノルン様が教えてくださった。
あぁ、アリシア様とノルン様の妹のヴェシーナ様か。
「俺は良いですけど、何故ですか?」
普通に考えて俺よりもシャルル達に付くと思うんだが……。
「昇との連絡係だよ」
「ルナ様が居るので大丈夫では……?」
アリシア様の言う連絡係は神々を通しての連絡だろう、ならばルナ様が居るから必要は無いはずだが。
「ルナは独り占めして連絡寄越さないから駄目」
「あぁ……」
《ちょっと昇〜?その反応は何かしら〜?》
ノルン様の言葉に納得してしまった。
確かにルナ様はアリシア様達に連絡をしない、都を発つ時にノルン様を同行させたのもそう言う理由だろう。
「アリシア姉様、ヴィシーです」
「っと、話していたら来たようだね、良いよ、入っておいで」
アリシア様の視線が後ろにずれる。
それに釣られる様に俺も振り返った。
丁度指揮所へと入ってきた水色のロングウェーブヘア、水色の瞳の少女の姿が目に映る。
ルナ様方と同じ女神で水を司る、ヴェシーナ様だ。
確か火の女神フォティア様と双子だったはず。
「ヴィシー、連絡係として昇に付いて行ってくれ」
「私は良いんですけど、ティアが納得するでしょうか」
「あの娘には私から言って聞かせるよ」
『アリシア達を助けた事で昇は神々から人気者だものね〜特にアリシアと一緒に助けられた娘達は隙あらば一緒に行こうとしてるそうよ』
俺ってそんなに人気なの……?
話を聞くにフォティア様も来たがってるみたいだし……。
「そういう事でよろしくね、昇君」
アリシア様との話を終えたらしくヴェシーナ様が此方に振り向き微笑む。
「よろしくお願いします、ヴェシーナ様」
「ふふっ、私の事はヴィシーって呼んで♪」
「ヴィシー様」
「むぅ……今はそれで良いや」
頬を膨らませたヴィシー様。
そのふんわりとした柔らかな雰囲気や喋り方に懐かしい感覚を覚えた。
女友達がこんな喋り方だったけかな。
『昔の女を思い出してるのかしら?』
(昔の女って……友人ですよ、親しい友人、です)
『ふ~ん?』
実際俺に恋人は居なかったし、出来る前にトラックに跳ね飛ばされた訳だけども。
「それじゃ出発の為に荷物を荷馬車に移しましょうか」
「うん分かった〜えへへ♪」
『…………………』
当たり前の様に俺の隣に来て腕に抱き着いてくるヴィシー様。
ルナ様はそれに対して無言だがなんか恐ろしく感じる。
「…………………」
かと思ったら憑依を解いて反対の腕に抱き着いてきました。
これじゃまるで俺が連行されているみたいじゃないか……。
両腕を包む柔らかさを感じながら指揮所出る。
「「昇」」
「ラニ、ラピス、待ってたのか」
外に出たらラニとラピスが待っており、出てきたのを確認した瞬間此方に駆け寄って来て前後から抱き着かれた。
抱き着くのは良い……ただ四方から同時に抱き着くのはやめよ?動けんねん……。
そうして相談した結果、ルナ様が憑依し、ヴィシー様が右腕に抱き着き、ラピスと左手を繋いで移動する事になった。
ラニはラピスと手を繋いでる。
「お待ちしておりました、昇様」
「お待たせフィアナ」
高台から降りた先で待っていたフィアナと合流。
俺と共に北上するのは少人数で此処に居る者達の他にミミティ、ローナ、ティガー、リーゼロッテ、マリア、セレスティナである。
いわゆるいつものメンバーだ。
唯一違うのは初めて共に行動するヴィシー様が居るくらいか。
「皆集まった事だし荷物を運ぼうか」
「そうしましょう」
「旦那はその辺で休んでてくだせぇ、荷物運びくらい俺等でやるんで」
「んじゃ頼むわ」
荷物運びはティガー達に任せ邪魔にならない様に少し離れた所でラニ、ラピスと共に待つ。
なお竜種で力のあるリーゼロッテはフィアナに連れられて荷物運びさせられてる。
「納得いかぬー!」
「リーゼロッテは言いつけ破ったからその罰よ」
「ぐぬぬ……」
「唸っても駄目よ」
フィアナとリーゼロッテのやり取りが聞こえてくる。
リーゼロッテは不満はあるもののしっかりと作業するから偉いな。
待つこと数分。
「昇、準備出来たよ」
「ありがとう、直ぐ行く」
準備が出来たと呼びに来たローナにお礼を言ってラニ達を連れて荷馬車へと乗る。
「出発します」
全員が乗った事を確認したフィアナが馬を操り荷馬車が動き出す。
目指すは雪の里だ。




