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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第2章 カミーユのお話
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58ダンジョン攻略~トラップあれこれ


ダンジョンに潜ってもう一カ月以上は経つだろうか。

奇想天外な罠にもだいぶ慣れてきた。


でも、今日進んでいるところは、すごく僕には苦手な階層だ。いや、僕だけじゃなく皆も苦労している。

というのも、ここは、床が地面と限らない、のだ。


先頭を行くリュシーさんが、最初に天井に向かって落っこちたのを見たときは、度肝を抜かれた。


ダンジョンの天井までは、僕の身長の三倍くらいはある。


何の前触れも無しに、いきなりどっち向きに落ちるのか、が変わるのがこの階層の特徴だ。


次の一歩から、右側の壁に立つことになることもあるし、また元通りに床に立つことになることもあるし…そんな状態でダンジョンに出る魔物とも戦い、落とし穴や飛んで来る矢や槍、それ以外にもなにそれ?という罠にも気をつけながらで…正直消耗している。


でも、今までで一番げんなりした階層は、極寒でとにかく寒かったところだ。


床や壁や天井の表面に、氷や霜がびっしりで足元が滑る。

少しでも大きな音や話し声を立てると、天井から直撃したら無事ではすまないようなつららが降ってくる。

そして出てくる魔物は何かと僕らに水をぶっかけようとしてくるやつらで…うっかり濡れてしまうと、極寒なのでみるみる凍ってしまう。


そして、やけに広くて、その階層で丸3日かけた。

もちろん強敵の魔物いわゆるボスがいて、そいつが冷気系の魔物だったのだけど、出てきたときは、でしょうね!という感じだった。


その極寒の階層では、とにかくみんなが寒さに震える中、僕はあらゆる衣類やマントに防寒が施されていたし、濡れないので、凍えることも無く、休憩の時も眠ることすらできた。


もちろん、急遽皆さんのマントに防寒と撥水の陣を念写してあげたし、休憩の時は防寒の結界を張った。

皆さん歴戦の戦士なので、強靭な肉体をお持ちで、風邪をひくこともなかったけど、僕みたいに何重にも念入りに守られているわけじゃなかったし、マントにしか付与していなかったので、中に着ている服が濡れてしまった時はやっかいで…。


暖まるために火を使うと、魔物がわらわらと寄ってきてまた濡らされるということになるので、皆がイライラしていた。


なので、その階層ではトラップのヒントや暗号はかなり僕が発見することになり、なるほど、確かに疲れたりイライラするのはダンジョンでは危険なことなのだな、と痛感した。


また、だからこそ、パーティーメンバーの協調性、性格も重視されるというのも納得した。


先頭を行くリュシーさんが、小石を投げて、次の一歩がどの向きに着地するかを確かめ、小石を拾いまた投げる。


どうやらあそこからは左の壁になるらしい。


あらかじめ覚悟しておけば、ちゃんと転んだりせずに着地できる。


この階層の魔物は、飛んでいる。

鳥のように飛んでいるなら、魔物の体の向きでどちら向きに着地する場所なのか推測できるのに、ふよふよと漂うような感じだからさっぱりわからない。


戦闘中に、一歩踏み出したらそこから向きが変わったりするときは本当に危ない。


さっきはアランさんが魔物に切り付けようとした瞬間、右の壁に落ちて、剣の軌道が想定外となり、ギーさんを傷つけて、さらにアランさんも受け身をとれずに腕を痛めた。


すぐに回復魔法で治してあげたけど、アランさんの手首がとんでもない方向に曲がっているのを見たときは、青くなってしまった。


ざっくり切られたギーさんのことは本職のオルガさんが治していたけど、タンク役でも背後からやられてしまったらどうしようもない。


ちなみにダンジョンに潜ってから、ギーさんは中ボスと戦っていた時に、そしてリュシーさんがトラップにかかってしまって、の二回、メンバーが『死んで』いる。


どちらのときも、二人の体は見るも無残で、ギーさんの時は戦闘終了後すぐに、リュシーさんのときは罠から体を引き上げてすぐに、オルガさんが難しい長い術式を詠唱して、無事に生き返った。


僕にとっては『死んでしまうこと』は衝撃的で慣れることができなくて。

生き返るとホッとして「良かった…」とつい涙ぐんでしまった。


僕が加わる前は、トラップのヒントの解読ができないときは、リュシーさんが体を張って、あえてトラップにかかって死んで、その隙に他のみんなが進んで、遺体を回収してもらって生き返らせてもらって…などという荒業をつかうこともあったのだそう。


でも、トラップのヒントを見つけることさえできれば、僕が即座にすらすらと読み上げるので、そんな無理をする必要もなくなったし、そうして『死ぬ』と、僕が泣いたりするので、戦略を立てるときも、慎重になってきたのだそうだ。


「それもカミーユ君の膨大な魔力を頼れるからこんなに慎重にできるんだよ」とオルガさんも言っていたし、「カミーユの結界はなかなかだな」とマルセルさんにも感心されている。


僕のチーム、ジョルジュ先輩とロザリーと僕の中では、僕が一番結界術には劣るんだけど…そうか、あの二人が特別だったんだな。


日常的に会議室に結界を張ったりしていたので、感覚が麻痺していた。

僕でも相当いい方だったらしい。


こないだは、広間のような部屋に足を踏み入れてから数秒のうちにトラップを解除しないと、僕らが全員ばらばらの違う階層に飛ばされる、というところがあったのだけど。


僕がヒントを解読して読み上げて、リュシーさんがトラップ解除にかかっている間に、念のために僕らの周りに数種類の結界を張り巡らせておいたら、結局はトラップ解除が間に合わなかったのだけど、僕の結界のお陰で誰も飛ばされることがなかった。


まあ、恐らく強制転移とか、それを確実に効かせるための呪いとか、そんなのじゃないかなと予想して、それぞれをはじくように多重にかけたのが、うまいこと効いたということだったんだけど。


あれほどの短時間で、ダンジョンで働く強制力に抵抗するだけの結界を確実に張れるのは、一流冒険者にもそんなにいない、と褒めてもらった。


もし、そのトラップが効いてしまって、僕らがバラバラになったときは、速やかにそれぞれが持たされている魔道具を使ってダンジョンの外に出て、もう一度1階層からのやり直しになるところだったのだ。


まあ、マッピングは済んでいるので、一度目の時よりは楽だろうけど…ここまでの道のりをもう一度、と思うと虚ろな目をしたくなる。


結構初期にあった、魔法無効の階層なんかはもう二度と行きたくない…。


あと、オルガさんがうっかりトラップにかかってしまい、落とし穴に落ちたときも、その落とし穴が下の階層につながっているのがわかって、そのトラップが閉じる前に、全員大急ぎでその穴に身を投じたこともあった。


そのときは、階段で降りるときはかなりの段数があるのだから、相当な高さから落ちるのかと思いきや、下の階層の天井の高さから落ちるだけで済んだのだけど。


でも、とにかく落とし穴が閉じる前に飛び込むことが最優先だったので、もつれるようにみんなで飛び込んだことで着地の受け身がとれず、体重の重いギーさんが足を折ってしまったりする中、僕は何故か落下の勢いがふわっと減速して、何ともなかった。


一人だけ着地のタイミングがみんなとずれたせいで目立った僕は、後になって落下対応の陣が刺繍されていたことに気が付いた。耐衝撃の応用と浮遊の応用で新しく生みだされたものらしく、じっくりと陣を見て、それがその効果だと気が付いたくらいだった。


ロザリーは、刺繍しながら新しい陣を発明もしていたらしい…。

全くいつまでもロザリーにはかなわないと思う。


今進んでいる足場の向きがころころと変わる階層でも、この落下対応の陣のお陰で僕は大体足から着地することができている。

ロザリーは、マントや服や肌着に、こういった陣をそれぞれに刺してくれているので、どれかが使い過ぎで効果を失っても、他に刺された陣が今度は働いてくれるのだ。


この陣は複雑すぎて、休憩の時にリュシーさんのマントにロザリーの陣を見ながら念写してみたら、魔力をごっそり持っていかれたので、先頭を行くリュシーさんだけにとどめることになった。

休憩の時に魔力を回復するどころか消耗していたら、何かの時に対応できないからだ。


それに、この階層は広い。きっとボスがいる。


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