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セカンド・ワールド〜女神救出から始まる物語〜  作者: 唯ノ蒼月
第2章 攻勢作戦

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第44話 イニッツィオ会戦6

敵を要塞内部へと押し込んでから一日。


要塞内部へと突撃する事はせず丘の上から魔術による攻撃を仕掛けているが効果は薄い。


理由は単純に相手の展開する防壁を此方の攻撃魔術が抜けないからである。


要塞に籠った敵は此方が丘から魔術攻撃する度に要塞上空に防壁を展開する為内部への攻撃を遮断されているのだ。


また要塞への出入り口となる前後2つの入り口は固く閉ざされ侵入を拒んでいる、無理に近付けば要塞の木壁の上から狙い撃ちされるし仮に侵入出来たとしても中で袋叩きにされるだろう。


「どうする?私がアリシア様の剣で門扉破壊しよっか?」


「それも良いが依然として此方の人数が少ない訳で門扉破壊と共に元気な魔族軍に突撃されると面倒だし、このまま待ちでも良いぞ」


「待ってて良いの?」


「あんだけ多くの魔族兵が中に籠ったんだ、食糧の減る早さも凄まじいだろう。兵糧攻めってやつだ」


丘の上から要塞前の俺達の下まで来て合流したシャルルの提案をやんわりと断る。

食糧が減って焦って出てきた所を叩けば良いだろう。

運が良ければ降参してくれるかもしれない。


後の事を考えれば此方の戦力は温存しておきたい、だからそんな甘い考えをしていた。


だが現実はそんなに甘く無かった。


「敵の増援が間もなく到着するわ……」


ルナ様を通じてノルン様に呼び戻されたのでシャルル達と別れて指揮所へと戻った。

そんな俺にノルン様がそう告げた。

ノルン様は運命を司る女神様、その権能で未来視も出来る。

権能で未来を見たら敵の増援が来る。

恐らくそれによる結果がよろしくないのだろう。


「何処から来るんですか?」


「イニッツィオ要塞の背後に川を渡る橋があるわ、その向こうからよ」


「なるほど」


イニッツィオ要塞と川辺は少し離れている、故に俺達はイニッツィオ要塞を包囲しているのだが、このまま包囲していると敵の増援とイニッツィオ要塞の敵部隊による挟撃を受けるということか。


敵の増援、兵だけではない。

きっと食糧等も運ばれてくる筈だ。


「イニッツィオ要塞の包囲をそのまま少数精鋭で川向こうの偵察に向かいます」


「……アリシア姉様、悪い予感がします……」


「私が付いて行った方が良さそうだね。昇に憑依して行くよ」


そう言うや否やアリシア様が俺に憑依した。


「偵察にはシャルルも連れて行きなさい、そのまま戦闘になる可能性が高いわ」


「分かりました」


「……昇」


「はい?」


用は済んだし指揮所を出ようとした所でノルン様に呼び止められたので足を止めて振り返った所を抱きしめられる。


「無理はしてはいけないわよ」


「分かっています」


そっとノルン様を抱きしめ返す。

こうしてみるとノルン様本当に小さいよね。


『私以外の女神を抱いたわね』


「では、行ってきます」


「あっ……」


ルナ様が怖いのでそっと離れるとノルン様が名残惜しそうに手を伸ばしてきた。

俺はそっとその手を取る。


「約束です、必ず帰ってきます」


「約束よ……」


小指と小指を合わせ、約束を交える。

ルナ様を通じて俺の記憶を見たからこそ、知らない筈のノルン様ともやれる指切り。


どちらからともなく指切りを解き、今度こそ指揮所を出た。



『ルナが嫉妬深くなって昇も大変だね〜』


『別に嫉妬深く無いわよ』


『あれで嫉妬深くないって無理がないかな?』


『普通よ普通、昇は私のなんだから』


「シャルルを連れて行くとして他は誰を連れて行こうか」


「連携の取りやすいフィアナやティガー達を連れて行くのが良いんじゃないかしら?」


憑依して中で話し合ってるルナ様とアリシア様を他所に俺は外に出てきたミミティとどうするかを話し合っていた。

実際イニッツィオ要塞を包囲している為大勢を連れて行くわけにはいかないからな。


取り敢えず思い付いたメンバーとしては。


勇者であるシャルル、連携の取りやすいフィアナ、ティガー、ローナの4名である。

此処に追加するなら聖女であるクロエくらいかな。


他に仲の良いセレスティナは丘の上に待機、マリアは要塞周囲のゴーレムの操作があるから今回は除外している。


後はシャルル達が付いてきてくれるかだけど……。

要塞の包囲の維持もあるしもしかしたら難しいかも知れない。


「行くっ!!!!!」


そう思っていた時期が私にもありました。


聞きに行ったらまさかの即答。

少数精鋭で戦闘になる可能性が極めて高い危険な偵察だから少し考えると思ったら少しの間もない即答だよこの娘。


「勿論私も連れて行って下さるんですよね昇?」


そう言ってたらどうやら話を聞いていたらしいクロエが俺の肩に手を置いた。

後ろからな為顔が見えないが多分声音からして笑顔だと思う。

それはそれとしてシャルルの顔が引き攣ってるのが気になるんだけど。

あとなんか肩がミシミシ言ってる気がするんだけど。


「聞いた所そのメンバーでは治療出来る方が居ませんよね?つまり私を連れて行くと言う事ですよね?」


有無を言わさぬ勢いである。

余りの勢いにシャルルが後退ったんだけど。


「いやでもそれじゃ此処の治療が━━」


「指揮所にエイア様が待機してるじゃないですか」


「確かに治療の奇跡を扱えるエイア様が指揮所でノルン様と一緒に待機してるよ?!けどそう安々と前には出せないよね?!」


「怪我人を台車で運べば大丈夫ですよ」


「えぇ……」


未だに後ろを向けない為クロエの顔が見えない。

そんな時、シャルルがゆっくりと俺のもう片方の肩に手を置いた。


「諦めなよ昇……こうなったらクロエは頑なに聞かないから……」


「じゃあ一緒に行こうか……」


「決まりですね♪」


別に嫌という訳では無かったけどね。

にしてもクロエってこんなに頑なだったかなぁ。


そうして他のメンバーも問題無く集い、俺達は闇夜に乗じて包囲から抜けて川辺の方へと向かった。


川に掛かっている橋を渡り、向こう岸に付いた時に奥に明かりが灯っているのに気付いた。


「あれが増援部隊か?」


「そうみたいですぜ旦那」


「ん〜見た所簡易的に陣地を敷いてるね」


ローナの言葉に俺は懐から望遠鏡を取り出し覗く。

要塞の様に強固な陣地では無いが木を組み込んだ防壁……馬防柵と言えば分かりやすいか。

周囲を馬防柵で囲み、中に天幕が張ってある。


「幾つか木箱もあるな……まさかとは思うが援軍を支援する為の中継拠点か?」


「言われてみるとそれっぽいね……どうしようか?」


「もう少しだけ様子見、他に敵の姿が無さそうなら奇襲を掛けるか」


「分かった〜」


俺達は近くの茂みにて潜伏し敵を観察する事にした。


「特に動きはないな……」


「他に敵の匂いもしないし大丈夫だと思うよ」


あれから敵の動きも無く、ローナの嗅覚にも反応は無いので取り敢えずあの拠点は潰す事にした。


外に立つ2人の魔族を闇夜に乗じて倒しそのまま内部へ。

内部に入り直ぐに木箱の影に隠れて様子を見る。


座って焚き火を囲む者が3人、離れた所の木箱に座ってるのが2人。


「先に木箱の上の2人をやる、このまま回り込んむぞ」


全員が頷いたのを確認しゆっくりと物陰に隠れながら進む。


「まさか要塞を包囲されるとはな……」


「味方は何やってんだか……」


「丘の守りにも人数割いたっと聞いた、そんな無駄な事せず最初から要塞の守りだけに専念していれば包囲されずに済んだのではないか?」


「よっぽど丘が欲しかったんだろ」


「丘か……ごっ!?」


「がっ……はっ……!?」


2人で談笑する魔族の首を絞め暗闇へと引き摺る。

あのまま倒すと見つかる可能性が高いからな。


魔族の2人を倒し、そのまま木箱の中身を確認する。


「食糧に傷薬……増援で間違いなさそうだが……」


フィアナ達も他の木箱を開けて確認した所、他も食糧や傷薬などが詰まっていてこいつらがイニッツィオ要塞へと向かう増援だと言うのは分かる。


「増援にしては数が明らかに少ない━━」


「昇様っ!!!」


明らかに少ない人数に疑問を抱いた時、何かに気付いたフィアナに押し倒される。

瞬間、俺とフィアナの頭上を何かが掠めた。


また俺達が倒れた事で音が鳴り、焚き火を囲っていた魔族に気付かれてしまった。


「鼠が居ると思ったが……よもやこんな少人数で仕掛けてくるとは」


此処に居た魔族とは別の何者かが呟く。

そして暗闇の中から明かりのある此方へと徐々に歩いて姿を現したのは弓と矢を携えた悪魔だった。

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