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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第1章 ロザリーのお話
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ご飯の後、帰ってきたばかりのカミーユに、親に元気な顔を見せるべきではないのか、とか色々諭してやっても無視されて、代わりに何通かの手紙は飛ばしてたみたいだけど…とりあえず、洗濯をすることになった。


すみません、ため込んでて。


「2カ月でこんなに家って荒れるんだね」


「うん、だから私は嫁にはなれないって。無理無理」


「え?さっき、いいって言ったじゃないか。それに、僕はメイドも料理人も執事も雇えるから、ロザリーは結婚しても家事はしなくていいと思うけど」


「へ?あ、そっかぁ!」


「じゃあいいよね?」


「え?あぶなっ!いや、なんかそんな家事しなくていいからとかが理由で結婚、って頭悪すぎ!だったらカミーユじゃなくたって他の貴族のお宅でもそうなんじゃない?」


「…じゃあ誰とだったら結婚するの?…例えばジョルジュ先輩とか…?」


「ほえ?先輩?んー?びっくりするくらいいい人だよね!確かに大事にしてくれそうかも!」


急にカミーユから冷気が漏れて、洗濯していた水が冷える。


「ちょ、水冷たくしないでよ、私は、結婚しないつもりだったから、誰のこともそういう目で見たことないから急に言われてもねぇ」


「だったら今すぐ、僕をそういう目で見ることにしてよ」


石鹸をつけてごしごし洗っている私の隣で、カミーユが綺麗な水ですすいでは、ぎゅうっと絞ってかごに入れていく。


以前からの流れ作業。

2カ月も離れてたのに、まるで当たり前のように自然にこなされる家事。


「あ、そうだった」


カミーユが突然隣で服を脱ぎ始めてぎょっとする。

すると、肌着は私が隙間なく刺繍を施した、あの肌着だった。


「これ、浄化かかってたけど一応洗っておかない?」


「…もしかして帰ってくるまで脱ぐなって言ったのを今まで守ってたの?」


「え?そうだけど?」


広げてみると、いろんな陣が光を失っていた。

それだけのことが隣にいる人物に降りかかっていたのだと思うと、…思わずぶるっと身震いをしてしまった。


「そういや防寒の陣には助けられたなあ…みんなが寒くて寝られなかったっていうときにも、僕は寝られたしね」


「少しでも役に立ったんなら良かったよ」


辛かったであろう二カ月の間のことをこともなげに口にするのを聞きながら、思わずうるっと涙が滲んでしまった。


「なに?なんで泣くの?」


「だって、辛かったんだろうなって。あれだけ念入りに刺した防刃の陣なんて一つも残ってない。それだけの攻撃を受けたってことでしょ」


「あーなんか自分の未熟さをさらけ出すようで恥ずかしい」


「だってダンジョンに潜るの初めてだったのに、超上級レベルダンジョンだったんだよ?本当に生きて帰ってきてくれたのが不思議なくらい…」


「うん、役割がはっきりしてたし、僕以外は一流の人達ばっかりだったからね。でもね、死ななかったのは、ロザリーのおかげ。どんなことがあっても絶対にロザリーのところに帰るんだって気持ちがあったし、背中の『無事に帰ってきて』の言葉がその気持ちをずっと後押ししてくれた。僕が愛を乞う前に、僕は君の愛に守られていたんだよ。ね、だから結婚して」


「う…」


「う、じゃない、うん、でしょ」


「うん…」


「今度こそ、本当だよね?ロザリー?」


私の手は石鹸の泡まみれで、カミーユは上半身裸で。

二人で踏み台みたいな低い作業椅子に並んで腰かけて、浴室で洗濯しながらって…ロマンチックさのかけらもないんだけど。


でも、ついほだされて、うん、と言ってしまった私の顔を両手で挟んで自分の方にむけたカミーユの目と目が合うと。


その緑の目は見たことがないくらいに、とろりと甘い光を宿していて、その見たことのない表情にビックリしている間に、またしてもキスされた。


…やっぱり偽物だろう!ダンジョンで亡霊かなんかと中身が入れ替わってるんじゃない?


そう断言したくなるほどに、またしても油断した隙に口の中にカミーユの舌が入ってきて、口の中を舐められた。

嫌じゃないんだけど、息が出来ないし、なんか変な感じがするから、やっぱり、やだ。


泡のついた手だったけど、やめて、と肩や胸を叩いて、ようやく離してくれた時は、朝の時みたいにまたくったりしてしまった。


「これ、なんか変になるから、やだ…」


もうしないで、のつもりで言ったのに、がばっと上半身を抱え込まれて、身動きもとれなくされて、また口の中を念入りに舐められた。


なんでこんなことするの?

いや、そこはくすぐったいから舐めないで!


息も絶え絶えになったところでまた離してくれた時には、涙目になってはあはあと肩で息をして、「やだって言ってるのに…」と恨み言をいいつつ、またくったりとよりかかってしまった。

体に力が入らないのだ。


もしや、なにかの術なのか…?


「つ…辛い…」


カミーユは、なんでかほんとに辛そうな顔で、寄りかかっている私の体をぎゅっとした。


「洗濯は私がしておくから、カミーユは休んだ方が良いんじゃない?疲れてるでしょ?夕べは寝られたの?」


実はいつものようにカミーユも同じベッドで寝ていたことを、眠っていた私は気付かなかったと後で知ったんだけど。


「うん、夕べはあまり寝られなかったんだ…」


「じゃあほんとにここはいいから、ベッドに行きなよ」


「…いや、洗濯終わらせてからにする」


「本当に大丈夫?」


「うん。…ね、今、僕と結婚してくれるって、はっきり承諾してくれたよね?」


「そ、そうかな?」


「なんで疑問形?もう、僕泣くよ?」


「あーわかったってば。絶対にいい奥さんにはならないと思うけど。カミーユがどうしてもっていうなら…。あとで後悔しても知らないよ?そのときになって文句言わないでよね?」


「もちろん!文句なんて言わないよ!」


そして、また私を包み込んでた腕にぎゅっと力をこめて、抱きしめてくれたのだった。



洗濯物を干し終えたカミーユは、昼寝をしたりせずに、また何通か手紙を飛ばしていた。


掃除も終わって、お昼ご飯をカミーユが作ってくれて、それを食べ終わったころ、窓の外にお父様の手紙鳥がいるのに気が付いて、窓を開け、手紙を受け取った。


今日の夕食をカミーユと二人で食べにおいで、という内容で、カミーユが帰ってきてることをなんでもう知ってるんだろう、と首を傾げたら、僕が知らせたから、と隣でカミーユがドヤって顔をしている。


とりあえず、夕方には向かうことを返事としてしたためて、飛ばす。


そうこうしていたら、見慣れない手紙鳥がまた飛んできて、カミーユ宛で。


朝から何度か手紙を飛ばしていたカミーユだったから、その返事が来ているんだろう。

手紙を読んだカミーユが、またなにやら返事を書き始めたようだったので、私は本を読むことにした。


前にも感じたよね、ペンを走らせる音と、私がページをめくる音しかしない、静かな午後。

すっごい落ち着く。一人で、静かなのとは全く違うの。


実家に向かうまでに、多分五通くらいの手紙を書いていたんじゃないかな?

まあ、二カ月ダンジョンにこもっていたんだから、連絡しなくちゃいけない先はいっぱいあるよね!


次話で、ロザリー編は終了です。

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