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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第2章 カミーユのお話
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55ダンジョン攻略~中級ダンジョンと出発準備


家についてみると、ロザリーが眉間にしわを寄せて刺繍をしてくれていた。

もしかしたら、と念のためにそのまま食べられるものをいくつか帰りに買って来ていたのだけど、やっぱりロザリーは何も食べていなかった。


「なんかご飯作る約束なのにごめん」


買ってきたものを並べながらそう言ったら、寄ってきたロザリーに両方の頬を、パチンと挟まれた。

そして、僕の顔の向きを自分に向けると。


「ダンジョンから帰ってきたらうんと美味しいものを作ってもらうんだ、って楽しみに待つから。作ってほしいご飯のリクエストカードとか並べちゃうよ?」

そう言って、笑ってくれた。


ロザリーの気遣いが嬉しくて思わず僕も微笑み返した。


次の日は、僕の装備はまだ調整中ということで、仮の装備に身を包んで、中級のダンジョンに挑んだ。


昨日のダンジョンが僕から見ても初級のものだというのは分かったけれど…中級になった途端に、厳しいものになった。


もう僕を先頭に進ませるようなことはなく、リュシーさんの指示したとおりに進む。

トラップ自体もより複雑になり、気にしなければいけないことが、階層がすすむにつれてどんどん増えていく。


途中、階層の間の階段で、食事をとる経験もした。


マジックバッグに入っているものを取り出して食べるのだけど、魔術師や治癒師の僕らはたくさん食べなくてはならない。

マジックバッグもかなり大容量だけど、明日からのダンジョンでは食料が尽きてしまうのではないかと心配になった。でも、今回に限っては、国からの支援があるから大丈夫だ、という話だった。


彼らの進むスピードに合わせて進み、とにかくやることなすことが初めての連続。


踏破するのに最短の道筋を通って、ダンジョン最後の難敵、ラスボスを倒し終えてホッとした時には、ひどく疲れを感じた。


でも、宝箱も開けてダンジョンの外に出ると、まだ明るかった。


「だいぶ疲れたようだが…大丈夫か?」


魔術師庁の人が用意してくれている、魔術師庁に帰るための転移陣に向かいながらギーさんに心配される。


「すみません…体力がなくて…」


「でも、ダンジョン未経験だった割にカミーユ君は戦えるから、あとは慣れだよ、慣れ」


リュシーさんが、笑って背中をばしん、と叩いてくる。

それで、よろけてしまった僕をアランさんが支えてくれた。


「少しは鍛えたという話を聞いたけど…もともと華奢だからな…もう少し体を大きくできると体力もつくんだが、魔力量も多いし、食べられる量にも限界があるしな」


そういいながらアランさんが僕の腕と自分の腕を並べてくれた。

わー…アランさんの腕、僕の腕の1.5倍は太いな…。ギーさんだったら2倍だろうな。


「急だったんだもの仕方ないわよ。ないものねだりをしちゃだめだわ」

オルガさんが肩をすくめる。


「まあ、魔術師の中では冒険者でもないのに動ける方だとは思うがな」

マルセルさんがそう言ってくれると少しホッとする。


魔術師庁に戻ると、僕の分を含めて、全員の装備が揃っていた。


「わあ、私のダガー、こんなの持たせてもらえるなんて嬉しいー」


「私のローブ、魔力軽減がさらに上がってる、助かるわー」


女性2人がきゃいきゃいと装備を手に取っている中、僕は男性3人に装備の最終チェックをされていた。


「ふむ。ミスリル銀が急で用意できなかった割には、まあいいんじゃないか」


「ロッドもいい感じにできましたね。妖精の涙の力が最大限に発揮できる。いい工房に頼んだようだ」


「まあ、王命だからね、死ぬ気で徹夜して作ってくれたんでしょう。それになかなかこんな宝玉を使ったものを作る機会もないでしょうから張り切ったんでしょうねー」


ギーさん、マルセルさん、アランさんにあちこちから眺められて、どうやらこれで大丈夫ということになったらしい。


そこにホスキンさんが大きな箱を抱えてやってきた。


「ああ、皆さんが最初に出発してからも念のために集めていた装備が役に立つようで良かったです。どれだけの予算がつぎ込まれたかを考えると胃が痛いですが、陛下のご指示ですからね…。大事に使ってください。次善の装備もマジックバッグに一式入れておきますから、そちらも確認しておいてくださいね。で、これですけど…」


ホスキンさんが箱から出したのは、濃い灰色…ほぼ黒と言っていいほどの色合いのフードのついたマントと、同色のスカーフだった。


「気配遮断を得意とする魔獣の毛で作ったマントとスカーフです。これでザコ魔物とは戦わずに済むでしょう」


気配を遮断…そんな魔獣がいるんだ…学院生の頃にロザリーと愛読した魔物辞典には載っていなかったな…ああ、魔物じゃなくて魔獣だからか…そしてその毛をつかった織物だと、気配遮断効果があるのか…。


なんか、だんだんちょっとのことでは驚かなくなってきた。

冒険者の世界は奥深いようだ。


ふと、所長室にある、触ろうかどうしようか迷うような雑多な品々のことが頭をよぎった。

あそこにあるものも、分かる者が見たら、すごいものがたくさんあるのかもしれない。


支給されたマントは、僕達それぞれの体格に合うようになっていて、一体この短期間でよくもまあ用意できたものだと感心してしまう。


明日の早朝の集合時間を教えられたところで、解散となったので、帰宅しようとしたら、ホスキンさんに呼び止められて、大き目のバスケットを渡された。


「君の所の所長からの計らいだよ」

中を見ると、たくさんの食べ物が詰まっていた。


僕がロザリーのご飯を作る約束であることを、そういえば知っているんだった。

有難い気遣いに遠慮なく受け取って、外に出たら、もう暗かった。


家に着いたら、ロザリーが自分で淹れたお茶が不味いのよ、と文句を言って顔をしかめていた。


「今日のご飯は、差し入れてもらったよ。明日の朝の分もあるね」


僕が持って帰ってきたバスケットの中身を見せると、「大変!お風呂準備しとくの忘れてた!ごめん、それ並べてて!」と、お風呂を沸かしに行ってしまった。


まあ、ダンジョンでお風呂に入ることは無いだろうから、お風呂に入っておけるのは有難いけど…。

ロザリーの顔色が悪くなっていたので心配になってしまった。


でも、持ち帰ったものを温め直したりして、二人で食べているうちに、だんだんと顔色も良くなってきたので…お腹がすいていたのか、そういえば今日はお弁当を作ってあげていなかったから、昼食を抜いたんだろうな…と気が付いた。


ロザリーは不自然に明るく振舞っていたので、僕も、ロザリーが入ってみたがっていたのに僕が先になってしまっているダンジョンのことについては、昨日も話さなかったけど、今日も質問されない限りはこちらからは話をしなかった。


一緒に行くメンバーのことすら聞いてこないので…ロザリーはきっと知りたくないんだろうな、そう思った。


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