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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第2章 カミーユのお話
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24夢


久しぶりの帰宅に、いつもよりちょっとだけ豪華なメニューが並んだ夕食をとり、入浴を済ませて、念願の自分のベッドにもぐりこむ。


数カ月ぶりの自分のベッドの寝心地に、ふう、とため息をつく。


幼い頃、警報機能を備えたぬいぐるみのクマと寝るように言われていて、怖い思いをするたびにそのクマの警報機能で何度も救われた。

そのせいか、クマのぬいぐるみを抱き込まないと眠れない癖がついていた。

安心できないのだ。


さすがに学院の寮に入るときにはクマはないだろう、ということで、それは抱き枕となった。


今も警報機能付きの抱き枕を抱えないとなかなか眠りに落ちることが出来ない。が、かなり大きい抱き枕は、遠征の時などに持っていく物ではない。


ようやく、安心できる者だけがいる家で、いつものように眠れる。


しかも明日はまだ休みだ。日が高くなるまで寝てやる。

昼まで寝ちゃったと良く言っているロザリーのように。




「ねえ、カミーユ…」

いつもの聞きなれた声に目を開けると、ロザリーがいた。


寝ている僕の上で、僕の体の脇に両手と両膝をついて、まるで僕を逃がさないとでもいうように覆いかぶさっている。


「え…?なに…?」

慌てて起き上がろうとしても、体が動かない。


柔らかな茶色い髪が、ロザリーの肩から滑り落ち、横たわる僕の顔にかかる。

くすぐったいのに、体が動かなくて、髪を払いのけられない。


「カミーユって誰かを好きになったことがあるの?」

「ええ?家族とか…ブノアとかフレディは好きだけど」

「ふふ、じゃあ侍従や執事と結婚するつもり?」

「は?」

「ねえ…誰が好きなの?」

「ええ?」


これは誰だ?


ロザリーがこんなことを言ったりしたりするなんておかしい。


じっとその茶色い目と目を合わせる。

そんなことをしてもなんともない人間は、ほんとうにごくわずかしかいない。みんなすぐに目を逸らしてくるから。

でも、いつものようにじっと見つめ返してくる。


出会った頃は肩位までの髪をおろしていたものだったけど、長く伸びてからは腰まである髪を首の後ろで一括りにしているのに、今はその髪もおろしている。


「誰が好きなの?」


訳の分からない状況なのに、今にも触れてしまいそうな距離の体に、顔に、ドキドキしてしまう。

顔が熱い。


「知りたいのに…」


そう言って顔を近づけてきて、頬に頬が触れる。


「…!」


もうドキドキのあまりに、冷静でいられない。

体が熱い。

下腹部の辺りがむずむずして変な感じがする。

ああ、まずい、これは、この反応はダメだ。男にしか起こらないこの現象をロザリーに知られるわけにはいかない。



それにしても、どうして体が動かないんだ?

働かない頭で、必死に考える。


ロザリーは頬だけでなく、全身を体にぴったりとくっつけてきた。


…これは、絶対にロザリーじゃない。


確信をもってもう一度現状をみれば、ぴったりと寄り添うロザリーからは、いつもの彼女の甘い匂いがしてきていなかった。


「お前は何者だ!」


動揺から転じての怒りは、そのエネルギーも大きい。


ロザリーに対しては向けたこともない怒りを、術とも呼べないほどつたないエネルギーの塊としてぶつけると、抱きついていた『ロザリー』の体が霧散し、体が動くようになった。


と同時に、目が覚めたことに気が付いた。


荒い息をつきながら体を起こすと、そこはちゃんと自宅のベッドで、全身汗びっしょりになっていた。


「夢魔、だな…」


幸い、倒せないまでもはじき返すことが出来たが、もし自分があの『ロザリー』を拒否しなければ、どうなっていたか。

ぞっとすると同時に恥ずかしい。


せっかく久しぶりの自宅で、ぐっすり眠るはずだったのに、腹立たしい。

時計は日付が変わっていて、夜明けまではまだ間がある真夜中。


汗でべったり張り付く寝衣が気持ち悪いので、湯を使ってから着替えよう、と立ち上がろうとして。


僕の体の『反応』が残ってしまっていることに気がついて、うろたえた。

ズキズキと痛みに似た感覚さえ覚えるソレにとまどう。

前回、こんな風になったときは時間とともにおさまったのに。


そっと寝衣をまくって、自分の体の変化を目の当たりにしてぎょっとする。


知識として、これが正常なことは知っているけど、この歳まで反応を示したことのない自分の体は異常があるのだと思っていた。

他にも異常がある自分のことであったし。


ふと、学院生時代に、ブノアが僕の枕もとに女性の裸体の絵姿や男女が絡み合っている絵を置いていくので、何の嫌がらせか、と投げつけ返したものだったことを思い出した。


今、ようやくあの絵姿の用途に初めて気が付いたのだった。


ブノアの心配を思うと心が痛みますね

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