62ダンジョン攻略~宝箱の中身
「本当に、俺らだけでは無理だと、あのとき引き返した判断は、やはり正解だったと痛感するな」
ギーさんがしみじみと言うので、まあ、確かにそうだったのかも、と考えていると、「生き返ったばかりですまんが、宝箱を開けてくれるか」とマルセルさんに言われて、僕は立ち上がった。
宝箱を開ける係は下っ端だからしているような気になっていたけど、そういえば運がいい人が開けた方がいい、というダンジョンの決まりがあるんだった。
僕は実生活では妖精の呪いなんてのがかかってたりして、苦労してきたから、その分ダンジョン内では特別に運がいいのかも知れない。
宝箱を開けて見ると、キラキラと発光する液体が入っている、綺麗な細工のなされた小瓶が出てきた。
今まで宝箱を開けると、俊敏性を高める護符だとか、攻撃力を高める護符、といったものが主流だった。
こういうものは初めてで、なんだろう?と首を傾げながら取り出す。
他の皆さんに、こんなのでした、と見せると、皆もなんだろう?という顔をしている。
「鑑定してみるねー」
今までの護符も、どんな効果の護符なのかは、鑑定してようやく分かっていたことだったので、僕は小瓶をリュシーさんに渡した。
いつもの詠唱の後、リュシーさんがひっと息をのんだ。
「こ、これ…ソセイ薬だ!!!」
「「「「えええええーーー!!!!」」」」
僕以外の四人がのけぞりそうな勢いで驚いている。
「ちょ、オルガかマルセル、この瓶が割れないように強化の術かけて!落として割ったらと思ったら手に汗握って落としそう!」
リュシーさんは座り込んで、小瓶を床に置き、すぐに離れた。
「ソセイ薬って…生き返る薬っていう意味の蘇生薬ですか?」
僕が質問したら、ぶんぶんと頷いてくれた。
「ど、どうしよう、マルセル、古文書に記載があっただけで、存在を疑問視されていたものが目の前に…」
「万が一オルガが死んだとき、これで生き返らせられる、という安心感もあるが…どうあっても使わずに帰って、研究するべきだよな!」
「これが再現出来たら…冒険者の死亡率がどれだけ下がることか!」
「蘇生術を会得できる魔術師の数の少なさを補えるな」
「これを持ち帰ったら…世界が震撼すること間違いなしだな!」
僕以外が大興奮で、でもその会話の内容から、なんかすごいものが出たらしいことはわかった。
「全く宝珠の妖精の涙といい、蘇生薬といい…カミーユ君は見た目だけでなく、強運も桁外れだわね…さすがロザリーちゃんの相手だけあるわ」
「きっと今この階層でカミーユ君が一度死んだことが、これが出た理由の一つかもしれないな」
「いや、単純に、ここのボス倒すのに、誰も死なずに終わるのはほぼ無理だから、の救済なのかも?」
「ああ、猛毒系のボスを倒した後に宝箱から出てくるのが毒消しなことが多いのと一緒ってことか?」
「もしそうだとするなら、もう一度ここまで頑張って来る価値があるかもしれないよね」
「ああ、ここの蘇生薬をとりに来るのを専門にするパーティーがたくさんできるだろうな」
「でも私はもう二度とここには潜りたくないって思うけど」
「同感」
「ああ、そういえばこのダンジョンは例の邪神の神殿につながっているから、任務終了後は封印されるらしいぞ。今も国家機密だから、俺たちもゲートで入り口に飛んでいて、この入り口がどこにあるのか、知らないだろう?」
ギーさんの言葉に、そういやどこにこのダンジョンがあるのか知らないんだったことに気が付いた。国内か国外かもわからない。
「じゃあ、ますますこれを大事に持って帰りたい!」
「魔法薬の偉大なる前進のためになんとしても!」
熱意溢れる、魔術師の塔所属の二人の魔術師によって、蘇生薬は何重にも瓶に強化がかけられ、そして、僕のマジックバッグに入れられた。
「僕が持つんですかー?」
「だって出したのはカミーユ君だし、強運持ってるから一番事故も起こりそうにないし」
マジックバッグの中は、バッグに衝撃が加わっても中のものに影響しないんだけど。
まあ、いいか。
この階層のボスは実体がなく、倒した魔物の血やら何やらで汚れたりもしていなかったので、階層の合間の階段で休むのではなく、そのまま、通称ボス部屋と呼ばれるこの部屋で休むことになった。
平らな床で、魔物は来ないし、暑くも寒くもないし匂いもないし…かなり快適な空間でもあったのだ。
なので、たまにはゆっくりしよう、と、ここで一日近く休んだ。
お陰で、僕ら魔術師三人は久しぶりに魔力が満タンになったし、今までのマップを見直して書き漏らしがないかのチェックをしたり、アランさんやギーさんは剣や斧をなどの武器を研いだりしていた。
このダンジョンが何階層まであるのか、誰も知らない。
今知られているダンジョンで一番深くまであるのは40階層まで、だそうだ。
もしここも40階層だとしたら、まだ半分か…そう思ったら、思わずため息がでる。
くるまっていたマントを少しめくって、ロザリーの、『無事に帰ってきて』の刺繍を指でなぞる。
いつもは神経を張りつめているので、あまり考える余裕も無かったけど…ロザリー元気かな…会いたいな…そう思いながら安眠の陣が刺されたハンカチを握って、僕は眠ったのだった。




