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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第2章 カミーユのお話
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60ダンジョン攻略~20階層のボスは


僕らが休憩から気持ちを切り替え、結界を解除して進み始めると、かなりすぐに、ボスが出てくる特徴的な部屋に到達した。


そういう部屋は広めで、パーティー全員がその部屋に入ると、入り口が閉まってしまう。

そして、出てくる魔物を倒すと、次の階層への階段が現れる。


「あー、さっき休憩しておいて本当に良かった」


ゴゴゴ…と音を立ててしまっていく扉を見て、アランさんが呟いている。


この階層は、物が落ちていく向きというか、僕らが立つ地面となる向きがころころ変わり、魔物は飛んでいるものばかりだった。


階層の特徴から、ここで出てくる魔物のタイプが予想できることは多いのに、今回はさっぱり分からない。


稀に複数体出てくることもあるけど、大抵はすごく強いものが一体だけなのだけど。


扉が閉まっても、なかなか魔物が現れない。


皆が不審に感じ始めたとき、広間の中央に巨大な砂時計がぼうっと現れた。

地面から少し浮いているけど、僕の胸の高さくらいまであるし、ギーさんの胴回りくらいの太さもある。


「へ?これがここの魔物?」


リュシーさんが近寄って様子を見ようとしたのを、ギーさんが引き留めた。


「まて。ここは俺が」


ギーさんは体全体を隠せるような大楯と、僕なら両手でも持ち上がるかどうかという大斧で戦う。


特にこういう強敵と戦うときは、最初の攻撃をした相手もしくは最大のダメージを与えてくる相手に魔物の注意が向きがちで、あえてギーさんはそうすることで魔物の注意を自分にひきつけ、その間に他の僕らがチクチクと攻撃して倒すのだ。

ギーさんは何があっても大丈夫なように万全の態勢で、その砂時計に向かって斧を振り下ろした。


ガキーーーン…。


僕の所から見ても、砂時計のかなり手前で斧がはじかれた。


「結界だな」


マルセルさんが試しに弱い攻撃魔法を放つと、それもはじき返された。強い魔法を放っていたら、僕らにそれが戻ってきてしまうところだった。


「物理も魔法攻撃も効かない、か…」


皆で戸惑っている間に、砂時計の砂はサラサラと落ち続けている。


「何だろう?この砂が落ち切る前に何かしないといけないんだってことは想像つくよね!」


いつ魔物が出るか分からないので注意しながらも、全員であちこちにトラップのヒントがあるのではないかと見て回る。


床や壁や天井はお任せして、僕は目が良くないから近寄って見られる砂時計をじっくり見た。


少しきらりと光る白い砂が、さらさらと落ちていく。

形状はごく一般的な、真ん中がくびれたものだ。


砂時計を支えている枠も、ごく一般的だ。

上下に砂時計の少し丸みを帯びたガラスを受け止める板があり、その上下の板を三本の細い柱が繋いでいる。その上下の板が平らなので、立てて置けるし、砂が落ち切ればさかさまにして置く。そういう普通の形で、ただ大きいだけだ。


僕は何かが気になって、一時的に視力を上げる術をかけ、さらによく見てみた。


3本ある細い柱に、模様に見せかけた文字が描かれているのに気が付いて、ぎょっとして、それから慌てて皆を呼び寄せる。


「ここに、それこそ砂粒みたいな大きさの文字で、これから起こることが説明されています。まず、砂時計が落ち切るたびに、上下が逆転します」


思わず僕含めて全員が天井を見上げる。


幸いにして、天井も平らだ。

ただ、通路などでは身長の3倍くらいの高さの天井だったのが、もっと高い。

今までの倍くらいに見える。打ち所が悪ければそれだけで死ぬこともありそうだ。


「それから、今まで出てきた魔物が、僕らが全員それなりに精神耐性が高かったので誰もかからず気が付きませんでしたが、状態異常をかけてきていたようです。最初に足場が天井に移ったときからは、僕らは『混乱』を試されます。つまりは同士討ち。ここの魔物はつまりは僕ら。お互い、です。その次にまた足場がこっち側になったら、今度は悪霊が出てくるようです。誰かにとり憑いて、他の仲間を倒す、ということのようです。次に足場がまた天井になったときからは、悪霊界の王が出てくるそうです。その後は、足場が交互になっても、悪霊王を倒すまでそのまま…」


「あーまずいぞ、砂の残りが少ない!」


「あんたたちその物騒な剣と斧しまってよね!」


「皆さん並んで!一人ずつに耐物理と耐魔法の結界を張りますから!」


僕はまず死なれては困るオルガさんに結界をかけた。


その間にマルセルさんもアランさんにかけてくれている。


次にリュシーさんを結界で包み、マルセルさんがまだアランさんにかけていたので、ギーさんも結界で包む。


そして、マルセルさんも包んだ後は、念のために、混乱防止を五人の結界に重ね掛けする。


マルセルさんに混乱防止をかけていたら、砂が落ち切り、僕らは天井に向かって落ちた。


ロザリーの落下防止の陣はまだ生きているのがあったようで、僕は少しゆっくり落ちていくのでその間に急いで耐物理と混乱防止をかけたところで、天井に落ちて激突した。

足から落ちられなかったけど急いで耐魔法の結界を自分にかける。


それから辺りを見回すと、全員混乱している様子はなく、ホッとした。


「ここのダンジョンのトラップ考えたのが神様なのか誰なのか知らないけど、カミーユ君がいたおかげで計画台無し!ってめっちゃ怒ってそうだよね!」


「次にまた上に落ちるまでは、じっと我慢してればいいだけだったよね?で、今度は誰かが悪霊憑きになるんだろう?この中で一番精神耐性低いのは…」


アランさんの言葉に、全員が一斉にギーさんを向く。


ギーさんとアランさんは魔力をもっていない。

そして、強い魔力を持っていると、基礎の精神耐性が高い。


経験や訓練でその能力を上げて行けるのだけど…経験という意味では僕が一番劣っているけど、それを補うほどの魔力持ちだ。

ロザリーと僕だったら僕が選ばれてしまうだろうけど、ここではやはりギーさん、次にアランさんが危ない。


「悪霊対策…?呪いじゃないし…マルセルさん、聖なる結界でいいと思いますか?」


砂時計は、僕らの側に現れていて、砂が落ちていくのが見えるけど、それはまだ大して落ちてもいない。焦らずゆっくり考えられる。


「聖なる結界と、防呪両方じゃないか?まず呪いをかけて、憑りつける素地を作ってから、の可能性が高いと思うが」


「なるほど。そうですね…。って!ああ!マルセルさん、耐魔法の結界で包んであるので、ギーさんとアランさんに防呪をかけられません!」


「ああ、混乱防止と、また上に落ちるから耐物理だけ残して、耐魔法は解いてもいいだろ。俺らがあいつらに攻撃魔法ぶっ放さなければいいだけの話だからな」


「あ、そ、そうですね…慌ててしまいましたよ…」


「ギーに本気で殺しにかかられたら、私達誰も生き残れないから、カミーユ君お願いね!」


僕はちょっとこちらに落ちたときに受け身をとれなくて、膝をひねったな、と思いながらも、ギーさんの耐魔法だけを解除して、防呪と聖なる結界をかけ、同じようにアランさんにもかけた。


「余裕あるなら私にもお願いしてもいいかな…」


リュシーさんが不安そうにしていたので、リュシーさんにもかけた。


オルガさんは聖なる結界なら出来るから、と念のためにマルセルさんとオルガさん自身と僕にもかけてくれた。


こうしてみると、ロザリーが回復魔法が苦手だと嘆いていたけど…僕やロザリーのように攻撃も回復も補助も、なんでも使える方が珍しいみたいだ。


そうこうしているうちに、砂が落ち切り、僕らは元いた床に向かって落ちた。


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