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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第2章 カミーユのお話
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28魔力枯渇


僕ら四人はマッチョな近衛兵さんによって、いつの間にか用意されていた簡易寝台に寝かされた。

あくまでもこの部屋から出ない。


そして、陛下の寝室は本当に広かった。


見上げた天井の広さを落ち着いて観察すれば、簡易寝台を20台は置けそうだ。


さっきも食べたばかりだというのに、僕らはまた次々と口の中に食べ物を押し込まれていく。


むせないように、上半身は起こした状態になるように、背中を支えてくれる器具を使い、口に食べ物を押し込む係の魔術師さんがそれぞれについた。


上半身を起こされるときに見たら、ロザリーについてくれているのはちゃんと女性魔術師さんだった。

ちょっとホッとした。


たいして咀嚼もせずに飲み込める、とろとろした甘いものを口に入れられていたら、所長がふと思いついた顔をして、僕のところに寄ってきて、「失礼」そういって、給餌係の魔術師さんの脇から、僕の上着をまくり上げた。


「!!!」


まだ悲鳴も上げられないから、何をする、と睨みつけると、さらされた僕のお腹を、つるり、と撫でて「これ取った方が早く回復するだろ」そういって、僕のお腹に顔を寄せると、へそピアスになっている魔道具を外した。


びっくりするくらいにくすぐったくって、でも身をよじって逃げ出したりもできないので、ただ顔が赤くなって、はあはあと息を荒げて所長を見上げて睨んだら…久しぶりに人の視線が集中する感覚に、ぎょっとした。


「あー、うん、なんかヤバい感じか…すまん、気を利かせたつもりだったが」


まあ、常に僕の魔力を吸い上げて発動している魔道具だ。枯渇状態では、確かに外しておくべきかもしれない。


そして、何がどうヤバいのかはよく分からないけど、僕に食べさせてくれていた若い男性の魔術師さんが、顔を真っ赤にしてスプーンを取り落とし、「む、無理!」と言って前かがみになって逃げ出してしまった。


所長何してくれやがるんですか、なんか色々めんどくさくなったじゃないですか、と非難を込めた目でまた見上げると、「ああ、そういう顔するなって。もっとめんどくさくなるぞ」そういって所長が新しいスプーンを持ってきて、僕の口に食べ物を突っ込み始めた。


キョロキョロと視線を動かせるようになり、餌付けされながら見てみると、今日が初対面である宮廷魔術師さんや医師さんたちは、顔を赤くしながらも、興味津々という感じで僕を見ている。


「これが噂のオスマンの魔性の子であるか。今まで見ていたのはやはり隠された姿であったのだな」


その声は陛下のものであり、医師と魔術師による最終確認が済んで、寝台から立ち上がったところだった。


「ふむ、面白い…そなたが本気になれば、この世の大抵のことは思うがままになりそうなものを。それを活かさないとは。まるでヴィリエのようだな」


すたすたと歩み寄って来て、僕の顎に手をかけると、くい、と上を向かされて顔をじっくりと見られた。

内心では悲鳴を上げているけど、脱力状態ではされるがままだ。


陛下は、所長と同じか少し若いか、という年代だ。


力強く輝く瞳が印象的な精悍な顔だけでなく、がっしりとした骨格としっかりと筋肉の付いた肉体が、寝衣しか身に着けていないために良くわかってしまう。

とても魅力的な男性であることは間違いがない。


正装したお姿でしか拝謁したことはなかったが、こうしたラフな姿でも、『上に立つもの』であるという何か威圧のような得体のしれないものが発せられている。


このままキスでもされてしまうのかというほどに陛下の顔が近づき、うろたえていると、ふ、と笑みがこぼされた。


「まあ、今はしっかりと休養を取るがよい。褒美の件は後程」


す、と立ち上がって、隣室に侍従と護衛らとともに消えていってくれて、心からホッとした。


隣に寝かされていた魔術師さんもホッとしているのが伝わってくる。


そのさらに奥に寝かされていたロザリーは普通に食べていた。さすがロザリー。


そのさらに奥の魔術師さんは、この雰囲気で食べ続けたロザリーを驚愕の目で見ていた。

食べさせ続けた魔術師さんのことも。


まあ、食べさせていた魔術師さんがどんな人なのかは、女性らしいこと以外は僕に背を向けているので分からないのだけど。


偉い人がいなくなって、基本的に魔術師だけになった室内では、一気に皆が話をはじめ、騒がしくなった。

倒れなかった魔術師たちも、食べ物を口にしている。


漏れ聞こえることから、このあと、僕ら全員には豪華な食事が用意されるらしい。


ロザリーが何か言っているのが聞こえる。

休みなく食べていたし、最初に話せるほどになったらしい。


ジョルジュ先輩が途中で僕の給仕係に代わり、所長は宮廷魔術師長と何やら二人で話し込んでいる。二人だけを包む結界の中での話は聞こえてこない。


「まだ声も出ないかな?大変な役をまだ年若い君たちにさせて申し訳なかったね」


ジョルジュ先輩が眉を下げる。


でも今日の仕事は、正直参加できる気がしなかった。

恐るべき難易度の繊細な術式を間違えることなく、次々に、なおかつ、早さを求められた。

今の僕には無理だった。


「いえ…」


なんとかそう声が出た。


そして、すこしもぐもぐできるようになったので、少し口を開けて早く次を、と催促の目を向けたら、「カミーユはその魔道具をできるだけ外さない方が本当にいいね」ぎこちない笑顔で先輩がそう言って、食べ物を押し込んでくる。


「ロザリーに早く交代してほしいけど、彼女もまだかかりそうだね」


ため息とともに、「何か新しい扉を開いてしまいそうで怖いよ」とジョルジュ先輩が呟いたことは、ロザリーの様子はどうなのかとそっちに気を取られたせいで聞いていなかった。


ジョルジュ先輩?!大丈夫…?

そして、ロザリーに食べさせていたのはもちろんヴィリエの分家の方。

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