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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第2章 カミーユのお話
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26国王陛下の驚愕と困惑

国王陛下視点です


余はどうすべきなのか。


国王であるはずの自分が、目覚めてみると、違う体になってしまっていた。


なんと…猫である。


目覚めたときに、后の部屋であることはわかった。

だが、后の寝台の上でもなく、どういうことか、と辺りを見回すと、クッションの敷き詰められた籠の中にいた。

そして体に違和感を感じ、見てみると、グレーの毛並みも美しい体…后の猫であったのだ。


おどろいて上げた声も、猫の鳴き声であった。


后の猫であるために、この猫は宮のなかで立ち入りを禁止されているところはない。


后がまだ寝ていることを確認したあと、自分の部屋へ向かってみた。

ドアの前でちらり、と侍女を見上げれば、す、っとドアは開けてもらえたし、自らの寝室へはすんなり入ることが出来た。


果たして、寝台には王が横たわっていた。


しかし、その体には短剣が突き刺さり、心臓が一突きされているのは一目瞭然だった。


驚きのあまりにあげた猫の叫び声。


猫のものとしても尋常ではないその声に、扉の前にいた護衛達が、部屋に踏み込んできて、そして猫ではなく、ベッドに横たわる彼らの主君の姿に驚愕をする。


叫び声と悲鳴、走り回る人々の足音。


常駐の医師と魔術師が駆け付け、余の体を調べているのを、猫の姿で眺める。


同じ寝台に上がっている猫を追い払いたいのだろうが、后の猫であるためにできないようだ。

猫になど煩わされている場合ではないのに、と言わんばかりに舌打ちをされる。


医師と魔術師はひそひそと盛んに話し合っては、おかしい、いや、でも、と繰りかえす。


やがて話し合いがついたようで、医師が胸の短剣を抜くと同時に、魔術師が治療の回復魔法をかけた。


死体に…?

死んだ者には、もはや回復魔法は効かない。

しかし、胸の刺し傷は着実にふさがっていった。


猫とはいえ、余がここにいるから、なのだろうか。

そして、死んでいないとして、どうすれば元に戻るというのか…。


すぐに箝口令がしかれ、当直ではなかった宮廷魔術師たちも続々と駆け付ける。

そうこうしているうちに夜が明けた。


最初は魔術師たちの話を聞いていたのだが、そのうち、それが『言葉』ではなく『音』としてしか聞こえてこなくなるようになってきて、慌てた。


集中を欠くと、人の言葉がわからなくなる。

このまま、頭の中も猫になるのでは、とぞっとする。


傷が完璧に治ったことを確認した魔術師たちは、余の体に何かを施し、するとうっすらとした光がピクリとも動かない余の体からにじみ出て、その光が霧のように揺らいだ後、猫の体の余の周りをたゆたった。


すると、一瞬皆驚いた顔をしたものの、宮廷魔術師長が恭しく「陛下でいらっしゃいますか」と猫の姿の余に頭を下げてきた。


「にゃ」

うむ、と頷いたつもりだったがやはり猫の声であった。


それまでも邪険にはされないまでも、何故に后の猫が王に付き添うのか、と不思議に思われていたようで、真実が分かると皆納得したようだ。


すぐに文字のボードが用意され、簡単な質問には、はい、や、いいえの文字を猫の手で押さえることで意思表示をし、それ以外では文字を一文字ずつ押さえていくことで言葉を示した。


余自身に何が起こったかの記憶もなく、眠って目覚めたら猫の体であったことが伝えられただけではあったが、彼らの話から、刺された直後に猫として目覚めたらしいこと、刺されてから発見されるまでは短時間であり、回復魔法をかけるまでもそんなに時間がかからなかったので、『死体であった』時間は短く、体へのダメージはそうないだろう、という予測を伝えられた。


余の体は今は呼吸もしており、ただ眠っているだけに見える。


その脇で、様々な術の行使ののち、魔術師たちがまた話し合い、魔力の強い魔術師を数名追加してほしい、という話になった。


優秀な彼らが『必要だ』というのであるならば、と許可すると、余の側近たちが直ぐに動いた。


后や宰相をはじめ、関係各所に、『陛下は夜中に体調を崩し、医師と魔術師で対応をしたが、本日よりしばらくは公務は休み、医師と魔術師の許した者のみが面会を許される』、と正式に発表された。


とはいえ、それらが国民や一般貴族らに伝わることもない。

公務を果たさない理由としての公式発表にすぎない。

『弱い王』は国を揺るがす。


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