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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第2章 カミーユのお話
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69ロザリーはどこ?


アランさんの言う通り、そのすぐ後に、ギーさんとリュシーさんの案内で、魔術師庁の役人さんが数名、担架をもってやってきた。


オルガさんとマルセルさんを担架に乗せ、運んでいく後ろをついていく。


2人ともそれでも目を覚まさない。


「カミーユ君は副作用大丈夫なの?」


「ダンジョン内にいたときはすごく気持ち悪くて、もう二度と魔力回復薬を飲むものか、と思いましたけど…ちょっと眠ったらものすごく楽になってましたね」


「もしかして、ロザリーちゃんの陣に、二日酔いとか薬の副作用に効く、とかがあるんじゃないの?」


「え、まさか…」


僕は苦笑いしつつ、ちらりとマントを引っ張って見て見たら、幸運を祈る陣が発動していた。


…これ…こんなことに効くの…??


薬の副作用以外のことで発動している可能性もあったし、首を傾げながら、森の中を歩いた。


10分ほどで、懐かしのダンジョンの入り口にたどり着いた。

すぐにゲートをくぐり、王都の空気の匂いがして、帰ってきたんだな、と実感する。


僕らが帰ってきたのを待ち構えていたホスキンさんたちに、まずは大歓迎をうけ、それから僕らがひどく穢れを受けているから、と、すぐに装備を外すことになった。


魔術師庁には、こういう仕事で穢れを受けたときのために、穢れを落とすみそぎのための湯殿があるということで、僕とギーさんとアランさんは、肌着を身に着けたまま、装備を外しただけの状態で、お湯に浸けられ、頭からさらに何度もお湯をかけられた。


お湯は薬のような匂いがする。


「あれ、もしかして僕達長いことダンジョンに潜っていてお風呂にも入っていないから、匂うとかそういうことですかね」


僕があまりにも執拗にお湯をかけられ続けるので思わず呟いたら、立ち会っていたホスキンさんに聞こえていたようで「違いますよ、本当に穢れが酷いのです。邪神の神殿に赴いたので当たり前と言えば当たり前でしょう」と言われて、それもそうか、と納得した。


「それにほら!ドラゴンゾンビとも戦ったしな。あいつの穢れも相当なものだったからな」


ギーさんにも言われて、そうだった、と頷くと、「ドラゴンゾンビ?!」とホスキンさんはじめ、僕らにお湯をかけていた人たちも動きが止まった。


「そういうことはもっと早く教えてください!通りで、神殿で邪神と戦っただけにしてはひどい穢れだと思いましたよ!」


それから、祝福を受けた水だのを飲まさせられたり、いい匂いのする油を手足に塗られたり、髪や肌着が乾くほどに建物の屋上で日光にさらされたりした。


もうすっかり秋になっていて、風が寒かったので結界を張って、ギーさんアランさんと久しぶりの日光浴を楽しみつつ、普通はダンジョンから出てきても、こんな目には合わないんだと教えてもらった。


僕の肌が日焼けして赤くなりかけたころ、ようやく僕らの穢れがとれたということで、小綺麗な服を貰って着た。ずっと肌着のままで、刺繍が丸見えだったことにこの時ようやく気が付いたけど…まあいいや。


それから、別室でたんまりとご飯を食べさせてもらった。


ご飯を食べていると、僕らと同じような目に合ったらしいリュシーさんがやっぱり日に焼けて赤くなった頬で合流してきて、四人で貪るように食べた。


マルセルさんとオルガさんは、薬の副作用が酷く、何か食べるどころではないらしい。

禊もろくにできていないということで、食事を終えた僕達四人だけで、王宮に移動し、陛下との謁見に臨んだ。


久しぶりに陛下のご尊顔を拝見するなーと思いながら、ギーさんが報告するのを横で聞く。


ふと気が付くと、この4人の中ではこの国出身なのは僕だけなので、他の三人にとっては他国の王、三人ともガチガチに緊張していて、ダンジョンの時の逆だな、とおかしくなった。


陛下から、ねぎらいの言葉をかけられ、当座の褒美の目録を貰い、それで僕らは帰っていいことになった。

窓の外はもう暗くなっていた。


後日改めて報告書の作成のために魔術師庁に来る日を四人で決め、オルガさんとマルセルさんには伝えておいてもらうことにして、この2カ月ほど、ずっと一緒にいた僕達は、解散した。



一人になった途端に、頭の中はロザリーに会いたい、それだけになった。


はやる気持ちが抑えられず、僕は走ってロザリーの家に帰った。


相変わらずロザリーの家の玄関は、鍵がかかっておらず、ロザリーの結界だけだった。


中に入ってみると、明かりもついていないし、部屋も冷え切っている。


どういうことだ?と焦りながら見て回ると、生活をしているのはとてもよくわかり、単純に今はいないだけだと分かった。


久しぶりに帰ってきたのに、一体どこに行ったんだ…。


どれだけの期間ダンジョンに潜っていたのかも教えてもらわないと分からないほどに、時間や日付の感覚が鈍くなっていた僕は、ようやく今日は平日で、残業しているのかもしれないことに思い至った。


僕のマントはロザリーの刺繍のお陰だったのか、穢れを受けていなかったらしく、持ち帰ることを許されていたので、寒がりの僕は着て帰っていたのだけど、そのマントは家に置いて、ごく普通のマントに変えて、研究所に向かった。


さすがに気配遮断のマントは普段使いするようなものではないと思うし。


でもしばらく歩いているうちに…何かが寂しい気がしてきた。


何だろう?と考えて…背中から包みこまれるように常に感じていた、ロザリーの魔力がないからだ、ということに気が付いた。


マントをまとってすぐにダンジョンに入ってしまい、異常なところにずっといたせいでそこまでとは思っていなかったけど。


こうして無くなってみると、僕はロザリーの魔力にずっと包まれていたことを実感した。


オルガさん達が言っていた通りだ。


ああ、なおさらに早くロザリーに会いたい。

彼女の魔力に触れたい。


研究所では、僕が久しぶりに顔を見せたので、皆が驚き、そしていつ出向が終わるのか、などと声をかけてくれた。


幸い、所長がまだ残っていたので、書き物をしていた所長に声を掛けたら、こっちがびっくりするくらいに驚かれた。


そして、すぐに会議室に引っ張り込まれ、僕からは今日ダンジョンから出てこられたことを報告し、所長からはロザリーはどこにいるのかをそこで教えてもらえた。


詳しい話はまた後日、ということで、僕はすぐに医務室にいるというロザリーのもとに向かった。


だんだん駆け足になってしまう。


ロザリーは僕に会ったら、何て言うだろうか。


さっきの所長みたいに驚いて、それから心配かけさせないでよね、とほおを膨らますか、あれ、お帰り!思ってたより早かったね、と平然としているか…。


ダンジョンの最後は連戦で食事をする暇がなかったので…いつの間にか数日たっていて、行方不明扱いになっていたと所長に聞かされて、こっちもびっくりした。


魔術師庁では何も言われなかったけど…でもまあ、無事に帰ってきた人を前にして、行方不明だと思っていたんですよ、と言ったりはしないか。


医務室にはベッドで眠るロザリーしかいなくて、職員さんは席を外しているようだった。


医務室はさすがに別棟になっていて、日付が変わる頃に締め出されることはない。体調が回復するまでいることが出来るのだ。


眠るロザリーに声をかけてもつついても、全然起きない。

僕としてはようやく会えたのに…何だか口が尖ってしまう。


でも、眠るその目の下にはクマが出来ていて…相当疲れていそうなことは分かった。


だから、僕は起こすのを諦めて、ロザリーを抱き上げた。

枕元にあったロザリーの鞄とベッドの下にあった靴も抱えると、研究所の敷地から出た。


本当はダメなんだけど…外に出たところで、家の中に一気に転移して、ロザリーをベッドに寝かせた。


ダンジョンの中で色々鍛えられているうちに、僕はゲートや転移陣を使わなくても、良く知っているところへなら転移できるようになっていることに気が付いていた。


ただ、使う機会はなかったけど。

そして今のところは、移動できるのは僕一人か、せいぜいがもう一人連れての二人まで。


ロザリーはベッドに寝かせても、相変わらず全然起きないので、僕も諦めて、戸締りを確認して明かりを消した。


僕もベッドに潜り込むと、久しぶりにぎゅうっとロザリーを抱きこんだ。


ああ、本物のロザリーだ。

この魔力の感じ、甘い匂い…ずっとこうしたかった。


そして僕は安眠のハンカチが無くても、ぐっすりと眠った。


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