第27話 問題解決
アリシアSide
「寒い……」
冬の寒さに自然と目が覚めた。
日は登っておらず室内はまだ暗い。
それでも全く見えない訳では無いので私は彼を探す。
「確か昇は……居た居た♪」
眠る白髪の双子の姉妹。
ラニとラピスを見つければそこにだいたい昇は居るからね。
ここ最近の楽しみは昇の寝顔を覗き見る事。
可愛い寝顔を見ると不思議と元気になるんだよね、ルナは勿論ノルンやエイアもよく見てるし。
眠っている皆を起こさないようにゆっくりと近付く。
「〜♪……っ?!」
昇が居ない……!?
なんでっ見捨てないって言ったのにっ!
昇だけじゃない、ルナもあの悪魔のミミティと言う奴も居ないっ!
まさか裏切った……?いや昇に限って嘘は付かないと思うけど……。
じゃぁ何処に……?
「うぅん……なぁに………?」
身体を起こし目を擦るラピス、起こしてしまったか。
「んぅ……ん……?」
そしてラニがもぞもぞと動き出したかと思えば何かを探す様に手がゴソゴソと動く。
「……昇……?」
本来其処にある筈の温もりが、感触が無い事に気付いたラニが身体を起こして周囲を見渡す。
「昇が居ない……」
「んぅ……探そ……」
まだ眠いらしくふらふらと起き上がる双子。
ラニとラピスの言う通りだ、昇が裏切ったと考えるには早すぎる。
きっと目が覚めて、眠れなくなって陣地内を散歩してるんだ。
そう考え、私はラニとラピスと手を繋いで陣地内を探した、探したけど……。
「……ぐすっ」
ラピス「何処にも居ないっ……何処に行っちゃったの昇……」
何処を探しても昇の姿は見当たらず、遂にはラニとラピスが泣き出してしまった。
既に空は明るくなり始めていた。
起きてきたシャルルやクロエ達、皆で探したけど昇は勿論ルナの姿は陣地内には見当たらなかった。
昨日の夜当番だった見張りのエルフ達も昇の姿を見ていないと言うし、一体何処へ……。
やっぱり裏切ったのかな……。
「ほ、報告!魔族軍が撤退して行きましたっ!」
「は?」
昇が居なくなって暗い雰囲気となった陣地に入ったおかしな報告。
圧倒的有利な筈の魔族軍が何もせずに撤退をしたとの事。
突然の魔族の撤退、消えた昇……まさか1人で向かって行った!?
守りが薄かったとはいえ捕らわれていた私達を救出した昇だ、此方側の見張りと相手側の見張りに見つからない様に侵入した可能性が無いとは言い切れない。
昇が裏切ったなんて考えは吹っ飛んで今度は心配という感情に支配される。
幾らあの昇とはいえ今回は規模が大きすぎるっ!
私の他にもノルンやエイアもそわそわしてるし、フィアナ達も心配してるのは見てわかる。
「昇っ!!!」
「待ってお姉ちゃん!!!」
「ちょっ、貴女達待ちなさいっ!」
寝間着姿のまま駆け出したラニとそれを追うラピス。そして双子を慌てて追い掛けるフィアナ達。
「っ!シャルル行くよっ!」
「わ、分かりました!!!」
ラニ達を追うように私達も駆ける。
服装は寝間着のままだけど着替えてる暇なんて無い、シャルルは剣を取りに戻ったけれど直ぐに合流を果たした。
森を駆け平地へと抜け魔族陣地の方へと走る。
「っ!居た!!!」
ラピスが走りながら指を差した先を見れば魔族陣地の方から歩いて此方に向かっている1人の人影を見た。
やっぱり1人で魔族陣地に向かってたんだ!
「昇様ーーっ?!」
昇の名前を叫んだフィアナが小さく悲鳴を上げた。フィアナだけではない、ノルンやエイア、他の娘達も小さく悲鳴を上げたりと周囲がざわつく。
その理由は昇の姿を見れば分かる。
「しょ、昇?!」
帰ってきた昇は血だらけだった。
「あれ……なんだ、皆起きたのか……」
そう言って昇はその場に膝を付いた。
「「昇!!!」」
そんな昇にラニとラピスが駆け寄りその身体を支える。
「エイア!」
私は直ぐ振り向きにエイアを呼んだ。
「分かってるわよ!」
「大丈夫よ」
慌てる私達に静止の言葉が掛けられた。
声のした方、昇の方へと振り向けば其処には座り込んだ昇を抱きしめているルナが居た。
やっぱり憑依して付いて行ってたんだ。
「昇に怪我は無いわ、全て魔族の返り血よ。貴女達と合流して安心し、其処に溜まった疲れが一気に来て眠ってしまったのよ」
「良かった……」
ルナの言葉に私は安心した。
怪我が無いなら良い。
「取り敢えず陣地に戻ろう」
眠ってしまった昇はティガーが背負って私達は陣地に戻った。
昇には悪いけど女神達で身体を清めさせて貰った。
これも心配させた罰だと思ってね……とは言っても本人は眠ってるから分からないだろうけど。
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月光昇Side
皆と合流した後襲われた眠気に勝てず眠ってしまい、起きた時俺は既に陣地内の椅子の上に座らされていた。
目の前には笑顔の、けれど何処か怖いアリシア様とシャルルとクロエ。
両隣にはラニとラピスが座り腕に抱き付いていた。
後ろにはこれまた笑顔で俺達を見守っているフィアナやマリア達。
「起きたみたいですね」
「起きたか」
室内に響くクロエの声。
それを確認するようにラニがグッと顔を寄せてきた。
綺麗な赤い瞳が俺の瞳を覗き込む。
「起きたみたいなので始めましょうか」
「そうだね〜」
クロエの言葉にシャルルが頷く。
一体これから何が始まると言うんだ。
この状況、まるで尋問ではないか……尋問受けたこと無いから分かんねぇけど。
「はい、昇が黙って暴れてきたお陰で問題が解決しました」
━━笑うという行為は本来攻撃的なものである
笑顔のクロエ達を見て何故かそんな言葉を思い出した。
……もしかしなくても怒ってる?
「本当に驚いたよ〜朝起きたらアリシア様達が慌てて何か探しててさ〜。良く聞いてみると昇が居なくなってるって言うじゃん?本当慌てたよね〜そしたら当の本人は単騎で魔族軍陣地に侵入したっていうし〜?」
クロエに続いてシャルルが口を開く。
「ちなみにどうやってあの大勢の魔族軍を撤退させたのかお姉さんにも分かるように教えて欲しいなぁ」
滅茶苦茶圧を掛けてきたアリシア様。
ルナ「丘の防衛戦」
ノルン「あぁ……」
エイア「納得したわ……」
ルナ様がひと言発しただけで皆納得しちゃった。
まぁ実際にあの丘の時と同じ様に魔族兵を複数暗示に掛けて同士討ちさせた訳だし。
あの時と違うのは罠を用いず混乱する戦場を駆け回ってひたすらに魔族兵をショートソードとかで切り裂き続けたくらいだろう。
勿論その事を伝えたら両隣のラニとラピスに頬を抓られアリシア様達から凄い叱られた。
「どれだけ心配したと思ってるんだい」
「申し訳ございませんでした……」
「まったく……けど昇のお陰で悩みが1つ解決したのは事実だし、お説教はこれで終わりにしようか」
溜め息を吐いたアリシア様はそう告げるとシャルルとクロエも溜め息を吐きつつ頷いた。
どうやらお説教はこれで終わりの様だ。
「さて……魔族が撤退したのは良いけど問題はその後だよね……」
「前へは進めますがまた同じ状況に陥りますよね……」
「それについても解決済みだ」
「「へ?」」
シャルルとクロエの懸念は分かる。
未だに女神側は不利であり、このまま進んだ所で再び魔族軍と睨み合いになるだけ。
だからこそ屍兵による追撃と他の魔族軍への追撃を命じた訳だ。
その事を伝えれば皆ポカーンとしていた。
「屍兵による追撃は分かったけど、いつその魔族がその死霊魔術を扱えると分かったんだい?」
アリシア様の疑問もご尤もである。
なのでこれについてもちゃんと説明した。
夜な夜な魔族の偵察が近付いて来ていたのには気付いていたのでその魔族を捕まえ尋問した所丁度そいつがその魔術を扱えると知った。
尋問についても暗示を用いたので苦労せず相手の情報を聞き出せた。
「なるほど……良しじゃあ進軍を再開しようか」
アリシア様の号令で一斉に支度を始める。
この防御陣地に付いてはアリシア様曰く都で訓練が終わった戦士達が来るそうだから残しておくとの事。
ちなみに夜な夜な抜け出して魔族兵と密会紛いな事をしていた件もアリシア様達に滅茶苦茶叱られた。




