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セカンド・ワールド〜女神救出から始まる物語〜  作者: 唯ノ蒼月
第2章 攻勢作戦

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第39話 イニッツィオ会戦1

あれから他の部隊と小まめに連絡を取り合いつつ更に数日進みようやくイニッツィオ要塞へと辿り着いた。


平地に建てられた円形の木柵の要塞。

俺達の様に丸太を組み込む形ではなく、立て込んで並べた柵の壁である。

また柵の手前には侵入を防ぐ為の空堀があるようだ。


そんな要塞の手前には撤退した各地の魔族軍が集結し陣地を敷いていた。


「大軍だな……」


その姿を眺め、そんな言葉が口から溢れた。

ふとシャルルに目を向ければ微かに手が震えているのが見えた。


過去アリシア様達が囚われた際の奪還戦。

大軍同士の衝突、強行突破、そして敗走。


今目の前に居る大軍はその時に匹敵する多さとエイア様は仰った。


恐らくシャルルも知らぬ間にその敗北が自身の奥底に強く、深く根付いていて、この大軍を見てその敗北の記憶が蘇ってしまったのだろう。


後少しで捕まる所だった、全滅する所だった。

その恐怖はシャルルにしか分からない。


では俺がやれる事とは。


パァン。


柏手を一つ。


シャルル達の意識を俺に向けさせる。


「取り敢えず穴掘るぞ」


「……はぁ……昇は全く……もぉ」


「モーモーモーモーって牛かお前は」


「この馬鹿っ!」


「痛い!?」


シャルルに脛を蹴られた。


「……ありがとう、昇」


「何のお礼だよ、さっさと穴掘るぞ」


「はいはい」


シャルルは何処か呆れたような、でもホッとしたように笑う。

先程までの恐怖に押し潰されそうな少女はもう其処には居なかった。

これで良い。


シャルルに考えさせない事。


そして濃い敗北の記憶を勝利の記憶へと塗り替える事だ。


それからアリシア様達女神も含め全員で空堀と木柵で防御陣地を構築し後方には天幕を張って指揮所や休息所、食糧庫等を建設する。

他の部隊も次々と到着し、アリシア様やシャルル達を通して防御陣地の形成を指示した。


「フィアナ、偵察行くぞ」


「分かりました!」


周辺の地形、敵の配置等を把握したい為偵察に行こうと思い近くに居たフィアナに声を掛ける。

1人でも良いんだが、1人で行くと怒られるからな。

そしてフィアナは当たり前の様に俺を抱き上げ駆ける。


「……この移動法も久々だな……」


「最近はずっと荷馬車での移動でしたからね」


フィアナに抱き上げられながら俺は周囲に目を見る。

到着した他部隊が着々と陣地を構築しているが少し遅い気がする。


「少し遅いか……?作業効率が悪いのか?」


「私達みたいに昇様が居た訳では無いのでこうした作業が初めてなのだと思いますよ、空堀を掘ることはありますが作り方が今までと違いますからね」


敵の侵入を防ぐ為の空堀と自分達の身を隠す為の空堀では大きさも違うし、空堀には雨などで崩れない様にする為の土留の丸太に泥濘まないようにする為の敷き板もあるし慣れるまでは仕方ないか。


「中には空堀に疑問を持つ者も居ますでしょう、今までやっていないのに突如として指示が出た。感の良い者は昇様の考案では?と思うものも居て反感を抱く者もいるかと。腹立たしい事ですが……」


「そう言ってやるな、長く付き合っているフィアナ達と違い他とは交流が一切無いんだ、怪しくも思えるだろう」


実際に俺はフィアナ達以外とは全く交流が無いからな。

傍から見ればいきなり現れて魔族の支配地域からアリシア様達を奪還した怪しい男な訳だ。

魔族側の密偵と思う奴の1人や2人居るだろう。

しかもアリシア様達と仲が良いから余計面白く無い筈だ。

だからフィアナの怒りを鎮めようと思ってそんな事を言ったんだが。


「私は勿論ローナやティガー達も昇様を都から追い出した事を許していませんからね」


どうやらだいぶあの事を根に持っているらしく怒りを鎮めるのは難しそうだ。


「っと、この辺で良い」


「分かりました」


自分達の合流地点の少し後ろにある高台に到着。

此処なら全体を見渡せるし良さそうと思いフィアナに伝えて降ろしてもらう。


「こういう時に望遠鏡があればな……」


「ぼ、望遠鏡?」


「遠見の魔術が使える魔導具みたいな物だ」


「ま、魔導具???」


「……」


流石魔術の黎明期……魔導具という物すら無いとは……。


「簡単に説明すると魔力を使って特定の効果や魔術を行使出来る物だな、炎を生み出す剣とか光の矢を放つ弓とか」


「シャルルの剣みたいですね」


「シャルルの剣?」


「昇は見たこと無かったわね、シャルルの剣はアリシアが自らの力を用いて作った剣で聖属性の光波を放てるのよ」


『昇の世界で分かりやすく言うなら聖剣かしらね?こっちでは聖剣とは呼ばれて無くてアリシアの剣かシャルルの剣で識別されてるのよね』


俺とフィアナの会話にルナ様が参入、俺が異世界人と言う事をフィアナは知らない為ルナ様が念話で補足して説明して下さった。


「あー、となるとシャルルの剣の下位互換で様々な種類があるって考えれば分かりやすいか」


「なるほど……私達の知らない知識がある事と言い……昇様まだ何か隠してません?」


「良い眺めだな〜」


「露骨に話逸らさないでくれません?全く……この感じですとルナ様は何か知ってますよね?」


「私から貴女に話すことは何も無いわ」


いや冷た。

ルナ様の声音が滅茶苦茶冷たいんだけど。


「相変わらず昇様以外には冷たいですね」


「あ、これが普通なのね」


確かにあんまりルナ様が他の人達と話してる所見たことないけど。

でもラニやラピスとは普通に接してたけど……まだまだ幼いからか?


「昇様、これでもルナ様はかなり優しくなりましたよ」


「これで?!」


「余計な事を言うな猫女、そんな事よりもさっさと遠見の魔術使って周囲の情報を知らせなさい」


ルナ様の言葉にフィアナは怒るどころか苦笑いしながら頷き遠見の魔術を使用して周囲の観察に入った。

あんな言われ方すると怒りそうだと思ったがチラッと見たルナ様の頬が赤い事から照れ隠しで言った様だ。


「余り人の顔を覗き見るものでは無いわよ、昇」


「すいません」


バレてた。


情報も十分に得れたのでルナ様が憑依した後再びフィアナに抱き上げて貰ってアリシア様の居る本陣へと戻る。


「居た!探しましたよ昇!」


フィアナと共に帰ってきたらクロエが走って俺の下まで駆けてきた。

そのままクロエに手を引っ張って指揮所へと連れてかれた。

指揮所にはアリシア様やノルン様の他にシャルルが居て俺とクロエの入室後此方に顔を向けた。


「ま〜た勝手に居なくなって」


「勝手じゃないぞ、ちゃんと伝えたから」


「……誰に?」


「フィアナ」


「そのフィアナも一緒に居なくなってるから質が悪いんだよぉ!!!」


ぽかぽかとシャルルに肩を叩かれる。

いやぁ元気の様で良かったよ。


「それで、何処行ってたのさ〜?」


「偵察」


「ふんっ!」


「痛ぇ?!」


シャルルに蹴られた。

なんか遠慮無くなって来たね、君。


「それで?私に黙って偵察に行った昇君の話を聞こうか?」


「すいません……」


笑顔のアリシア様に逆らってはいけない。


「まず本陣を此処から後方に下がった所の高台に移したいと思います」


「此処に本陣を建てたと言うのにわざわざ新たに陣地を設けると?」


なんだろ……アリシア様の言葉に棘を感じる……。


「はい、此処よりも後方の高台の方が全体を見渡せる為相手の行動に対処し易い。それに前線の此処よりも安全かと思います」


口元に手を当て考えるアリシア様、数秒考えた後納得して頂けた様で頷いた。


「……それだけじゃないんでしょ?」


「イニッツィオ要塞攻略の最優先目標を隣接する丘の攻略に設定します」


「それはまた……どうしてだい?」


この案に付いては反感を買うと思ってたんだが、何事もなく話を聞いてくれるのは有難いな。

いや、確かにアリシア様も含め全員驚いてはいるけども何か理由があると考えてくれているみたいだ。


「まず要塞攻略を正面から行う場合甚大な被害を被る可能性が高いです」


「それは……そうだね」


「その被害を大きく減らすのに隣接する丘が使えるんです」


「あの丘が?」


「はい、丘を制圧後、要塞に向けて攻撃魔術を放てば一方的に要塞を攻撃出来るはずです」


「なるほどね……分かった。昇の提案通り本陣を後方の高台に移す、異論は……無いようだね。早速取り掛かるよ!」


「「「「はい!」」」」


アリシア様の一声でそれぞれが作業に移る。

俺の提案が問題なく通って少しホッとした。

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