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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第2章 カミーユのお話
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51ダンジョン攻略~顔合わせ

ダンジョン攻略が始まります。


僕が行くことになったので、僕はジョルジュ先輩とともに、魔術師庁に移動し、この件の担当者から、さらに詳しい話を聞くことになった。


出発が明後日だというので、ロザリーは休暇をとってすぐに帰宅して、僕の出発の準備をしてくれている。

僕の肌着に防寒の陣を刺繍すると言っていた。


「今回、一緒に挑むのはカミーユ君を入れて6人だ。他の5人は数階層進んでみたのだけど、暗号解読に手間取り、どうしても罠にかかるということで、一時撤退してきている。カミーユ君はダンジョンに入ったことがないということだったね」

「はい」


説明をしてくれているのは、所長と同年代か、という魔術師庁のお役人さんであり、陛下からの直接の指示によって秘密裏に取りまとめ役をしてくれている、ホスキンさんだ。

苦労しているのか、茶色い髪の毛が少し寂しいことになっている。


「他の5人は、それぞれベテランの冒険者や魔術師達だ。ダンジョン経験も豊富だ。それで、早速で申し訳ないのだが、このあと5人と君との顔合わせのあと、初級のトラップダンジョンに挑んでもらう。ここは命に係わるようなトラップはないので、万が一引っかかっても大したことはないが…トラップダンジョンの基本は全て学ぶことが出来る。で、明日は中級のトラップダンジョンを軽く経験してもらったあと、全員の装備を見直して、明後日の早朝に出発、という流れになる。…何か質問は?」


「装備は用意してもらえるようですが、それ以外の持ち物はどうすればいいのですか?」


「ああ、全員にマジックバッグを持たせている。その中に、あらかじめこちらで色々入れておくから、今日のうちからマジックバッグにも慣れておくといい」


マジックバッグというのは、空間魔法の陣を縫い込んだ鞄で、鞄についているベルトを腰に巻き付けて使う。

幅は体の幅ほどはあるけれど、厚みはそんなになく、けれども見た目の何倍も収納することが出来る。

どれくらい物を入れられるかは、バッグ作成者の技量にかかっているので、値段も幅広いが、基本的には高価なものだ。

入れてしまえば、入れた瞬間の状態で保持されるので、水や食べ物などを入れておくと、何日たっても腐ったりしないので、ダンジョンに潜るときの必須の装備だ。


ただ、入れるときはただ放り込めばいいのに対して、取り出すときはコツがいる。

目当てのものを探し出すのに慣れていないと手間取るのだ。


以前、研究所で所有するものを遠征の時に使ったことがあるけれど、あれはそれほどたくさん入るものではなかった。


「多分、僕の能力ではダンジョンで皆さんの足を引っ張ることになりそうですが、それについてはご理解いただけているのでしょうか?」


「ああ、もちろんだ。文字が読めない、暗号解読が出来ない、と引き返してきて泣きついてきたのは彼らだからな。例の経典を解読したという君たちに来てもらえないかと言い出したのはそもそも彼らだ。それに、経験こそ浅いしダンジョン経験はないにしても、研究所では魔物の討伐を重ねてきたと聞いている」


思わずジョルジュ先輩の顔をみて、あんなので経験になるのか?と眉を寄せたら、先輩が苦笑していた。


「大丈夫、ロザリーもカミーユも規格外だからね。僕らのチームで討伐してきたような野良魔物や魔獣たちは、普通は勤続5年以上くらいから初めて請け負うものだよ。それに、カミーユはまだ21歳。学院を卒業してまだ3年目じゃないか。どんなに能力があっても、経験というのはどうにもならないのだから」


「ふむ、確かにそうだな。今回のパーティーメンバーは、君以外は君が幼いころにはもう冒険者をしていたり、討伐に参加していたり、といった者達だから…リーダーのギーも責任をもって君を守ると言っている。まあ、ダンジョンというものの特性上、絶対に安全だ、とか、大丈夫だ、とは言ってやれないのだが…」


僕はホスキンさんの言葉に少しほっとした。


ダンジョンが安全ではないことなんて子供でも知っている。

なんでこんなひ弱なやつが来たのか、と思われたりしないかと心配していたのだ。


新人だった頃の遠征で、熱を出したことは結構トラウマになっていたようだ。


「そうだ…カミーユ君、君はカミーユ・オスマンだったね…?その、気を悪くしないでほしいのだが…例のオスマンの魔性の子と言われていたのは君かい?」


「ああ、はい、そうですが…。何か問題でも?」


「いやいや。彼らが、ヴィリエの直系かオスマン侯爵の子息かの二択であったことを知ったら驚くだろうと思っただけだ」


ホスキンさんがそう言って、ハンカチでおでこなのか頭なのか微妙なあたりをつるりと拭いたとき、僕らがいる会議室がノックされた。

魔術師庁は会議室に結界を張らないものらしい。


ホスキンさんがドアを開けに行き、入ってきたのは、いかにも冒険者といった風情のとても体格のいい男性を先頭に、ベテラン感のある30代半ばと思われる男女5人だった。

ああ、この人達が一緒に行くメンバーなのか、とすぐに分かった。


みんなが僕をジロジロと値踏みするように眺めてくる視線に耐える。


「こちらが、あの文字を解読してさらにあの分厚い経典を翻訳するまでをたった10日でこなしたチームの一員である、カミーユ・オスマン君だ」

「カミーユ・ハーレ・オスマン、です。色々と力の足りないところがありますが…よろしくお願いいたします」


冒険者の挨拶はどうするのが常識か分からないので、一応貴族の礼をとっておく。


「は?ハーレ?オスマン…?ちょ、いいの?そんな子連れて行って!」


黒に近いこげ茶の髪を男性のように短くしている女の人が驚いた顔でホスキンさんに問いただし、他のメンバーも目を丸くしている。


「カミーユ君、ハーレの領主だったね、間違ってすまない。ああ、この翻訳をしたのはこのカミーユ君と、もう一人はヴィリエのお嬢さんだったんだ。で、そこにいる指導役のジョルジュ君と相談のうえでカミーユ君が行くことになったらしいよ」


「こんな綺麗な子…ダンジョンに入れちゃっていいのかな」


もう一人の長い黒髪を一つの三つ編みにしている女性が呟き、一番ガタイのいい男の人が「もう一人はヴィリエか…どっちもどっちだな…」と顔に手を当てて天井を向いた。


「とりあえず、僕らもちゃんと名乗ろうよ。僕はアラン。ギーと同じ冒険者パーティー『海辺の風』の一員だよ」


銀髪青い目のさわやかな印象で、すらりとした体形のアランさんが最初に挨拶をしてくれた。


「あ、ああ、すまない。そうだな。俺が今回のリーダーのギーだ。アランと同じパーティー『海辺の風』に所属する冒険者だ。それで、こちらはマルセルだ」


ガタイのいいこの人がギーさんだった。茶色い髪に茶色い目だけど、ロザリーの茶色の方が赤みが強い。


そして、マルセルさんは、まだ一言も話していなかった、ツンツンと逆立つような短めの赤い髪をして、琥珀色の目をした男の人だ。


「私はマルセル。以前『海辺の風』にいたこともあるんだが…今は冒険者はやめて、魔術師の塔にいる。縁あって今回のチームに参加することになった」


「私はオルガ。私も昔は『海辺の風』にいたの。で、マルセル同様、今は冒険者から引退して、国に帰ってきて、魔術師の塔に勤めているのよ」


長い黒髪を三つ編みにして、黄色い目をした女の人はオルガさん。


「最後は私。私はリュシー。私も冒険者だけど、私は普段フリーでやっているの。私はシーフだから、シーフが必要なパーティーにその時だけ参加する感じ」


小柄で、焦げ茶色の髪を男性みたいに短くして、明るい茶色い目をしている。


見た目だけでも皆個性的だ。


そして、リュシーさん以外は、以前同じ冒険者パーティーだったということになる。


ん…?海辺の風……どこかで聞いたような…。

急に思い出した。


「あれ?海辺の風といえば、あの番を亡くして半狂乱になり、村を一つ壊滅させたドラゴンを倒した…?」


まだ僕が学院生だった頃の出来事で、海辺の風メンバーはそれで隣国で受勲したと聞いた。

もともと一流の冒険者として名が知られていたのだけど、半狂乱のいわゆるマッドドラゴンをも倒したということで、世界的に有名になったんだったような…。


「わあ、数年前の出来事なのに知っててくれたんだー」


オルガさんがにこ、と笑った。

なんだか一瞬オルガさんが誰かに似ているような?と頭をかすめたけど、それは誰なのか分からなかった。


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