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セカンド・ワールド〜女神救出から始まる物語〜  作者: 唯ノ蒼月
第2章 攻勢作戦

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第34話 陣地防衛戦

陣地防衛戦初日。

陣地を攻略する為に激しい攻勢を仕掛けてくるだろうと思い備えていた俺達。


「来ませんね……」


だが予想とは裏腹に魔族は様子見に徹していた。

そんな中覗き穴から外を共に見ていたフィアナが呟く。


「流石に今までの被害から慎重になったか?」


「今までと違い私達の姿が視認しづらいのも原因かもしれませんね、此処に来るまで散々な目に合っていますし次は何が飛び出すかで身構えているのかも」


フィアナの言う通り恐らくそれだろうな。

陣地によって姿が見えない俺達。

此処に来るまで罠とかにも嵌っている事からこの陣地にも何かしら仕掛けてあると考えるのが普通か。

しかもこれまでは街の防衛戦ならいざ知らず、こういった前線では互いに陣地などを構えずに正面からの殴り合いが普通だったと聞くし、相手が突然見たことも無いような構造物に隠れていたら警戒するわな。


「良いような悪いような……なんとも言えん状況だな……」


思わぬ所で時間稼ぎ出来たと思ったがこれが長引くと逆に此方が追い詰められる可能性があるんだよな……。


「良くないのですか?」


俺の呟きを聞いて首を傾げるフィアナ。

確かに現状魔族側は此方に対して攻めあぐねている訳で悪くはないんだ、シャルル達が帰ってくるまでの時間を稼げる訳だし。

だが俺が気にしている問題は別の所にある。


「このままの状況で時間を消費すると此方が不利になる」


「何故ですか?!此方は被害無くシャルル達が帰って来るまでの時間を稼げるのですよ!?」


「まず食糧、食糧も無限じゃないからな。魔族が近くに居る状態では食糧を確保しに出掛けるのも難しい……と言うか危険だ。次にシャルルの帰って来る時間、これがいつになるか不明な所だ。このままの状態でも食糧が尽きる前に戻ってこれれば良いが戻って来れないという可能性もある訳だ」


別に魔族を気にせず食糧を確保しに出ても良いが、それだと魔族に陣地の入り口を知られてそこを攻められる危険性が高まる。

入り口を知られ陣地内への侵入を許してしまえば魔族に陣地制圧の足掛かりを与えてしまう事になりかねない。


「そう言われると……そうですね」


口に手を当て考え込み、納得するフィアナ。

にしてもシャルルを呼び捨てか、俺が初めて会った時よりだいぶ仲良くなったようだ。


「とは言えそれはあくまで最悪な場合であるし、このまま睨み合いが続き食糧が尽きそうなら撤退を前提に動けば良いだろう」


この場所を死守しなければいけない理由は無いし。

魔族側に陣地への出入り口がバレて侵入されたならそのまま撤退戦に移行、船で脱出すれば済むことだろう。

アリシア様達を通じて陣地からの脱出をシャルル達に伝える事も出来るし、此処で会わなきゃいけない理由はない。


「少しラニとラピスの様子を見に行ってくる」


「分かりました」


フィアナにこの場を任せて俺は二人の様子を見に休息所へと足を運ぶ。


「っ……昇!」


休息所に入って直ぐ、ラニが俺に気付いた。

ラニとラピスが駆け寄って抱き着いてきたので優しく受け止めて抱きしめる。

俺はまだ幼く背の低いラニ達の目線に合わせるようにその場にしゃがみ込む。


「やっぱり怖いか?」


今はまだ戦闘になってはいないが、始まればこれまでとは違い激しい物となるだろう。


「ううん」


「昇が居るから大丈夫」


しかし、そうラニとラピスは答えた。

身体も震えていないし、声も震えていない事から強がりでは無い。

あぁ、この娘達はやっぱり強いな……。





「魔族がゆっくりと進軍を開始しました」


再びフィアナの下に戻り、少しして魔族が進軍を開始したらしく、見張りを続けていたフィアナが連絡してくれた。


「手筈通りに迎え撃て」


「分かりました」


フィアナにそれだけ伝えて俺はラニとラピスを連れて少し後ろに下がる。

あのまま2人だけにしておくのも不安だし、ラニ達も傍に居たいと言っていた事からこうして俺の傍に連れている。

ちなみに連れてきた時はフィアナ達もその方が安全だと頷いていた。

なお誰の安全かと言うと俺だった。

魔術の扱えない俺の傍に魔術の扱えるラニ、ラピスが居ればより安全だと言う事らしい。

ラニとラピスの魔術の腕は精霊のマリアやセレスティナ達のお墨付きだし、フィアナ達からしても安心出来るらしい。


程なくして魔術の撃ち合いが発生、魔族の魔術が着弾する事で爆発音が響き始めた。


「始まったな」


「始まったね」


戦闘が始まっても怖がる様子を見せないラニとラピス。

それもそうか。

まだ魔術の黎明期なのかこの世界では地形が大幅に変わるような強大な威力の魔術が存在していないらしく、あっても地面が少し凹む程度の威力だ。

そんな低威力の魔術しか無い中で生まれたこの陣地は絶大な防御力を誇る。

丸太を組んで壁とすることで侵入を防ぎ、尚且つ主力となる魔術への耐性を付与してある訳だ。

それでも要塞に比べて簡易的な物でしかないから慢心してはいけないが。

それでも安心感が得られるのは大きいらしくフィアナやセレスティナ達も落ち着いて魔族の対処にあたっている。


「主よ〜此処に居たか〜」


「リーゼロッテ、何かあったのか?」


「いんや、何も。ただお主の傍に居た方が良さそうじゃなと思い探しておっただけよ」


魔術の使えない俺と他の皆と比べて幼いラニやリーゼロッテ達は極力戦闘には参加しないようにしてる。

そういった非戦闘員は固まって居た方がフィアナ達の邪魔にもならんか。


「万が一に備えて何時でも逃げれる様にはしとくぞ」


「分かっている」


この陣地がすぐに制圧される可能性は低いと言うだけであって無いわけでは無いからな。

魔術だって黎明期と言う事はまだまだ発展の余地がある……つまり地形の変わる程の威力の魔術が今まさに生まれても可笑しくは無いのだから。

堅牢な防御陣地と言ってもそれは現状低威力の魔術しかないからであって地形が変わる程の強力な魔術が飛んできたらひとたまりもないだろう。


そんな低確率の、魔族にとっての奇跡が起きないよう願いながら俺はラニ、ラピス、リーゼロッテの面倒を見て過ごした。

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