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セカンド・ワールド〜女神救出から始まる物語〜  作者: 唯ノ蒼月
第2章 攻勢作戦

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第43話 イニッツィオ会戦5

翌朝。

マリアや他のゴーレムの影に隠れて眠りに就いていた俺は目を覚ました後、直ぐにリュックから干し肉を取り出して囓る。


今日も今日とて目を覚ましたマリアやリーゼロッテ達と共に本陣に向かって塹壕を掘り進める。


恐らくだがシャルルが既に丘の頂上付近に辿り着いたのだろう、丘から魔術攻撃が放たれることは無かった。


「昇、朗報よ」


「どうした?」


「シャルル率いる第1軍が(・・・・)丘の頂上の占領に成功したわ」


マリアから伝えられたシャルル達による丘の占領。確かに朗報だ。

だが1つ気になる点がある。

マリアは『第1軍が』と言った。

だが丘の占領には確かシャルル達第1軍の他に第3軍も向かったと聞いたはずだが?


「第3軍は……?」


「…………」


そう思ってマリアに聞いてみればマリアはそっと視線を逸らした。


「その……参加はしてたのだけれど……士気が低く進軍が遅くてシャルル達に置いて行かれたそうよ……」


「えぇ……」


聞く所によると進軍はしていた様だがシャルル達と違い士気が低いからか進軍速度が遅く第1軍、第3軍と共に距離が開いたそうだ。

シャルル達第1軍は相談の結果満場一致でそのまま第1軍のみでの強行を決定し一夜にして丘の占領を完遂したとのこと。


成功した要因としてはシャルルの気配が色濃い囮が俺の方にある事で魔族の守りが薄かったのがかなり助かった様だ。


ついでに余りにも早い丘の占領によって今朝やって来た魔族の補給部隊が勘違いして頂上にやって来たらしく有難くその補給を全て貰ったとの事。

また補給部隊はそのまま捕虜として捕まえたらしい。


「つい先程第3軍とも合流出来た事で丘の頂上までは安全に行ける道を確保出来たから今セレスティナ達魔術部隊が向かっているそうよ」


「なら早い内に要塞の攻略に移れそうだな」


「そうですね」


突如マリアやリーゼロッテとは違う声が響いた。

声のした方を向けばそこには法衣を身に纏ったクロエが立っていた。


「クロエ!?」


「シャルルが丘を占領した事で安全を確保出来たので援軍に来ましたよ、昇」


微笑みそう告げるクロエ。

そして直ぐに心配そうな表情に変わったかと思えば俺の方にやって来て手を掴んで引っ張り身体のあちらこちらを見て、触り始めた。


「大丈夫でしたか?何処か怪我は……擦り傷が幾つかありますね、直ぐ手当てします」


「いやこのくらい自分で」


「いいえ、私がやります」


「あっはい……」


「ではそちらに座って下さい」


有無を言わさぬクロエの勢いに俺は抵抗せずに手当てを任せる事にした。

塹壕内の土壁に背を預けて座り直ぐ目の前にクロエが法衣が土で汚れるのすら厭わず膝をつく。


「いつ怪我したとか分かりますか?」


「いや、覚えはないが……おおよそ攻撃魔術を受けた後だろう」


俺の手を取り、丁寧に治療を施すクロエに答える。

実際にいつ怪我をしたのか覚えはないが怪我するような事も無いしほぼ攻撃魔術によって飛散した石とかが掠ったのだろう、と言うかそのくらいしか無い。

後は至近弾が飛来した際にマリアに言われて飛び込む様に伏せたのも原因かも知れない。


それはそれとしてこの位の怪我なら本当に自分で治療出来るし聖女であるクロエの手を煩わせる必要も無いのだが……。


「駄目ですからね、私がやります」


「おう……」


当の本人に譲る気配は全くない。

傷口に消毒液を塗り包帯を丁寧に巻き付ける。


『昇のが上手いし速いわね』


(ルナ様、そう言うのは分かってても言わないものだと思います)


『分かってるわよ、だから昇にしか聞こえないように念話で話してるわよ』


ルナ様の言う通りクロエは消毒液を塗るのも包帯を巻くのも何処かぎこちなく少しもたついている。

慣れてそうだが、そうでもないようだ。


『クロエは基本アリシアから授かった奇跡を用いて治療をするのよ、だから包帯を巻いたりするのは慣れてないわ』


(あー、俺が奇跡とか魔術を受け付けないから仕方なくか)


どういう訳か俺の身体は奇跡や魔術を受け付けずそれによる治療も出来ないからである。

一応全く効かない訳ではなくアリシア様やエイア様など女神様達のは多少は効くようではあるがそれでも効果は薄い様だ。

女神様達で効果が薄いのなら人では全く効果を得られないだろう。

クロエはアリシア様から力を授かったとは言えその大元の女神様達ですら効果が薄いのだから。

故にこうして物理的に治療する他ない訳なのだ。


「出来ました……すみません、時間が掛かってしまって……」


「良いよ、大丈夫。ありがとな」


手当てしてくれたのに遅いと言う理由から謝罪してくれるクロエは本当に良い娘だなと思う。

自分の慣れない事をして遅いんだから仕方ない事なのだから。

治療を終えて移動するのかと思ったがクロエはその場から動くことは無く、何故か俺の頬に手を伸ばし優しく触れた。


「にしても……随分泥だらけですね」


「そりゃ攻撃魔術の着弾で土が振ってくるわけだからな、泥だらけにもなるさ」


結構な頻度で攻撃魔術が飛んできてたからな。

お陰でゴーレムの数もそこそこ減ってしまった訳だ。

これが味方達じゃなくて本当に良かったと思うよ。


合流したクロエと一緒に塹壕を通って最前線へと向かう。

またクロエ達が合流した事からマリアはゴーレムから自分の肉体に意識を戻して合流した。

他にも本陣で留守番してた筈のラニとラピスも来たのだが……。


「痛いっ!痛いのじゃ!や、やめろぉ!!!」


「「……」」


「お願いじゃから無言で踏みつけるのやめてくれんかのぉ!?」


リーゼロッテが1人抜け出して俺の傍に来たことがかなり御立腹だったらしく目の前でラニとラピスに足蹴にされてる。


「昇〜」


その様子になんとも言えない気持ちになって立ち尽くしていたらラピスが俺に気付いて此方に駆け寄り抱き着いてきた。

到着と同時に俺の先を歩いていたリーゼロッテを蹴り倒しそのまま足蹴にしていたからやっぱり気付いて無かったようだ。


そっとラピスを抱き留め優しく髪を撫でる、その後ろからラニもやって来た。


「昇、今日の晩御飯コイツの肉にしろ」


「わ、悪かったのじゃ!?」


ラニが滅茶苦茶怒ってる。

冗談に聞こえないが……流石に冗談だよな……?


なんとかラニとラピスの怒りを鎮めて最前線へと移動。


「次やったら本当に燃やして食うからな」


「ご、ごめんなのじゃ……」


右手に炎を発生させて冷たく言い放つラニにリーゼロッテは謝ることしか出来なかった。


「敵の数が増えたな」


マリアに作ってもらった簡易的な望遠鏡を覗いて魔族軍を見ればその数が増えている事に気付いた。

恐らくクロエ達第2軍が合流した事で前方の守りを固めたのだろう。


だが残念だが既に丘の頂上を占領した俺達はセレスティナ達魔術師部隊が到着すれば支援攻撃を行える為そこまで脅威では無い。


「セレスティナ達の支援攻撃の準備が出来たら教えてくれ」


「分かったわ」


マリアに伝えた後俺は即座に次の準備を始める。


「何してるんだ?」


「ゴーレムに持たせたい物を取り出してるんだ、足りない分は……作るか。ラニ達は危ないから触っちゃ駄目だぞ」


「「分かった」」


ちゃんと言うこと聞けるラニ達は偉いね、何処ぞの竜にも見習って欲しいものだ。


さて、今から作るもの、それは爆弾である。

リュックで持ってきていたのは数個であり数が少ない、幸いクロエ達がその材料を持ってきていた。

おおよそ未来視の出来るノルン様が未来で俺が爆弾欲しがるのを察して持たせたのだろう、じゃ無かったら要らないと思う。


せっせ、せっせと爆弾を製造してはゴーレム達に配布する。

そうして十分な数が行き渡った時セレスティナ達から準備完了の知らせが届いた。

時刻は昼、腹が減ったまま攻撃仕掛けるのもあれだし食事を摂る事にした。


後方配置されていた第2軍の人達によって届けられる握り飯を片手にもう一度魔族軍を望遠鏡で見る。


人数が増えている、突撃でもする気だろうか?


少ししてセレスティナ達の食事が終わったと連絡が来たので遂に要塞への攻撃を始める。

望遠鏡で魔族軍を覗きつつ、合図を出す。


「攻撃開始」


合図と共に丘の上から様々な魔術が放たれる。

俺はセレスティナ達の魔術攻撃に合わせゴーレム兵に爆弾を持たせたまま突撃させる。


過去の経験から魔族軍は防壁を上に張っている為魔術による被害はそこまで出ていない。


そんな状況下で突撃する此方側の兵を見て望遠鏡の先に見える魔族兵は嗤った。


『無謀だな』


そう言った気がした。

確かに幾ら魔術攻撃による支援があったとしてもその効果がそこまで得られてない今の段階で突撃を敢行するのは数で劣る此方側の消耗を招き更なる劣勢を強いるだろう。


まぁそれは普通の兵達だったらの話だ。


今突撃してるのはミミティの能力で擬態したマリア達のゴーレム兵だ、やられた所で此方に被害は無い。


ちなみに今回のゴーレム兵は儀式魔術による物では無いので低耐久である。

その為接敵した魔族兵との戦闘で次々と倒れて土塊に還っていってる。

その様子を見て魔族は鼻で笑ってる。

だがそんな態度もやられたゴーレム達が土に還った数秒後に爆発した事で驚愕に変わったがな。


何故土に還って爆発するのか、単純な話だ。

爆弾をゴーレムに持たせている為土に還った瞬間その爆弾が落下し地面に衝突、その衝撃で爆発してるだけだ。


そして驚愕して隙が出来た所にタイミング良くセレスティナ達の攻撃魔術が飛来する事で敵の前線は更なる混乱に陥った。


その混乱に乗じ更に爆弾持ちゴーレムを突撃させる。

こうする事で敵は勝手に前線を下げてくれる、なんせこっちはゴーレム兵で痛くも痒くも無いからな。


そんな風に繰り返す事で夕方までに敵を要塞内部へと押し込む事に成功した。

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