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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第2章 カミーユのお話
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14魔術学院~第5学年 就職試験


前期の期末試験は、次年度の奨学生の判断はもう関係がないし、数年ぶりに体調も万全、今度こそ一番をとる!と気合十分で挑んだのに。

万全だと思った体調は勘違いだったのか…風邪で高熱を出し、校医に学舎でテストを受けることを禁止されて、職員の監視のもとで寮のベッドで試験を受ける羽目になり…。

高熱で朦朧としていて、満点を逃した。


後日出た結果は当然のごとくの2番だった。本当に悔しかった。


そして、そのテスト明け休暇の間に、就職試験が行われた。


慣例で、来春採用者の試験はどこでもこのテスト休暇中にやるのだ。


なので、騎士団の入団試験と魔術師庁の両方を受ける、などということは出来ず、皆希望先は一か所に絞ることになる。

万が一第一志望に落ちたとしても、二次募集が出ることもあるし、欠員募集などが出ることもある。とはいえ、一発で決める方がいいに決まっている。


大事な試験だ。


僕は熱はなんとか下がってはいたけど、高熱で寝込んだ直後の体力のおちた状態で試験に臨まなくてはならなくなり、実技の試験もあったために、魔力温存のために例の魅力を下げる魔法をかけずに試験に挑んだ。


魔術研究所までは、ロザリーと一緒に乗合馬車を貸し切って行ったし、ブノアとロザリー以外の他の人に会わなかったので、本当にうっかりしてしまっていた。


魔法をかけていないとどうなるのか、を、たった一年半で忘れてしまっていたのだ。


受付で、ぽーっと見つめられて、はっ、としたときには遅かった。

試験会場へ案内する係員の様子がおかしくて、途中でふり切って逃げ出し、さっきロザリーを案内してた人が曲がっていった方へ走っていくと、その先にあったのがちゃんと試験会場だった。


じゃあ自分が連れて行かれそうになったのは、一体どこだったのか…考えるのも恐ろしい。


試験担当らしい職員さんたちの中には『大丈夫』な人がかなり多くいてくれたのは幸いだった。

筆記試験の間は何事もなく済み、その後面接まで待機の間は、ロザリーにぴったりくっついていた。


その場にいたほとんどが級友たちだったのだけど、半減させていない僕と対峙するのは彼らも一年半ぶりなわけで、普通に話をできていた彼らが、以前のように遠巻きに熱い視線を寄越す。


久しぶりで恐怖を感じていると、魔術研究所の所長だという男性が来て、別室に連れていかれ、僕とロザリーだけは所長と面接をし、実技試験も所長のもとで行った。


試験が全て終了した、と聞いて、魔力が残ったのが分かり、すぐさま魅力減退気配遮断の一般人偽装魔法をかけたのを見た所長さんが、ほう、と実技試験の時より目を輝かせていた。


昼頃には帰っていい、と言われて僕らは帰ったけど、後日クラスメイトから聞いた話だと、みんなは昼食をはさみ、夕方まで色々な試験をうけたのだそうだった。


でも、あの特別扱いは、きっと悪い意味じゃないだろう、そう思っていたら案の定で、三日後くらいには僕とロザリーには採用通知がきた。

他のみんなに通期が来たのは半月後だったのに。



家を継ぐ者や、就職が決まった者たちはまた普段の学生生活に戻り、みんなは残り少なくなった気楽な身分を謳歌した。


最終学年の後期は、就職先が決まるまでは就職活動と、それまでに取得できなかった単位のある学生にとっての単位取得にあてられているようなもので、僕とロザリーは3年のときから取得できる限界まで授業をとっていたため、取得できる授業がもうほとんどなくなってしまっていた。


ごく稀にそういう学生が出ることがあり、それが家を継ぐ予定の者は卒業式まで家に帰ったりするのだそうだけど、僕らは研修生として、魔術研究所で働くことになった。

そして、僕が学院の寮から通うことにしたら、ロザリーも実家に帰らず、寮から通うことになった。


普段空き家にしていた僕の実家のオスマン家のタウンハウスに使用人をおいて、馬車を用意してもらい、僕とロザリーの学院の寮と魔術研究所の通勤に使った。

僕の侍従のブノアも、僕がいない間はタウンハウスで過ごすこともあるようだった。



研修生として働く初日に、既に面識のある所長と、数人の偉い人たちと会議室で話をした。


色々質問されて答えていくだけだったのだけど、研究所で何がしたいかという、本来就職試験の時に訊かれるべきだった質問に、ロザリーは「魔物とか魔獣が出たら倒して、みんなの生活を守りたいです!そのために強くなる研究とか鍛錬とかもしたいです」と隣で目を輝かせて答えた。


うん、学院では本気を出すと実習場を壊しちゃうから、思いっきり無双してみたいんだよね?そんなことだろうと思った。


僕が若干のジト目で横を見ていると、偉い人たちも、苦笑いをしていた。

だって小柄な少女が魔物狩りをしたい、って拳を握っているって…まあそういうギャップがいい、っていう趣味の人もいそうだけど。


「僕は、自分に生まれつきのコンプレックスがあって、それに、そのことで生まれてからずっと、自分も苦労したし、周りの人に迷惑をかけてきたんです。それが、新しい魔法によって、人生がガラリと変わりました。だから、新しい術の開発に携わりたいと思っています」

「それなら塔の方が良かったんじゃないのかね?」

「いえ、あそこは魔術の根幹の研究はしますし、新たな発見があったときには驚くほどの効果があるものですが…私は救われた私のように、一人ひとりの悩みや困りごとに応じたものを作りたいのです」


「ふむ」


所長さんが頷くと、所長さんと偉い人たちが何か話を始めたのだけど、こちらに一切聞こえてこない。

授業で習って実技でもやったことはあったけど、働くようになれば防音魔法をこんな風に使うのか、とロザリーとひそひそ言い合った。


学院内は、実習場以外で魔法を使ったことがバレると、ペナルティを受けるのだ。僕の僕自身にかけている魅力減退魔法のような特例を除いて。


「そうだ、カミーユ君、今自分にかけている魔法を一回解除してくれるかな?」

「?…はいわかりました」


言われてすぐに解除すると、お偉いさん達が眉を顰める。


「うん、ありがとう。もうかけていいよ」


毎日かけているので、今では寝ぼけていても高熱でも発動させることが出来る。眠ってしまうと解除されてしまうところが難点だ。

すぐにかけ直すと、ほう、というように眉を上げて僕を見るお偉いさん達。


また防音でひそひそはじめられたけど、自分たちの親世代より上の人達すら混じっている彼らが、目の前で密談していても、別に何とも思わない。


僕らが特別過ぎて、扱いに困ることは想像がつくし。


「カミーユと同じところに就職することになるなんて、本当に私達って腐れ縁だよねー」


「だって、ずっと興味の対象とか似通ってたのに、仕事に求めるものが違うとか、むしろそっちの方がおかしいよ」


「まあ、そうだよねぇ。もし限界を超えて授業とらせてくれるって言われても、私、『薬草毒草概論』までは取ったけど『魔法植物論』までは突っ込みたくなかったし。大抵の女子がとるものだけど、って言われた『魔法と食物論』も無理」


「ああ、食物論は僕は少し迷ったんだけどね。あれってほとんど調理実習だって聞いて、やめたんだ。あと、男子学生はほんの数人しかいないっていうところも避けた理由だけど」


魔法を使って、魅力を人並みに偽装していても、長期にわたって話をする間柄が続くと、相手から告白されたり、付き合ってくれだのという流れになるのだ。


ロザリーが絶対取らないであろう授業で、そんな敵しかいないようなところに突っ込むほど馬鹿じゃない。


「へえーカミーユって料理に興味あるんだ?」


「うん、特別室だったからね。体調悪いときとか大食堂まで行かないで、部屋のキッチンでブノアが料理したものを食べてたから。で、食物論って結局女子のための料理教室なんだって」


「あー魔力を使い過ぎて弱ったところで、美味しいものを食べさせてもらえば、その美味しいものをくれた女の子によろめきそうだもんねぇ。昔から男捕まえるには胃袋をつかめって言うし」


「へーロザリーもそんな言葉知ってたんだ」


「なによう、まあ、お姉様が言ってただけだけど」


2人で同時にはっと顔を上げる。

お偉いさん達が防音結界を解除して、こちらを見ているのに気が付いたからだ。


「あー、コホン。待たせたようですまないね。学校からの身上書でも、君たちが親しい関係であるとは聞いていたからね」


「「?」」


2人で首を傾げる。確かに僕らは友人同士だ。何が言いたいのだろう。


「ここでの配属先はいくつもあるのだが、研修中は私の直属で雑用をこなしてもらうことにした。春に他の新人とともに改めて研修を受けて、その後に配属先を決める方が悪目立ちもしないだろうからな。というわけで、今日からよろしく頼む」


所長さんににこり、と微笑まれ、僕らは座ったままでの貴族の礼をした。


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