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セカンド・ワールド〜女神救出から始まる物語〜  作者: 唯ノ蒼月
第2章 攻勢作戦

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第36話 援軍到着

陣地防衛戦3日目。


魔族は2日目の時同様に激しい攻勢を仕掛けてきた。

だが防御陣地の存在もあり此方は対して被害も無くこれを迎撃した。

幾人かの負傷はあったものの死者は未だなし。


陣地防衛戦4日目。


魔族の攻勢がかなり弱まった。

というのもある一定のライン、恐らくここ3日間の戦いで此方の魔術攻撃における有効打のラインを見極め設定したのだろう。

その一定ラインを超える事は無く互いに牽制する形となった。

この3日間ずっと攻め続けていた魔族が何故急に攻勢を控えたのかは分からない。

食糧攻めを思いつき此方の食糧が尽きるのを待っているのか、はたまた被害が大きすぎたから態勢を整えているのか。


魔族の会話を盗み聞いても[停止命令だ、攻撃は牽制程度に留めろ]とだけ。


何にせよ問題は無い。

アリシア様からシャルル達も順調に事が進み此方に向かっていると伝えられた。

シャルルの到着まで食糧も持ちそうだし、それもあって此方はかなり気楽になった。



そして今日、陣地防衛戦5日目を迎えた。


天候は雨である。


「攻めて来るんでしょうか」


覗き穴から外を眺めるフィアナが呟いた。

雨の中魔族が攻勢に出るか疑問に思っているようだ。

陣地内はしっかりと排水処置もしてあるし余った材木を床に敷いている為泥濘む事はない。

しかし陣地の外はそういう訳にはいかない。

排水処置など無いし、此方の陣地の様に屋根がある訳でも無い。

空から降り注ぐ水は何の抵抗もなく地に落ちて地面を泥沼へと変える。

そんな中進めば進行速度は下がるし、泥濘みに足を取られて立ち止まってしまえば此方からの魔術攻撃の格好の的になる訳だ。

攻撃は仕掛けては来ないと思うが、実際には分からん。


「何か策があるなら仕掛けてくるし、無いなら様子見じゃない?」


「まぁそうだな」


ローナの呟きに頷く。

何の策も無く攻撃に出るとは思えんしな。

そんな時だった。


[━━━援軍の到着及びそれぞれ指定の位置に付いたのを確認した]


マリアの風魔術が魔族の会話を拾った。


[━━━進め]


そしてそれは戦闘再開の合図でもあった。


「来るぞ!」


俺は声を張り上げた。

予測とは違う敵の動き、空気が一気にピリピリと張り詰めた物へと変わる。


「敵の援軍が合流したそうだ!気を引き締め直せ!」


「「「「おぉ!!!」」」」


俺の声に味方が鬨の声を上げる。

敵の増援と聞くと普通に士気が下がりそうなものだが仲間達の士気が下がる事は無かった。

きっと勇者であるシャルルが他方面で勝利して此方に向かっていると皆聞いているからだろう。


シャルルの勝利が全軍の士気を向上させているのだ。


【シャルルが勝てばそれが全体の勝利に繋がるから】


いつかアリシア様が言っていた事は本当のようだ。


いや、別に疑っていた訳では無いけど、いざこうやって目の当たりにしてようやく実感が湧いた。

だって勇者とは言えまだまだ子供だし。


……今はシャルル達の事は置いておいて此方も応戦しようか。

さて、既にこの数日で此方が迎撃する為の覗き穴の位置は敵に把握されている。

また相手の増援が魔術に長けた者達だと覗き穴を狙い撃ちしてくる可能性もあり味方の被害が多くなる可能性があるし、最悪死人が出る可能性だってある。

確かに俺達は魔族……強いては悪魔達と戦争中で犠牲者を出さないと言うのは甘い戯言だ。

それでもなるべく犠牲者は出したくはない。


この世界の魔術が黎明期である事からも死者を蘇らせる魔術は存在しない。

死霊術はあくまで亡くなった者の肉体を操るに過ぎない。

この世界において、命を落とした者が蘇る術は無いんだ。


だからこそ、被害を限りなく抑えたい。

その為に仕掛けも施した。


「セレスティナ」


「はい」


セレスティナを呼び、近くに来たのを確認して俺はゆっくりと壁に手を当てる。

そして力を入れてゆっくりと壁を押す。


壁が開いた瞬間、隙間から雨音が響いた。


そう、これが仕掛けである。


魔族に覗き穴の位置を知られた際に不意を着く為に設けておいた蓋付き覗き穴だ。

蓋が付けられているし、また他の防壁同様に上から葉っぱで隠してある為外から見ても此処に覗き穴があるとは分からない筈だ。


「まだだぞ、セレスティナ」


「分かってますよ」


最初から蓋を全開に開けてしまうと敵に見つかってしまうので相手の姿を視認出来る最低限のみ開ける。


ゆっくりと侵攻する魔族、此方の有効射程に入り他の覗き穴から攻撃魔術が放たれる。


まだだ。


相手は防壁を張っている、今打っても効果は薄くこの隠し穴の効果を活かしきれない。

まだ引き付ける。

相手に決定的な隙が生まれるギリギリまで。


そしてその瞬間は訪れた。


「今だ!」


「っ!」


相手が此方側の覗き穴を狙い撃てる距離まで近付き、防壁を解いて攻撃魔術を撃とうとした瞬間。

露わとなった一瞬の隙を、陣地から放たれる無数の攻撃魔術が襲った。


━━━━そう、仕掛けの隠し覗き穴はこの一カ所だけでは無い。


陣地内に無数に仕掛けた隠し穴から一斉に攻撃魔術が放たれ、思わぬ所から不意撃ちを受けた魔族は直撃。

その多くを撃ち倒すことに成功した。


とは言え不意打ちだ、二度は通用しないだろう。

撃ち倒した魔族の背後には既に第2陣が構えている。


奴等は先程の不意打ちに戸惑う事なく此方の陣地を攻略しようと進軍、それに対して俺達は容赦無く攻撃魔術を浴びせる。

一人、また一人と地に伏せて重なる魔族。


ただやられるだけでは無い、魔族も此方に対して攻撃魔術を放っている。

着弾した攻撃魔術は少しずつ、だが確実に防壁を削っている。


「さっき説明した通り相手の攻撃で穴が空いた箇所は土魔術で応急処置をしておけ、相手に陣地の制圧の機会を与えるな!」


傍に控えるマリアを通じて味方全体に通達。

まぁすぐにすぐ破壊される程弱くはないが。


「にしてもセレスティナも遂に杖無しに無詠唱で魔術を放てるようになったかぁ」


今なお隠し穴から蓋を盾にしつつ魔族を迎撃するセレスティナ。

彼女は今までと違い詠唱を唱えずに魔術を行使しており、またその手に杖を持っていない。


「それは今は置いときましょ、それよりも今回は中々しつこいわよ?」


「なんかありそうだな」


普段なら一度下がって態勢を立て直しているはずが魔族は今回はずっと食らいついている。


[川の増水!それにより勢いが増して渡れませんっ!]


突如響く魔族の声。

無論陣地内に侵入は許していない、マリアの風魔術が拾ったのだろう。


「増援と共に川を渡って攻めてくるつもりだったのか」


「雨に救われたわね」


川の増水によって阻止出来たが実際に行われていたらそちらにも人員が割かれて厳しい戦いになってたかもな。


そしてマリアの風魔術は更なる吉報を届けた。


[ゆ、勇者ですっ!勇者が後方に現れましたっ!!!]


[馬鹿なっ!?此処に勇者は居ない筈ではっ!?]


「シャルルが戻ってきたかっ!」


勇者であるシャルルの帰還、それにより魔族は防御陣地の制圧を止め急いで撤退を始めた

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