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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第2章 カミーユのお話
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53ダンジョン攻略~初めての宝箱


びくびくしながら僕が歩いていく後ろをベテランの皆さんがついてくる。


目標にしていた、小部屋の入り口のドアの前にようやくついた。

でも、いきなりドアノブに手をかけたりはしない。慎重に観察する。


「お、いいね。そういう慎重さがあるタイプか、助かるよ。ここは、普通に開けても大丈夫。ヒントが無いだろう?」


僕がドアを開けると、僕らの寝室程度の部屋の中に、宝箱と言われる、ダンジョンでのみ出てくる箱があった。


この宝箱も、中身をとっても違う階層に行ってしまうと、また中身が入っている。

その中身も冒険者たちの稼ぎとして、大切なもので、どのダンジョンのどこに宝箱があるか、はとてもよく知られている。


僕達がこれから挑むのは、未踏破のダンジョンだけど、踏破済みのダンジョンの各階層のマップは、宝箱の位置つきで、ダンジョンの価値に応じた価格で売られている。


未踏破ダンジョンの全ての階層を踏破して、そのマップを最初に売ることが出来れば、一生遊んで暮らせるだけのお金が入ると聞いたこともあった。

ただ、難易度が高いところなどは、全階層では高額すぎるので、階層ごとに売り買いされたりもするらしい。


まあ、僕はそういうのを生業としていないので…。


ロザリーが最初に研究所じゃなくて冒険者って言わなくて本当に良かったな…ダンジョンに入ってまだ数分なのに、心からそう思う。

ここにいるのがロザリーだったら、はしゃいでしまって、さっきの入り口でもう落とし穴に落ちてたんじゃないだろうか。


「さて。宝箱があるよね。この部屋は、トラップもないし、何もないタイプなんだ。でも、そんなのは滅多にない。それから。いい、良く見てて」


リュシーさんがそういうと、宝箱の前で何かの術を詠唱した。

すると、宝箱が明るく光った。


「今の色、良く覚えておいて。これが、安全な宝箱のときの色。宝箱の中に、魔物が入っているときと、魔物が宝箱に化けているときがあるんだ。踏破済みダンジョンのマップをもっていれば、宝箱がないはずのところにある、となれば、魔物が化けているってすぐに分かるけど、私達が明後日から挑むのは、発見されたばかりの未踏破ダンジョンだからね。全部の宝箱をこうして試さないといけないんだ。もし、魔物が宝箱に化けていたり、中に魔物が入っていたり、あとは、宝箱自体がトラップってこともあるんだけど、そういうときは、赤黒く光るから。さて、あけてごらん」


促されて、鍵もかかっていない宝箱の蓋をあける。


中にあったのは、うっすらと虹色に光る卵くらいの丸い石だった。

僕がそれを取り出すと、皆が驚いている。


「ははは、カミーユ君はすごいね!強運の持ち主らしいよ」


アランさんにそう言われて首を傾げていると、リュシーさんが、僕が手にしている石を鑑定した。


「わあ、本物の宝珠だ…すごっ!」


「これは、運任せのトラップのときはカミーユ君に頼んだ方がいいということなんだな」

ギーさんは少し嬉しそうだ。


僕が戸惑っていると、オルガさんが教えてくれた。


「普通、人生での運や不運って、はっきりと分からないじゃない?いいときもあれば悪いときもあるものでしょ?でもね、ダンジョンの中では、その人が持っている運というのが一定なのよ。だから、運のいい人はずっと運がいいし、悪い人はずっと悪いままなの。これは、持って生まれたものらしいわ。だから、どんなに実力があっても、運を持っていないとダンジョン攻略をする冒険者には向かないのよ」


「運、ですか…」


「宝箱の中には、あける人の運によって何が出てくるか変わるものがあってな。ここはそういう意味でも有名な宝箱なんだ。冒険者になりたい者が自分の運を調べることが出来る。ここにいる私達も当然運は悪くはない。むしろ冒険者としては良い方の部類に入る。だが、ここで宝珠を出したという話は、数人しか聞いたことがない。君が魔術師だから宝珠がでたが、君が剣士ならオリハルコンくらい出ただろうな」


「え、あの伝説の金属のオリハルコンですか?」

マルセルさんの補足に驚く。


「そう。この宝珠は、オリハルコン並みの価値がある。今日持って帰ったら君のロッドに急いでつけてもらうようにしないとな。宝珠の効果については、おいおい説明していくよ」

魔術師のマルセルさんからは、色々と学べそうだ。


ちなみに、あの宝箱、運がない人が開けると、薬草だったり、精製する前の鉄鉱石だったりするらしい。


確かに…そのあたりにも生えている薬草とか、精製前の鉄鉱石ってただの石だし!

僕の明らかに魔力を秘めた丸い石…宝珠?は格が違いそうだというのは分かった。


「さて。運試しもしたことだし。サクッと攻略しちゃいますか」


リュシーさんに言われて、小部屋を出ると、残りの小部屋も全て入って、それぞれの部屋にあった石像を、その部屋の中の台座に置いていった。

最後の部屋の石像を台座に置いたときに、遠くでズズ、と、何か重いものが動く音がした。


「今の音、聞こえたよね?ああいう音は、何かが起こったときの合図。ここでは、地下一階への入り口が開いた音なんだけど、ああいう音を境に、この小部屋から出たときの床のトラップの引っかかる石の色が逆になっている、なんてこともある。だから、ダンジョンの中では無駄話は基本禁止だからね。あ、ここではトラップに変化はないから、相変わらず明るい石の上だけ歩いて、祭壇に向かってね」


常に五感を研ぎ澄ませないといけないということか…。


祭壇についてみると、祭壇の裏側に、大きな穴が開いていて、その穴の中に下り階段が続いていた。


「さ、降りるよ。こういうとき、パーティーメンバーが揃っているかを確かめてから降りること。これはダンジョンの鉄則だよ。一旦階層が離れ離れになったら、ダンジョンの中で再会することはできない。誰かがその階層にいるときは、他の者がその階層に入れない、の原理だからね」


リュシーさんに促されて、階段を降り始める。


僕ら全員が階段を降り始めてしばらくすると、ガコン、と音がして、さっき降りてきた祭壇裏の穴がふさがったのが分かった。そして、同時に階段の両脇に、ぼう、と明かりがともる。


「この階段は、階層の境目なので、トラップも魔物も絶対にない、安全地帯だ。踏破済みダンジョンなら安全なところも発見されていて、そこで休憩をとったりもできるが、未踏破ダンジョンの場合は基本的にこの階段で休むことになる。ここは新人でも数時間で踏破出来るから今は休憩はとらないが、寝たり食事をしたりは階段が多いとだけ覚えておいてくれ」

ギーさんの言葉に頷く。


寝るときは交代で見張りをしたりするのかと思っていただけに、皆で寝られる場所があるというのを知れてホッとした。


階段をさらに下っていくと、階段の最後の段から少し行ったところで行き止まりだった。

僕らが全員、階段から降りて、壁の前に立つと、後ろの階段の明かりが消え、同時に目の前の壁が真ん中から割れて、左右に開いていった。

僕らが全員通り過ぎると、また壁が閉じていき、すぐにどこが開いたのかも分からないほどになってしまった。


「階層移動の経験をしたわけだけど…ダンジョンは基本的に一方通行。普通にはもう上の階層に戻ることは出来ないから。落とし物忘れ物に注意よ。さてと。足元見て。ここも、他のところと色が違っているでしょ。さすがに階層変わって最初の一歩からトラップ、っていうことはないの」


確かに足元をみると、最初の入り口で青い石が敷かれていたのと同じくらいの広さで、くすんだ色の石が敷かれている。

でも、それ以外の所は、レンガが敷き詰められていた。


僕はキョロキョロと辺りを見回し、天井にまたヒントがかかれているのを見つけた。


「傷物は傷つく」


「そうなの。ここは、レンガが欠けていたりひびがはいっているものがダメなのよ。足元をよーく見て、ひびも欠けもないところを選んで歩いて。もし、間違って踏んじゃったときは、矢がどこかから飛んでくるわ。ただ、そういう傷ついたレンガの数は少ないの。だから注意深く歩けば大丈夫」


僕はびくびくと、ベテランの皆さんは大した緊張感もなく進んでいく。


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