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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第2章 カミーユのお話
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19カミーユとピアス


入所式の前日、シャルル君の顔を見に行ったあと、また公園で本を読んでいた僕らのもとに、手紙鳥が飛んできた。


綺麗な白い鳥で、見覚えがなかったけど、近くに寄ってくるとクロード所長の魔力を感じたので、受け取ることにした。


鳥が手紙の姿に戻ったところで、差出人をみると、間違いなくクロード・バルドーと所長の名が記されており、読んでみると、今日のうちに研究所に顔を出せ、時間は取らせない、といった内容だった。


僕らは昼食もまだだったので、研究所の安い食堂で食べることにしよう、と、2人で研究所に向かった。


よばれていたのは僕だったのだけど、所長はロザリーが一緒でも普通に受け入れてくれて、すぐにいつもの所長室に連れていかれた。


そこで見せられたのは、銀色に光るピアスだった。

球状で、そんなに大きくはない。小さめの真珠くらいだ。

でも、ただのピアスではないだろうことは、その表面にびっしりと細かく刻まれた古代文字から明らかだった。


「え、何ですか、これ」

なんだかものすごく嫌な予感がする。


「前に話した、『何とかする』モノだ。思ったより開発に時間がかかってしまったがな」


「あー、魅力減退魔法の魔道具化したもの、なんですね」

ロザリーはこれを見ただけで、何なのか分かるのか…。


「え?わかんないよ?話の流れでそう思っただけ」

あれ?口に出してた?と思ったら、「どれだけの付き合いだと思ってるの?顔見たらわかるよ」と笑われた。


「ピアスですか…」


僕は耳にピアスの穴はあけていなかった。なんとなく怖かったし、アクセサリーをつけて、より目立つなんて考えたこともなかった。


試しに片方を手に取って、もしつけたとしたらこんな感じか、と耳元にあてて、所長が用意してくれていた鏡をのぞいた。


ケースに入っているときより、お洒落な感じがする。意外と悪くないかも。僕に似合ってる。

そう思って顔をあげたら、所長とロザリーが渋い顔をして僕を見た。


「所長、これ、ダメだと思います」

「そうだな、私もそう思った」


「え?何がダメ?」

結構似合うと思ったのに…やっぱり僕の審美眼はおかしいのだろうか。


「あのさ、魅力を下げさせようというアイテムなのに、魔道具としてじゃなくて普通のアクセサリーとして似合ってて、魅力アップさせてたら意味ないでしょう?魔道具としての働きが半減しちゃうじゃないの」


あ、ああ、なるほど。

良かった、似合ってるのは間違いじゃなかった。


ちょっと明後日な安心をしていたら、所長にいきなり片手で肩をむんずと捕まれて、反対の手で上着をめくられて、お腹を見られた。


「ぎゃあ!何するんですか!」


「ふむ。ピアスは普通耳が定番だが。それ以外にどういうところにつけるかというと、瞼、鼻、唇、舌あたりがあるな」


「でもそれだと全部、耳同様に見えちゃいますよね」


「えええっ、見える見えない以前に全部嫌ですよ、怖い!」


「あとは、まあ、へそ、それから性器あたりだな。他にもあるかもしれないが」


「ひっ」


「所長、カミーユが本気で怯えています。私も初耳ですが、さすがに性器はドン引きます」


「だろ?となると、必然的にへそなんだよね。これだと滅多なことでは人に気付かれないし、むしろ耳よりいい」


「ええ?おへそになんてどうやってつけるんですか?想像がつかなくて怖いんですけど!」


僕が本能的に恐怖を感じてじりじりと後ろに下がっていくと、所長とロザリーがその分詰めよってくる。


「うん、私もどうやってつけるのか知らないけど、おへそしかないってことはよーくわかったよ。カミーユの綺麗な顔に傷つけるの、私も嫌だし」


「まず、消毒をして、この針でぷすってやって、そこにピアスを通して、反対側に留め具をつけて、だな…」


身振り手振り付きで所長が段取りを説明してくれる中、僕は冷や汗をかきながら必死に逃げることを考えていた。

でも、後ろはもう壁だし、前はロザリーと所長が立ちふさがっている。


この建物内は転移魔法は効かないから、この二人を倒さないと逃げられない。


その前に、まず所長は未知数にしても、僕はロザリーと戦って勝てないことを知っている!


既に詰んでいるのか!?


青くなって呆然としていると、「逃げようとしても無駄よ」まるで悪党のようなセリフを吐いて、ロザリーがにやり、と笑ったのを見た後、意識が刈り取られた。


おそらくロザリーの眠り魔法だったのだろう。目が覚めたら、僕のおへそには二つのピアスがついていた。血も出てなかったし、痛くもなかった。


「あ、起きた?所長さんはいったん仕事に戻ったよ。カミーユをソファに運んだ時に、軽すぎるって文句言ってたから、もう少し食べた方が良いかもね。で、そのピアス、つけっぱなしにするのが前提だそうだから。癒着しないとか、傷が化膿しないとか色々付与してあるって!良かったね!」


…良かったのか。


ぷす、を誰がやったのか、とかは訊かないことにした。

これ以上は僕の心がもたない。


うなだれながら、お腹すいたよ!と騒ぐロザリーと共に食堂に向かい、落ち合った所長にご飯をご馳走してもらった。

ご馳走してもらって申し訳ないなあ、なんてこれっぽっちも思わずに、一番高いやつにデザートまでつけて食べてやった。



そして、その次の日の入所式。


おそるおそる、いつもかけていた魔法はかけずにいたというのに、あの試験の日のように、ぽぉっとされることも、どこかに連れて行かれそうになることもなかった。


学院で、魅力減退魔法を初めて使った時と同じくらいの感動を覚えた。


魔法のときよりも効果が高いらしく、みんなが僕ではなく、一緒にいるロザリーにばかり視線を向けている。

でも、それはそれで…ロザリーが見られていることになんとなくもやっとしたけど、人並みどころか人々に埋没した生活が送れる、と嬉しくて涙が出そうだった。


魔術研究所に入所してみると、同期の新人は自分たちを入れて6人。

5人が同級生で、一人が一つ年上の昨年の卒業生だった。


研修生として既に働いていた僕とロザリーにはもう分かっているようなことも多かったけど、最初の数日は職場内の施設の説明や、専門用語の学習などを一緒に受けることになった。


同期との絆をつくるために、ここはあえて一緒に受けさせる、と事前に言われていたので、その数日はのんびり過ごした。


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