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セカンド・ワールド〜女神救出から始まる物語〜  作者: 唯ノ蒼月
第2章 攻勢作戦

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第30話 魔族陣地制圧

シャルルSide


まだ日も登らない深夜。

私達は馬を駆り、昇から離れ他方面の味方の援軍へと向かった。

勇者である私と聖女であるクロエはアリシア様から頂いた力が原因で魔族に察知されるけれどそれについてはちゃんと対策してある。

私とクロエの身に付けている外套、これは昇の髪が編み込まれた物だ。

アリシア様達曰く昇自身にアリシア様達の気配を抑える、または消す特異性があるらしくそれを利用したとの事。

つまりこの昇の外套を着ている間は私達の勇者と聖女としての気配が抑えられ魔族の探知から逃れられ易くなる訳だ。

アリシア様含む女神様達は昇と一緒に陣地に居座った。

わざわざ危険な前線の援軍に向かうよりも昇と一緒に陣地に残る方が比較的安全だからね。

今も昇に憑依しているのだろう、気配が全く感じられないし。


ちなみにアリシア様の護衛部隊は私の方の部隊に配置された。

あの護衛部隊が居ると昇も居心地が悪いだろうからとアリシア様が無理矢理配置した。

私もクロエもそれに賛成した。


馬を走らせてから長い時間が経ち、朝日が昇った。

私達は一度湖の畔で馬を休ませつつ話し合うことにした。


「ノルン様の情報では魔族は部隊を細かく分けて布陣させているようです」


ノルン様の未来視による情報。


昇によって魔族軍が2度に渡り壊滅的被害を被ったことから全滅を防ぐ為に細かく分けたみたいだね。

お陰で私達はより魔族軍を撃破しやすくなった訳だ、本当……昇が暴れたお陰だね。

それはそれとして私は勿論、クロエも昇が単独で潜入した事を許しては無いけど。

次そんな危ない事したらどうしてやろうかな。


「味方の戦士に使者を送って近くの魔族軍部隊を挟撃、その後様子を見て行けそうなら勢いのまま他の部隊の陣地にも攻撃を仕掛けようか」


「……随分攻撃的ですね」


「らしくないかもね、けど早く昇の下に戻らないと何やるか分からないし」


今この瞬間も昇があの陣地を抜け出していないか心配でならない。

私達から離れる為……では無く、私達を助ける為に。

魔力こそ無く、魔術が扱えないけど却ってそれが昇の隠密性を高め潜入を手助けしてる。

だから私達にもバレる事なく容易に陣地を抜け出せるんだと思う。

昇は私達がより魔族軍を倒し易くする為に自身を囮にする事に戸惑いが無いようにも思えるし……。

取り敢えず付近に居る味方の戦士達の下へ使者を送りその返事を待つ。

少しして戻ってきた使者からの返答は了承だった。

向こうは何時でも行ける様で私達に合わせるとの事、私達は準備を整え直ぐに行動に移した。

事前に調べた敵の陣地はこれまでと変わらず木柵だけの陣地で昇によって得られた私達の様な堅牢な作りの陣地では無い。


「行くよっ!」


馬に乗りクロエと共に先頭を駆けて味方の士気を上げる。

使者を送った他の戦士達とも合流を果たした私達はそのまま魔族軍陣地へと流れ込む。

私達に気付いていた魔族軍は既に迎撃の態勢を取っていたけどそんなもので止められるほど弱くないよっ!


「はっ!」


1人、また1人と前に立ち塞がる魔族の戦士を斬り伏せて進む。

此方の戦士達も落馬したり、斬られたりしてるけど被害は圧倒的に少ない。


「このまま押し切るよ!」


「「「「「「「おぉ!!!」」」」」」」


味方から上がる鬨の声。

上がる私達の士気に対して魔族軍は目に見えて士気が下がっている。

戦意を喪失して逃げていく魔族の戦士もちらほら出始めているし、このまま行けば直に制圧出来るかな。


それから少しして、予想通り魔族陣地の制圧が完了した。

此方は重傷者が数名居るけど死者は無し、大勝利だね。

シャルルが重傷者の治療をしてる間に私達は次に向かう準備をする。


「あむ……」


動いて少しお腹が空いたから持ってきていた干し肉を食べる。

ただ肉を干しただけの物なので味も質素なもの。


「はぁ……昇のご飯が恋しいな……」


昇が作ってくれたご飯が美味しくて、干し肉よりもそれを食べたいと思ってしまう。

けど此処に昇は居ない、食べる事は出来ない。

叶わない事を願っても仕方ないし、それは終わって再会した時の楽しみとして取っておこう。


「お待たせしました」


「お疲れ様、少し休んでから次に向かおう」


数名の重傷者の治療を終えたシャルルの為に少しだけ休んでから次の魔族陣地攻略の為に馬を駆る。

先と同じ様に付近の味方に使者を送って意思の疎通を図り魔族陣地を攻撃。

魔族陣地の制圧、それによって何名もの戦士が倒れ、神々の下にその魂が還っていく。

それでも私達は止まらない。

魔族を倒し、戦争を終わらせる為に。


それから2回、魔族陣地を制圧し空を見上げる。

日が沈み空が暗くなりつつあった。

もうじき、夜が訪れる。

進軍を止め、夜営を行う事にした。


「小さな火」


集めた枝に火魔術で火を灯し暖を取る。

焚き火がパチパチと音を立てて火の粉を散らす。


「順調ですね」


「うん、怖いほどね」


同じ火で暖を取るクロエの呟きに頷く。

計3回の魔族陣地の制圧は驚く程順調に進んだ。

魔族軍が今までの様に大軍では無く、幾つかに分けた事が要因だと思う。

全滅を防ぐ為に数的優位を捨てる程までに魔族は昇を恐れたんだろう。

仕掛けられた罠に食糧庫の破壊、未知の手段により次々と寝返り、正気とは思えない様子の味方。

それに加えて今回は魔族の死霊魔術によって蘇った魔族の戦士達を追撃に向かわせていると聞いた。

その状況を自分達に置き換えた時、得体の知れない恐怖にゾクリと身体が震えた。


「本当……昇が味方で良かったよ……」


「そうですね……」


私の呟きにクロエは苦笑いを浮かべて答えた。

正気を失った味方が、死んだ筈の味方が武器を手に躊躇なく向かって来るんだから、そんな事をやられる側は堪ったものじゃないよね。

一体どうやったらそんな事を思いつくんだろうか。


「明日もこの調子で事が進むと良いんだけどなぁ」


「問題無いと思いますよ」


今日で3カ所の魔族陣地を制圧した訳だけど、これだけ暴れると流石に各地に増援が送られて一筋縄ではいかないと思ったんだけどクロエは首を横に振った。


「私は昇によって操られている魔族が他の魔族に対して追撃と襲撃を行っていることから援軍が来る可能性は少ないと見ています」


「でも私達の正体も流石に気付かれたんじゃ?」


「今日はまだ大丈夫じゃないでしょうか、昇の外套もありますし。流石に連日繰り返せば気付くでしょうけど」


「それもそうか〜」


勇者と聖女の気配を消す、または抑える昇の外套が特殊だから魔族もそれに気付くのには時間を有するとは思う。

と言うか混乱してると思うんだよね、今まで探知出来ていた私達やアリシア様達の気配が見つからないんだから。

此処から後方の都の神々の気配はあるから余計困惑するだろうね。


「そろそろ寝ようか」


「そうしましょう」


明日に備え、私達は見張りを交代しながら眠りに就いた。

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