第14話 神々の都
月光昇Side
丘で魔族が散り散りに敗走したのを見送り戦闘が終わったと確認した俺はその場に座り眠りに落ちてしまった。
ルナ様達曰くそれは不眠ダケ等を摂取し無理やり動き続けた代償の様なものとの事。
魔族との戦いが終わり緊張の糸が解けて眠ってしまったのだろう。
眠っている間に救援に駆け付けたルナ様達に保護された俺が目覚めたのはそれから1日後の荷馬車の中であった。
ルナ様達は俺を助けにあの丘へ急行する為早馬だけだった様だがノルン様が手配した後続隊は荷馬車を連れており合流した後荷馬車にて寝かせられていた様だ。
起きた時ルナ様に膝枕されていて驚いたのを今も覚えている。
現在俺は石造りの都に居る。
建物も石を積み上げて作られており、道も石畳が敷き詰められた道だ、寝床だって地べたに布を引いていた丘の休息所と違い此処はちゃんとしたベッドが用意されていた。
此処は魔族と戦った丘より東に一週間程の場所、山を越え森を越えた先にある。
アリシア様達女神の住まう神々の都であり神々の最後の砦との事。
爺さんの居た異界とは違い此処は現世だ。
そんな都の一室にて、俺は今、ルナ様が誰かにご飯を作ってくれるよう頼んだのでそのご飯が来るのを待っている。
「本当に無事で良かった……もう、心配させないで……」
「すいません」
あまりにも心配させてしまった様であれからルナ様は俺から離れたがらなくなってしまった。
現に今もベッドに座る俺を後ろから抱き締めている。
なんだろ……この件を気にこのまま過保護にならないか心配である。
「お待たせ〜」
ルナ様に抱き締められたまま料理を待つ事数分、ようやく来たようだ。
料理を台車に乗せて運んできたエプロン姿のアリシア様が部屋に入ってきた。
「いや作ったのアリシア様かい」
「ジョンには凄くお世話になったからね〜この位はさせてね」
アリシア様がテキパキと動いて机やら椅子やらを設置していく。
木のコップに注がれた葡萄酒に机の上に並べられるご馳走。
明らかに1人で食べ切れる数では無い。
だがコップの数が3つ、椅子も3つである事から1人分では無いことは分かる。
1人は俺で間違いないと思うが残りの2人は誰だろうか……まさか神様であるルナ様達が此処で食べるとは思わんし……。
「「頂きます」」
「い、頂きます……」
まさかのルナ様達だった。
え、なにこれ、神様と一緒に食事出来るもんなの?確かに爺さんの所で食べてたけども。
まぁいいか。
「うっま……」
「お口に合ったようで良かったよ」
肉を一口食べたけどめちゃくちゃ美味い、スープも何もかも美味いぞこれ。
「ルナ?」
そんな時、アリシア様がルナ様に声を掛けた。
俺もその声にルナ様を見ればルナ様は一つも食べること無く固まっていた。
う〜ん……特に仲の良いアリシア様のご飯も食べれないか……。
「ルナ様俺のやつ食べます?」
「……そうするわね」
「あ~私のも食べれなくなっちゃったか〜」
俺とルナ様の会話を聞いてアリシア様も納得した。アリシア様もルナ様が信者によって食べ物に異物を混ぜられたのを知っているようだ。
俺は自分に与えられた皿とルナ様様の皿を取り替え再び食事に戻るが……。
「ルナ様?」
ルナ様は見つめるだけで食べる事は無かった。
かと思えば此方に向いて。
「その……昇の食べ掛けをくれないかしら……?」
「はい?」
「ん?」
その言葉に俺だけに留まらずアリシア様も反応した。
食べ掛け?今食べ掛けって言ったルナ様?
「普通に本名言ってるけど良いのかいルナ?」
「あ、ごめんなさい!」
「気にしてないので大丈夫です」
ルナ様は気にしてなさそうなので俺の食べ掛けの物とルナ様の物を再び取り替える。
「頂きます」
ルナ様は先程まで固まっていたのが嘘みたいに食べ始めた。
ルナ様がちゃんと食べれたのを確認して俺はアリシア様に向き合う。
「アリシア様」
「何かなジョン、そんなに改まって」
俺に名を呼ばれたアリシア様は白い布で口元を拭った後に此方に向き直る。
「申し遅れました、私は月光昇と申します。改めてよろしくお願い致します」
「ふふっああ、改めてよろしく頼むよ昇」
アリシア様はそう言って微笑んだ。
互いに挨拶を交わしたことだし俺は再び食事に戻る。
その際ふと気になった事をルナ様に尋ねた。
「ルナ様もしかして俺と別れた後何も食べて無かったりします?」
「そう言えば確かに食事の際は顔を見てなかったね、どうなのルナ?」
俺の言葉にアリシア様も気になったらしくルナ様に尋ねた。
え、なに?顔を見てないってルナ様真面目に3日間くらいご飯食べてなかったってこと?
「食べてないわよ、別に食べなくても死ぬわけじゃないし」
なんて事のない様に告げるルナ様。
俺と合流し馬車でこの都に移動する際は俺が調理してたから問題なく食べれたと……。
取り敢えずアリシア様のご飯だけでも食べて貰えるようにならなきゃな……。
そんな風に楽しく過ごせると思っていたのだが。
「狂信者はこの街から出ていけ」
「寝首を刈られては敵わんからな」
と他の人々に言われこの地を出て行かなければならない。
アリシア様達やフィアナ達が言っても多勢に無勢、その判断が覆ることはなかった。
アリシア様達なら強引に終わらせられる事も出来るが流石にそれで反対派の多くが離反しては戦えるものも戦えなくなってしまうし、それは俺としても不本意なのでこの都市から出て行く事にした。
何故こんな事になったかと言うと悪魔を倒した話をしたからだ。
俺を救出しに来た際に悪魔の遺体をルナ様達が確認した事もありその討伐方法を聞かれたのだ。
その方法があまりにも酷く、また俺がルナ様の信者的扱いであり、ルナ様の仕出かした事などが重なった結果だし仕方ないと思う。
更に俺が何処から来たのかも分からない怪しい人間だと言うことも不審に思われる要因だろう。
まぁ俺は追い出されても気にしないが。
とは言えだ、遠距離で連絡行う魔術があるから既に話が各地方に回ってるだろうし他の都市も恐らく入れないだろう。
ルナ様と2人で話した所、残された場所は魔族の領域近くの何処かの廃村くらいだったので取り敢えずその辺を目指す旅となる。
なるほど、これがよくある追放ですか。
安寧の地を求めてルナ様と長い二人っきりの旅になりそうだ。
そう思ってた時期が私にもありました。
荷馬車に揺られながら俺の隣に当たり前の様に座る者へ視線を向ける。
「何よ?」
「いえ、何も……」
薄水色の長い髪に紫色の瞳、子供と見間違ってしまう程小さい身長。
いわゆるロリ巨乳と呼ばれる体型の女神ノルン様。
なぜノルン様まで付いてきたのだろうか……わざわざ自分の信者達を置いてきてまで……。
その他に猫の獣人のフィアナ、虎の獣人のティガー、狼の獣人のローナ。
エルフのセレスティナ、精霊のマリアが付いてきていた。
フィアナ達は都の住民達に何故その男に付いていくのかと言われていた。
それに対してフィアナが「私を救って下さったのは紛れもなくジョン様だ、お前達では無い」と冷たく言い放っていた。
共に戦っていたフィアナ達からすると俺のこの扱いに思うところがあるようだ。
ちなみに療養してたシャルルとクロエにもお別れの挨拶をしに行った際。
「「私も行く」」
と付いてこようとしてたけど丁重にお断りさせてもらった。
流石に神々の最高戦力の勇者達を引き連れていくのは不味いからな。
またフィアナやティガー以外の共に戦った他の人達に付いてきてもらうのも戦力を大幅に削る事から断らせてもらった。
ちなみに今乗ってるこの荷馬車はフィアナとティガーが都市を出る際に調達(強奪)してきました。
アリシア様がサムズアップしてたから多分お咎めなし。
「ノルン、あんた昇にくっつき過ぎよ」
俺の隣に座っているルナ様がノルン様に注意した。
「はぁ?別に良いじゃない、ルナには関係ないでしょ?」
「駄目に決まってるじゃない昇は私のなのよ」
両隣で始まるルナ様とノルン様の話し合い。
この度私は正式にルナ様が認められた信者となりました。
ちなみに此処に居る全員とクロエ達には本名は明かした。
ノルン様が「ふ~ん?」と不満気だった位で特に反応は無かったがアリシア様が一番怖かった。
「は?名無し?何かな?私には名乗る価値すら無いって言いたいのかな?」
ハイライトオフで笑顔で問い詰められるとあんなに怖いんだな……。
その後冗談冗談って言って軽く肩を叩いてたけど。
フィアナが操る荷馬車に揺られそんな話をしながら俺達は安寧の地を求めて進んでいった。




