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セカンド・ワールド〜女神救出から始まる物語〜  作者: 唯ノ蒼月
第2章 攻勢作戦

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第45話 狩人の悪魔

弓と矢を携えた悪魔。


ミミティ『気を付けなさいっ!あいつはイェーガー、矢を操る悪魔よ!』


憑依しているミミティが叫ぶ。

とは言え外に聞こえないように話しているので俺とルナ様、アリシア様しか伝わらないけど。


(矢を……操る……?)


『それも気になるけれど思いっきり利敵行為だけれど?』


『私達の味方をしてくれるのは嬉しいけど同じ仲間じゃないのかい?』


『あんなクズ共仲間でも何でも無いわよ、少なくとも私は今まで仲間だと思った事は無いわ』


『『えぇ……』』


ミミティの言う矢を操ると言うのが何処までの物かが分からん。

ただ相手は悪魔、油断は出来ない。


「撤退すると此奴を引き連れて行く事になる……此処でやるしかない」


「大丈夫、分かってるから」


あの悪魔を連れて行くと逆に此方が瓦解する可能性が高い。

否が応でも此処で倒すか撤退させるしかない。


ノルン様の悪い予感はこれか。


『安心して』


「私も一緒だから」


憑依を解いたアリシア様、その手にはシャルルの握る剣に似た剣が握られていた。


「め、女神アリシアだとっ!?」


「馬鹿なっ!?気配が全くしなかったぞ?!一体何処にっ!」


「狼狽えるな」


狼狽える魔族を他所にイェーガーは平然と矢を番えた。


「ふっ!」


放たれた矢をアリシア様が斬り落とす。

その瞬間に既にイェーガーが踏み込んでおり、いとも容易くアリシア様の懐に入り込んでしまう。


「この遅さ、そしてこの感じ。ふむ、まだ万全ではないな?」


「っ……」


「つれないな、私と踊ってくれないのかね?」


アリシア様が一歩下がる、イェーガーは残念そうに肩を竦めるだけでその距離を詰めることは無かった。


「アリシア様っ」


「貴様の相手は私達だ勇者っ!」


「っ……邪魔っ!」


アリシア様を助けようとしたシャルルに斬り掛かる魔族。

少なからず選ばれただけはあるようであのシャルルが3対1とは言え押されている。


「フィアナ、ティガー、シャルルの援護を、ローナはクロエを守れ」


「御意」


「分かったぜ旦那」


「分かったよ」


既に戦いは始まっている。

フィアナ達をシャルルの援護に向かわせ俺は即座にアリシア様とイェーガーの間に身体を割り込ませる。


「失礼、女神様へのお触りは禁止となっております」


「ショ、ジョンッ?!」


「ふっ、では君が私と踊ってくれるのかね?少年」


「少年じゃねぇよ、俺はもう18だ、青年と呼べ」


「これは失礼、青年」


イェーガーは何を思ったのか手に持つ弓を空へと放り投げた、そして直ぐに被っていた帽子を取り華麗に一礼した。


「私の名はイェーガー、青年、君の名は?」


「ジョン・ドゥ」


「ジョン・ドゥか、ふっ……これでお互い知り合いだな」


イェーガーはそう呟くと帽子を被り直し、左手を真横に伸ばす。


「では、共に踊ってもらおうか」


その言葉と同時に落ちてきた弓を掴み直し直ぐに矢を番えた。


「なにそれカッコイイ」


『『ちょっと昇!?』』


「ショ、ジョン?!」


「気に入って頂けたなら恐縮至極だ」


そう言うと共に矢を放つイェーガー。

放たれた矢を横にずれる事で回避するとイェーガーは既に次の1射を放っていた。

1射、また1射と躱しては直ぐに飛んでくる。

このままだと刺さるのも時間の問題だ……!


「ジョンッ!」


「アリシア様っ!?」


突如アリシア様に後ろから抱きしめられた。

アリシア様は俺を抱きしめたまま片手で剣を振り矢を落とす。


「「……」」


互いに睨み合う状況となる。


『昇、奴の前で憑依は出来ない。君の特異性が知られたら今後の優位を失うからね……』


俺を抱きしめ、剣を構えたままアリシア様が念話で話し掛けてきた。


(ですが既に一度見せてますよね?憑依を解く瞬間を)


『ああ、けれど一度。2度3度と見せないなら私達の気配を抑えているのが昇ではなく私達の奇跡かそういった特殊な道具を生み出したと思うはずだ。たった一人の人間が神の気配を抑えるなんて考えられないからね。ましてや憑依、クロエですら大変なのに何の異常も見られないのは初見では分からないはずだよ』


(そうか……確かにシャルルに渡してた外套もあるし誤認させられるか)


まぁ此処で倒せればそんな事も考えなくて済むんだが……そう簡単にはいかないよな。

撤退させるにしても奴の身体能力も高い。

万全では無いと言っても神々の最高戦力であるアリシア様の懐に一瞬で入り込む程だ。

さて……どうしたものか……。


「魔力の矢」


「は?」


イェーガーの構える矢に青い光が集まり始め、やがてそれは上下に別れ青い矢の形となった。

本数にして4本の青い光の矢。

実弾と合わせれば5つだ。


だが問題なのはそこではない。

いや、飛来する本数が増えたのも問題だが本題はもっと別の所にある。

あの光の矢……詰まるところあの魔力の矢はイェーガーの能力による物では無いと言う事だ。


ミミティの話では悪魔達の持つ権能はそれぞれ魔力を用いずに発動できる、魔力によって形成されたあの矢はあくまで魔術の範疇と言うこと。


「果たして今の君達にこれを捌けるか?」


「ごめんっ!」


「きゃっ?!」


奴より魔力の矢が放たれる、それよりも早くアリシア様をお姫様抱っこして駆ける。

直ぐ後ろをイェーガーより放たれた矢が通り過ぎる。

かと思えば移動先を読んで放ってきたりするため急ブレーキを掛けて止まれば目の前を矢が通り過ぎる。


「ジョン!」


「っ!」


一斉に放たれる残り3つの矢、それはアリシア様の合図に従い身体を正面に向ければ俺から降りたアリシア様が全てを薙ぎ払った。


「しっ!」


その隙を先程のように詰め寄ったイェーガーに対して俺がアリシア様の前に入れ替わるように立ち拳を振るう。


2度、3度と拳を交えた後今度はイェーガーから距離を取った。


「まるでアリシアの戦士だな」


『は?』


「私の戦士だなんてそんな……♡」


憑依してるルナ様から底冷えする様な声が響く。チラリと後ろを見ればアリシア様は頬を押さえてくねくねと身体を左右に揺らしていた。


「アリシアもだが……君も中々に厄介な様だ。万全を期す為にまずはジョン、君を始末する」


『しゃがんで!』


ミミティの合図に直ぐに伏せれば頭上を何かが通り過ぎた。

背後からだ。


矢では無い何か……そう思ったのだが奴の手に戻った飛来物は矢そのものだった。


「どうなってるんだ……」


ブーメランみたいに戻ってくる矢なんて聞いたことないぞ……まさか俺が知らないだけであったとか……?

仮にあったとしても常に動き続けてるのに投げた奴の居る所に戻る様にするなんて不可能だろ。


『あれが奴の能力よ、放たれた矢を自在に操る』


(ああ……なるほどね……)


それなら納得。


「これを初見で躱されたのは初めてだ……」


驚いたみたいな言い方してるけど驚いたのこっちなんだが。

一度放たれた矢が戻って来るとか普通に脅威だし、しかも魔術じゃないから感知も出来ないし。

ミミティが居なかったら今頃貫かれてるな。


「ジョンっ!アリシア様!!無事!?」


「なんとか生きてるよ」


他に居た魔族を片付けたシャルル達が此方に合流した。


「勇者に聖女……多勢に無勢、此処は引かせてもらおう」


跳躍。

イェーガーは木の枝に飛び乗った。

そして始まりと同じ様に帽子を取り一礼した。


「勝負は預ける、ジョン」


それだけ言ってイェーガーは飛び去り姿を消した。

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