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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第2章 カミーユのお話
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27宮廷魔導士たち


国王陛下の寝室にまで招き入れられた僕達は恐れおののいて、所長と先輩の後ろで肩を寄せ合ってできるだけ目立たないように、と体を縮こまらせた。


それにしても、寝室の結界は思わず感心するほど、見事なものだった。


なので、この中でなら少々の秘密やらなにやらをしても外部には漏れる心配はないし、ここが『現場』であることから、事情の説明も寝室で受けることになったのだ。


「まずは誓約魔法を」


高貴な方々にまつわる事件に携わると、このような誓約魔法を受けさせられることがある、とは聞いていた。

紙に描かれていたものは、間違いなく、他言無用、つまりはここで見聞きして知ったことを他の人には伝えることは出来なくなる陣で間違いなかったので、僕らはその陣に手をのせて、誓約魔法を発動させた。


先輩は経験があるのかもしれないけど、僕やロザリーは初めてだったので、何を知ってしまうのかと緊張してしまう。


大勢の宮廷付き魔術師たちが集まっているのにも驚くし、彼らの魔力量にも驚く。


とはいいつつも、学院から、宮廷魔術師を受けないか、推薦するから、と言われたのを断った過去がある僕とロザリーにとっては、ロザリーは別格として、所長以外で僕と同じくらいの魔力量の人に久々に会った、という感覚だ。


部屋の隅にあったテーブルには、魔術師が何かをするときには必ずある、食べ物や飲み物が山積みとなっており、朝食をとってないことを所長が話すと、彼らは僕らがそれらを口にする間に、今回の仕事内容を説明してくれた。


そして、知らされた内容は衝撃的だった。


つい数刻前、陛下が暗殺されたこと。

反魂の陣が発動した形跡があること。

暗殺者が誰か、またその侵入と逃走の経路は不明であること。

陛下の『体』は回復できたが、反魂を阻害する呪いのかかった短刀での犯行であったがために、反魂の術が中途半端となり、陛下の魂が何故か猫の中に入っていること。


のどがからからになり、ちらり、と隣を見ると、ロザリーも顔を青くしている。


まず。

反魂の陣。死んでも生き返らせる陣は伝説のものとされていた。


でも、あったんだ…そして使われているんだ…そして発動したんだ…、さらにいえば、その反魂の術があると分かっていて、それを阻害する術式まであったんだ…という衝撃。


次に。

さっきから場違いな猫がいるな、陛下の猫かな、と思っていたら。


あの猫に陛下の魂が…。


上位爵位持ちとして、陛下には生誕祭のときと新年祭のときにはご挨拶に伺うので、あの陛下が今は猫の体に入ってしまわれている、と思うと震えてしまう。


最後に。

これだけの見事な様々な結界が張り巡らされた寝室に、どうやって結界を壊さずに侵入して脱出できたのか…。


さまざま疑問であっても、とにかく今は陛下の魂を体に戻さなくてはならない。


そこで、僕らが呼ばれた理由が分かった。

宮廷魔術師並みの魔力量を持つ僕と、異常な魔力量を持つロザリーで、これから行う儀式の下支えをしてほしいのだ、と。


これから行われる計画は。


まず、猫と陛下の体を特殊な結界で一緒に包む。

猫の体から抜き出した魂が霧散するのを防ぐためだ。


そして次に、抜き出した魂から、猫の魂をしっかり分離させる。


最後に、陛下の魂のみをそのお体にお戻しする。

余力があれば、猫の体に猫の魂も戻す。


余力があれば、というのは、難しい術の発動の連続となるため、僕らが助っ人に入ってもギリギリかもしれないのだ。


計画を再確認しながら、既に食べていた僕らとともに、宮廷魔術師の皆さんも食べ物や飲み物を口にする。


魔力枯渇ぎりぎりまでの魔術発動の経験のない者達からすると、なんとも緊張感のない姿に見えるかもしれない。


でも、こうして食べておくことは、戦闘においては命にかかわり、こうした大きな術の展開の際にはその成否がかかっているのだ。


魔力量の割に少食と言われてしまう僕は、食べ終わった後に所長から口の中に大きなタフィーを放り込まれた。

甘すぎるそれに、ちょっと涙目になりつつ、配置につく。


僕とロザリーと、二人の宮廷魔術師さんとの四人で、陛下の寝台を取り囲む。

宮廷魔術師さんが発動させる魔術を共同で構築するため、まずは『共用の魔法』の詠唱をする。


魔法には、こうして詠唱をするものもある。

詠唱する魔法は精霊からヒトに伝わった魔法の系統に見られる特徴だ。


ロザリーが得意とする魔法陣をつかうものは、魔術、という言われ方をする。

そして、シンプルなものは魔法といわれるけど、それらを組み合わせて複雑な事象を起こすものは、『術』であり、魔法ではなく魔術となる。

だから僕らは魔法師じゃなく魔術師といわれるのだ。


そんなことはともかく、僕ら四人の魔力がまじりあい、経験したこともないエネルギーとなったことを感じた瞬間に、宮廷魔術師さんの一人が術を発動させた。


僕が作った術ではなかったけど、魂を霧散させないという結界が成功しているのは分かった。

結界の発する独特の圧のようなものを感じる。


僕らがこの結界を保持できる時間は長くない。みるみる魔力が抜けていくのが分かる。


でも、見ている前で、優秀な宮廷魔術師たちは事前の段取り通り、次々と術を成功させていき、最後にキラキラと輝く靄のようなものが陛下の体に吸い込まれ、残っていた靄も猫の体に吸い込まれ…。

全てがうまく行った、のか…?と宮廷魔術師長の顔を見ると、微笑んで頷かれた。


緊張が途切れた瞬間に、僕ら四人は崩れ落ちた。魔力が枯渇したのだ。


本当にギリギリだった。


四人の魔力を全て混ぜ合わせて構築していた陣だったので、四人全員が同じタイミングで魔力が枯渇してしまい、陣の解除もそれによって勝手になされた。


幸い、意識を失うほどではなかったけど、指一本動かせる気がしない。


ロザリーが魔力枯渇で動けなくなった時に介抱をしたけど、あの時ロザリーはまだ話すことは出来た。

でも今の僕らはそれすらも出来なくて、もし魔獣や魔物との戦いでこんなことになってしまったら、死ぬんだなと実感した。


僕の対面にいたロザリーがここからだと見えない。


倒れたときに、とっさに支えに入った魔術師さんは、ロザリーが頭を打ったりしないようにちゃんと支えてくれたんだろうか。


僕を支えてくれているのは所長だった。

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