第18話 此処に家を構えよう
丘でミミティと会った翌日、俺達は街を旅立った。
「変わった悪魔だったな、ミミティ」
「そうですね、戦う意思が無いと分かると帰っていきましたし」
フィアナが言ったようにミミティは此方を襲ってくる事は無かった。
戦う意思が無いと分かっても襲ってくる奴は襲ってくるからな。
特に悪魔は手段を選ばないと聞くし、ミミティが特殊なんだろうか。
夜、あの丘で会った時は戦う気配は一切無くただ擬態した姿を見せに来ただけだったし。
相変わらず角やら羽やらが見えてたけど。
ミミティについてだがノルン様の未来視で無害と判断されそのまま街に放置となった。
無害どころか孤児院の修繕などをやるからむしろシスターの助けになるだろう。
また俺達は新たに2人のメンバーが増えた。
俺の両隣に座るラニとラピスの双子である。
ラニ達を連れて進む事数日。
「この辺を開拓するか」
辿り着いたのはミミティの居た街から2日ほどの森の中。
これ以上進むと魔族の支配地域と接して危険度がぐんと増す、今でさえ危険なのにこれ以上危険が増すような所に居を構えるのもいやだからな。
幸い此処は近くに川が流れてるから水源の確保が出来る、また川を少し下れば海だし。
「取り敢えずその辺の木を伐採、抜根して広さを確保しようか」
「分かったぜ旦那ぁ」
そうして伐採を始めるティガー。
最近ますます肌寒くなってきたからな、1日、2日くらいは馬車で凌げるだろうが早い所暖かく寝れる家は欲しい。
セレスティナとマリアに魔術を用いて伐採された木を加工してもらう、フィアナとローナはラニ達の傍で警戒してもらって俺はその間に加工された木材を持って木柵を建てる。
しかし俺は魔術が一切使えないので全て手作業で作業効率がティガー達に比べてもクソ悪いがな。
次々と運び込まれては加工されて生産されていく木材をひたすら運んでは地面に穴を掘り支柱を建てて柵を作っていくと同時に火を起こす。
此処に到着したのが昼を過ぎてたからな、作業したらあっという間に日が傾いた暗くなってきた。
「ティガー!今日はこの辺にしておこう!」
「分かりやした!けれど旦那ぁ、囲いだけでも完成させといた方が良いですぜ、この辺は魔物が出やすし、気休め程度ではありやすが無いよりはマシでさぁ」
「木材は十分あるし、囲いだけやっちゃいましょう」
加工班のマリアとセレスティナも合流し魔術を用いて柵を構築していく。
「昇は休んでなさい」
魔術は使えず純粋なパワーでは獣人にも劣る俺は戦力外通告を受けフィアナと交代し、ローナ、ラニ、ラピスの3人と焚き火を囲む。
柵囲いも終わった所で日が沈み、夕食を作る。
「フィアナ〜ご飯作るの手伝ってくれ〜」
「分かりました!」
流石にこの人数のご飯を作るのは面倒くさくなってきた。
だからルナ様の奴だけは俺が1から全部作って後はフィアナと協力して作ることにした。
「私も手伝います!」
セレスティナもご飯作るの手伝ってくれた。
それにしてもフィアナ達は家族と一緒に待っていることも出来たのに俺と一緒に来る事を選んだんだよな、有難い話だよ。
勿論フィアナ達が俺に同行するのは彼女達の家族も了承済みだ。
「味が落ちたな……」
「そうだね……」
料理を食べつつも明らかに落ち込むラニとラピス。
「悪かったわね、下手で……」
「すいません、私が足を引っ張りました……」
それを聞いて夕食を作るのを手伝ってくれたフィアナとセレスティナまで少し落ち込んでしまった。
「昇が特別料理が上手いだけで下手では無いわよ、これでも普通に美味しいんだから」
一緒に食事をするノルン様が言葉を投げ掛けて下さったお陰でフィアナ達も多少は立ち直った。
夕食を食べ終え眠りに就く事にし、ラニとラピスを馬車で寝かせその傍で見守り役をフィアナ達の誰かに頼もうと思ったんだが……。
「「スー……スー……」」
本人達からご指名されたのは俺でした。
ラニとラピスはそれぞれ俺に左右から凭れて眠っている。
……まぁこれなら有事の際は直ぐに抱えて移動出来るし良いか。
翌朝。
眠っているラニ達を起こさないよう横に寝かせ馬車を出る。
「おはよう〜」
「おはようございます、昇様」
「おはよう昇〜」
馬車から降りて既に起きていたセレスティナとマリアに挨拶をする。
「ティガー達は?」
「皆さんまだ寝てますよ」
「もうじき起きると思うけれどね」
フィアナ達はまだ寝てるか、なら火でも起こして朝食の準備でもするか。
木材を集めて設置しマリアが魔術で火を起こした。
起こした火の上に鍋を吊るし水と細切れにした肉や野菜を入れていく。
にしても……。
「やっぱ魔術って良いよなぁ……」
魔術ってやっぱThe・異世界って感じするし。
何より火を点けるのが早くて良いよな。
そんな感じで朝食の準備をしていると匂いに釣られたのかラニが馬車から降りてきた。
「おはよう、ラニ」
「……」
「ラニ?」
ラニは目が見えないから一人では危ないと思いセレスティナに鍋を任せてラニに駆け寄って声を掛けるも返事はなく、代わりに抱き締められた。
「抱き枕が勝手に居なくなるな馬鹿」
「ごめんなさいジョン、ラニったら朝起きて昇が居なくて寂しかったみたいで」
「寂しくない、抱き枕が無いから寝れなかったから文句を言っているだけだ」
馬車から微笑みながら顔を覗かせたラピスに反論するラニ。
口は悪いが可愛いじゃないか。
その後馬車から降りてきたラピスにラニを託し俺はルナ様のご飯を作り始めた。
朝食を食べ終えたら開拓の続きを始める。
囲いは昨日終えているので今日は寝泊まりする為の家を作ろう。
昨日と同じくティガーに伐採と抜根をしてもらいセレスティナとマリアに魔術で木材を運んで加工してもらう。
セレスティナ達の加工が終わるまで俺は柵の向こう側に穴を堀る。
穴を掘っていればティガーの伐採とセレスティナ達の加工が終わったので指定した地点に家を建て始める。
ティガー達の作業を見つつ俺は別の場所に穴を掘り始める。
『昇?何してるのかしら?』
俺の行動に疑問を持ったルナ様から質問が飛んできた。
「此処に露天風呂作ろうと思って穴掘ってます、幸い近くに川があるので水には困りませんし」
日に日に寒さの増してるし湯船に浸かって暖まりたいし。
「なら私も手伝うわ」
憑依を解いたルナ様の手には俺と同じスコップがあった、服装も女神達が着る衣装から俺と同じ作業用の服に変わっている。
ルナ様と2人で黙々と穴を掘りながら整地をしていく。
掘った穴に石を並べれば露天風呂の完成だ。
ただお湯にする為にセレスティナ達の魔術頼りになるけど。
後は脱衣所と目隠し用の柵を作れば完成。
「昇〜出来たわよ〜ってルナ様?!」
穴を掘り終わりこれから石でも拾って来ようと思ったタイミングでマリアが声を掛けてきたがルナ様が俺と同じ格好して穴掘りしてて驚いていた。
マリアの方も家の建設が終わったようなのでルナ様と一緒に見に行くことに。
「問題無さそうだね」
流石魔術、早くて頑丈に作られてる。
一先ずは寝る為だけだから家具とか一切無い殺風景な家ではあるが雨風凌げれば十分だろう。
「家って今日中にあと1軒作れるか?」
「材木もありますし問題無いですよ」
「それじゃ隣にもう一軒建ててくれ」
「分かりました」
セレスティナはマリアとティガーに指示を出し3人で再び家を建てた。
これで女神様用と女性陣用と立てれたな。
今日はその後簡易トイレを建てて作業を終えた。
「ジョン、ラニの盲目を治せない……?」
夜、ラニが眠ったのを見計らってラピスがそう言ってきた。
「すまんが俺には無理だ、何の力も無いからな」
「そう……」
残念ながら俺は魔術が扱えないからどうこうする事は出来ないし魔術の扱えるセレスティナ達でも治せないだろう。
セレスティナ達が魔術で治せているのなら既に治しているはずだからだ。
「だが、女神様達なら或いは……」
『昇のお願いならお安い御用よ、と言っても私もノルンも専門外だから都から新たに女神を呼ぶ必要があるけど』
憑依しているルナ様がそう言った事から希望が見えた。
「お願いしても良いですか?」
『お安い御用よ、ということでノルン頼むわね』
『結局他力本願じゃないの!?まぁ良いけど』
まさかのノルン様に丸投げ。
だがノルン様も気にしてないようで直ぐにアリシア様へ連絡をしてくれた、アリシア様は直ぐに此処へ他の女神様を向かわせてくれるとのこと。
「取り敢えず今日は寝よう」
「はい」
ラニと同じように俺に凭れたラピスは直ぐに寝息を立てた。
俺も穴を掘ったりして疲れていたのか直ぐに眠気に襲われた。
『『お休みなさい、昇』』
「お休みなさい、ルナ様、ノルン様……」
憑依されてるお二方に挨拶をして目を瞑る。
ちなみに俺とラニとラピスは建てた家ではなく馬車で眠る事になった。
ルナ様が俺から離れたがらない事とラニ達からの指名が入った事から建てた家はフィアナ達とティガーが泊まり、ルナ様とノルン様は俺に憑依する事で今夜過ごす事となった。




