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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第2章 カミーユのお話
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41一緒にいたい


帰れないことが決定したからには、この特別任務後の休暇はしっかり休みたい。

夕べもあんまり寝られていないし…。


ああ、自分のベッドでぐっすり眠りたかったのに。


「ぐっ、ま、まずいご飯…食べてみたこともないのに決めつけるなー…って言いたいけど、その通りかも。明日もどうかどうか、おいしいご飯を作ってくださいませ。そのためなら私は毎日お風呂を沸かして、カミーユ様の安眠に尽力する所存でございますぅー。私、家の主なだけで、ほんと何にもできてない。こちらこそ、帰りそびれただけなのに家のことしてもらって、ごめんね、すごーーーーく助かってる」


「オーブンとか使った形跡無かったもんねぇ。まあ僕としては明後日の朝まで外出禁止なわけだから、追い出されると捕まっちゃうし、追い出さないでくれているロザリーに感謝だけど」


女の子の一人暮らしなんだから、最初の晩に帰りそびれた段階で、出てけ、と蹴りだされていてもおかしくなかったのだ。


「ええ?バカなの?カミーユを追い出すのと、家に居てもらうのだったら、いてもらう方が私にとってどれだけお得か分かんないの?掃除も洗濯もしてもらって、ご飯も作ってもらえるんだよ?私、今日は、寝て、起きて、趣味かご飯食べてるかだけなんだけど?」


「え…?バカなのはそっちじゃない?」


未婚の女の子の一人暮らしの家に、男が泊まり込んでいるのがもしばれたら、その実態がどうあれ、自分が世の中的にどういう評価になるのか、気が付かないのか…。


「へ?なんで?」


反応はやっぱり気が付いていないものだった。


呆れる気持ち半分、追い出されたら捕まってしまうから、居させてもらいたい気持ち半分、ロザリーと一緒に過ごすこと自体が楽しくなってきている自分が半分…ん?1.5倍になってはみ出してる。


割合は置いておくにしても、さっきから自覚している、『ロザリーに何かをしてあげることが楽しい』と、学生時代からの『一緒にいること自体が楽しい』、は、足し合わされて派生して、『今は一緒にいたいから帰りたくない』、になりつつあることに唐突に気が付いた。


ロザリーが何か訊いてきていたけど、自分のたった今気が付いた気持ちに動揺して、聞いておらず、落ち着くために冷めかけたお茶の残りをくいっと飲み干した。


食べ終わった食器でも洗って気持ちを落ち着かせようかと思ったら、「あああ、今回の食器洗いくらいは私がやるから、お風呂入ってきて!」とロザリーに背中を押された。


お風呂で気分転換でもいいか。

そう思って、食事中は椅子の背にかけてあったエプロンをロザリーに着けてやって、お風呂へと向かった。


お湯に浸かりながら、自分の気持ちの変化についてやっぱり考えてしまう。


出会った頃はお互いに子どもだった。

13歳というのは、大抵、思春期に入っているものだけど、僕は体の成長も遅かったし、僕が思春期と言われるものに突入したのは遅かったと思う。


周りで、交際を始める子たちもいなくはなかったけど、なんというか人嫌いの僕にとっては、恋愛感情というものは想像するのも難しいものだった。


ロザリーは女の子で、僕は女の子ではなかったけど、ずっと友人関係のままだった。

それは僕がそう思っているだけではなく、ロザリーもそう思っているのははっきり分かっていた。


ロザリーにとって僕は異性ではなく、そして僕にとってもロザリーはロザリーでしかなかった。


学院時代に5年間一緒に居られただけでも有難い、僕にとっては得難い友人だった。


その彼女が僕と同じ就職希望先であったときに…今から思えば、かなり嬉しかったのではないか?

まだ、一緒に居られる、と…。


就職してからも、親しい友人と一緒に居られる気安さと心強さだけだと思っていたけど、いつの頃からか僕にとっての『特別』になってはいなかったか…?


『特別』という意味では、出会った時から『特別』ではあった。

でも、今感じている『特別』感は、何か違う。


そう…例えば…僕じゃない誰か別の男が、いつもの僕の場所、つまりはロザリーの隣にいることに耐えられるのか…?


今まで漠然としてしか考えていなかったのに…。


つい半日ほど前に、将来のロザリーの夫には秘密にしておくよ、なんて軽口をたたいていたのに。


いつか、ロザリーから『この人と結婚するの』と誰かを紹介されることを想像しただけで、体がぶるっと震えた。

見知らぬ誰か、なんてありえないし、それが例えばジョルジュ先輩だったり所長だったり、既に親しい人間でもダメだ。


…譲れない。


僕にはロザリーが必要だ。

彼女の隣には、僕が。

僕の隣にはロザリーがいなくては。


浮ついた、ふわふわするような恋愛感情とは違うのかもしれない。子供じみた独占欲なのかもしれない。

でも、気が付いてしまったこの気持ちは、どう考えても間違いではないと思える。


僕はロザリーとの関係を変えていくことを決めた。


長い付き合いの友人、から、一歩進めよう。


僕もロザリーも多分、恋愛に関しては人並外れた不器用同士だろう。

でもお互いにそういうのが苦手だからこそ、僕らなりに進められるはずだ。


まずは、少しずつ…。

そうだな。外堀から埋めていこう。


領主として様々な問題を解決するときと同じように…計画を立てて、実行して、うまく行かなければ見直して、また計画を立てて…。


じっくり考えたことで、むしろすっきりした。


ここ数年、何故か、気持ちがもやっとすることがあったのは、ロザリーを独占したいせいだったか、と思い至れば、思わず笑ってしまう。


そして、以前夢魔に見せられたのも彼女の姿であったことをふと思い出す。


あれはまだギリギリ淫魔ではなかったというのに、あの夢がきっかけで、自分が男性として正常であったことを初めて確かめられた。


既にロザリーを女性としてみていたのに、なんだかんだと言い訳をしていただけだったのだ。


もう進むべき道が分かったからには行動あるのみだ。


…といいつつ…。

とりあえずロザリーの家に閉じ込められているこの二日は、布石程度で大人しくしていようと思う。

急いでもロクな結果はでないだろう。


ようやくカミーユ君に変化です。

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