第29話 川辺の陣地
森に入り、川辺に到着した俺達は早速陣地の構築を開始。
ティガー達が手慣れた様子で伐採をし、セレスティナとマリア達が魔術を用いて伐採された木を加工していき、そしてフィアナとローナ、ラニ達が加工された木材を持って木柵を建てていく。
俺も作業している訳だがどうしても魔術が使えないので皆と比べてかなり遅い。
またシャルル達には地面の整地や空堀の製作を頼んである。
女神様達含めた総出での陣地構築なので凄まじい速度で陣地が出来上がっていく。
伐採した木々を加工して壁を作ったり、木製のトーチカを作ったり。
勿論その全てに耐性魔術も付与してある。
次々と運び込まれては加工されて生産されていく木材をひたすら運んでは地面に穴を掘り支柱を建てて柵を作っていく作業を進めていくうちにあっという間に日が傾いて暗くなってきたが火を起こしたり光魔術で明かりを確保する。
見張り、休息、作業とグループを分けて作業を続行。
まだ幼いラニ、ラピス、リーゼロッテは眠りにつかせた。
ルナ様含む女神様方にも休む様伝えたがどうやら一緒にこのまま作業を進めるようだ。
「ノルン様」
そんな中俺は気になった事があったのでノルン様に声を掛けた。
「あら?何かしら昇?」
「未来視で此処が襲撃されるとかって分かります?」
「ちょっと待ってなさい……」
そう言って周囲を見渡すノルン様。
じっと待つこと数秒後。
「ええ、襲撃されるわね……それも被害がかなり出るわ……」
そう呟くノルン様の顔は夜だからか、暗く見えた。
「良し」
「ちょ、ちょっと何処へ行くのよ?!」
「罠仕掛けに行ってきます」
ノルン様に襲撃されるか否かを調べてもらったのは罠を仕掛ける為だ。
もしシャルル達が戻ってくるまでの間、襲撃されないのであれば再び進軍を進める際に仕掛けた罠が邪魔になるからな。
襲撃されるのが分かっているのであれば侵攻方向に罠を仕掛けておけば良い。
罠を仕掛けてどれくらい被害が減るかは分からんけど、無いよりは良いだろう。
「罠って……そんなに上手くいくんでしょうか」
「うおっ、いつの間に居たの?!」
ヌッと横から現れた金髪ロングの美少女。
エルフのセレスティナだ。
その他にも精霊のマリアや獣人のフィアナ達も居た、本当にいつの間に来てたんだろうか。
「手伝いに来たわよ、昇」
「お、おう、ありがとう」
長い黒髪を靡かせながら隣に立って服の袖を引っ張ってきたマリアにお礼を言う。
「正直上手くいくかは分からん。だが罠の存在によって相手の侵攻を遅らせたり、その戦力を減らす事は出来るはずだ」
幸い此処は森の中で見晴らしが悪いし素早く移動するのも難しいだろう。
そんな中で罠があるとなればより侵攻を遅らせる事が出来ると思っている。
罠は落とし穴に転がる丸太と色々と仕掛けるつもりだ。
縄の変わりに森の中に大量にある蔓を用いて、単純に足を引っ掛けて転ばせるものや引っ掛けたらそれに連動して吊るされた丸太が振り子の要領で飛んでくるものや頭上から落ちるもの等を製作していく。
魔族に対しての殺傷力は低いがそれでもストレスは与えられるはずだ。
中にはあの丘で用いた爆発する物も設置してある。例の特殊金属と特殊な綿による簡易爆弾。
仕掛けられた蔓に足を引っ掛け、引っ張られた蔓によって特殊金属と特殊な綿が接触、火が付いて液体に引火、爆発といった感じだ。
罠を仕掛け終え、陣地へと戻る。
「…………」
「昇?どうしたの?」
陣地を見て立ち止まった俺を不思議に思ったローナが聞いてくる。
さて、今俺の目の前にあるのは丸太が剥き出しの陣地だ。
丸太が組まれていると一目で分かる。
「隠すか」
という事でこのままでは目立つ防御陣地を隠す事にした。
幸い木を伐採した時に出た葉っぱが大量にある。
丸太の上から葉っぱで覆って防御陣地を周囲と溶け込ませる事で敵から見つかりにくくさせる。
相手から見つからなかったら素通りされるのでは?とフィアナ達が疑問に思っていたがそれは魔族をこの周辺に誘い込むつもりなので問題はないはずだ。
防御陣地周辺に誘い込み、隠蔽された防御陣地から不意打ちをする事でより相手に被害を出させる。
防御陣地の位置がバレた所でようやく本来の防衛戦になると言う感じだ。
また防御陣地の位置がバレてもこうやって隠してあれば侵入口が分からりづらい為、防御陣地内部への侵入の時間を稼げる筈だ。
防御陣地がある程度形になった所で太陽が顔を出した。
朝の到来だ。
「おはよ……」
「おはようラニ、ラピス、よく寝れたか?」
「抱き枕が無かったからあんまりだな……」
眠たそうなラニがそう言って手を広げたので俺はそっとラニを抱き寄せる。
「ん……」
あ、このまま寝るのね……。
「丁度良いです、昇様はそのままお休みください」
「ああ……そうさせてもらうよ」
ラニに抱き着かれたままでは作業が出来ないのでフィアナのお言葉に甘えて俺は休ませて貰う事にした。
眠ったラニを抱き上げ、ラピスと手を繋いで休息所へと足を運ぶ。
未だに眠るリーゼロッテの横にラニを下ろし、そのまま横になる。
「お休みなさい、昇」
「お休み、ラピス」
隣に来て横になったラピスの髪を優しく撫でて俺も横になる。
徹夜したからか、直ぐに眠気に襲われ、眠りに就いた。
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目が覚めたのは昼。
両隣に居たラニとラピスは居なく、変わりにルナ様とエイア様に変わっていた。
「んぅ……おはよう……昇」
「おはよぉ弟く〜ん……」
身体を起こせばピクリと反応しお二方も身体を起こした。
どうやら起こしてしまったようだ。
「もう少し寝てます?」
「「大丈夫……」」
多少寝惚けているようだが……と思っていたら二人揃って憑依されたのでまぁ問題ないかな。
休息所から外に出る、眠る前は何も無かった空堀の頭上には雨風凌ぐ為に屋根が作られていた。
材料は丸太と蔓と葉っぱだな。
陽の光を入れるために等間隔で蔓と葉っぱだけの屋根もある。
表面を葉っぱで覆う事で隠蔽されてるし問題無いな。
その他にも食糧庫も完成していた。
「お疲れ様、フィアナ」
「昇様……」
「こんな所で寝てると風邪引くぞ、ほら休息所まで連れてってやるから」
「すいません……ふぁ……」
欠伸をして目を擦るフィアナを抱きかかえ再び休息所へと戻り優しく寝かせたら再び外へと出て川の方へと向かう。
「こんな所に居たのか、リーゼロッテ」
「おぉ昇、おはよう。なにラニ達と少し遊んでいたのじゃ」
そう言ってリーゼロッテは指を川へと指した。
その先では川で水を掛け合って遊ぶラニとラピスの姿が見えた。
道理でリーゼロッテも少し濡れているわけだ。
「あ、おはよう、昇」
「おはようございます、昇」
「おはよう、ラニ、ラピス」
俺に気付いたラニとラピスが水遊びを止めて駆け寄ってきた。
寒い中水遊びする元気があって大変よろしい。
徹夜で作業していた事もあり陣地内ではシャルル達が眠っている、戻って起こすのも申し訳ないからラニ達と川で遊ぶ事にした。
水に濡れてもリーゼロッテが火魔術で直ぐに乾かしてくれるので濡れて風邪を引く事はない。
まぁ普通に寒いからそれで風邪を引く可能性はあるけど。
そんな風に遊んで過ごし、日が沈んだ夜。
「じゃあ行ってくるね」
「ああ、気を付けてな」
馬を駆り、シャルル達が夜の闇に紛れて出発した。




