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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第1章 ロザリーのお話
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あの淫魔討伐のあと数日、口数が少なめになっていたカミーユだったけど、大人だし、なんとか自分で立ち直ったようだった。


何しろ私もどう慰めていいか分からなくて、特別任務後の二日間の休暇は、カミーユと共に私の実家で過ごした。

弱っているカミーユにご飯作ってもらうのも気が引けたし、大勢で過ごす方が、気がまぎれるかと思って。


お姉様に頼んでシャルルと遊びに来てもらって、カミーユとシャルルを遊ばせようとしたんだけど…。


天使と遊べば気分も晴れるかな、と思ったのに、ベッドの上に胡坐をかいて座り、膝にシャルルを座らせて、ゆらゆら揺れて午後を過ごしたりして。

シャルルにとってはゆりかごみたいなものだから、気持ちよさそうに寝ていたけど、はたから見ると、カミーユさん魂抜けてるな、という状況。


私にはどうにもできませんわ、と匙を投げて、隣で私も昼寝をしてやった。


そんな私たち三人の様子を見つけたお姉様は、「抱いている子供が間違っているわ」という謎発言をして盛大なため息をついていたけど。

謎発言でせっかく気持ちよく寝ていたのに起こさないでほしかったわ。


休暇も終わるので、私の家に戻った私達だったけど、寝る前にカミーユが「そうだ、そうだよ…」とか、ぶつぶつ言っていたのが気持ち悪くて、気が付かないふりをして、先に寝てあげた。



それからは私達への討伐依頼はなくて、落ち着いた日々が続いていた。


研究所に出勤しては、書類仕事や雑用をこなす。


すっかり夏になっていた。


今日も一緒に出勤して、隣同士の席について、いつものように仕事を始めようとした私達だったんだけど、カミーユが珍しく所長に呼ばれて、別室の所長室にまでご丁寧に移動してて。


何を怒られてるんだろ、あとで聞こう、とニヤニヤ悪い顔をしながら、こないだ私が発案した魔法陣を紙に書き記していたら、私はジョルジュ先輩に呼ばれてしまった。

しかも私まで別室の会議室へご案内だった。


私、何かやらかしたっけ?思い当たるようなことがあるか、必死に考える。


「あのー、なんでしょうか…」


ビクビクと、憲兵に出頭する犯罪者の気持ちでジョルジュ先輩と会議室に入ると、以前泣きそうになりながら解読した、暗殺者集団の邪神の経典の暗号表が机に乗っていて、もしや今頃になって不備でも見つかったのか、と冷や汗をかく。


「ああ、なんでそんなに怯えてるの?あの時の要人会談も、あの邪神の経典の解読が間に合ったから、ものすごい成果を上げることが出来て、君たちも臨時ボーナス貰ったでしょ?」


確かに、きつい仕事だったけど、ご褒美ももらえた。

私がパーッと使おうとしたら、貯金しなさいってカミーユに叱られたので、金庫の中だけど。


「詳しいことはカミーユが戻ってから話すけど、ようやく邪神の神殿の場所が分かってね。で、精鋭を選りすぐってそこを叩くことになったんだけど…」


「僕が行きますよ」


後ろからカミーユの声がして、もう戻ってきたんだ、とびっくりした。なんだ、叱られたんじゃないのね。いつの間に会議室に来てたんだ?


「うん、まあそれでもいいんだけど…とりあえずカミーユも座って」

カミーユが私の隣に座ったのを確認すると、先輩が改めて説明を始めた。


「以前二人に訳してもらった邪神の経典があるだろう?あれによって、推測でしかなかった、邪神から暗殺者集団は特異な能力を得ているのは間違いない、と確認されたのは知っているよね?それで、彼らがその能力を使えないように、神殿を叩いて彼らと邪神とのつながりを絶つことになったんだけど…その神殿っていうのがね、ダンジョンの奥にあるんだ」


「…うわあ、厄介…」


「で、しかもトラップ系ダンジョンなんだ。既に攻略は始まっているんだけど、攻略に必要な謎解きの文章やヒントが、例の文字や暗号で書かれているんだ。暗号表を持っていってはいるんだけど、見ただけで読みくだせるほど、この文字と暗号に通じている者は、まだ君たちしかいない」


「なるほど、暗号表を確認しながら解読するような時間も与えられずに発動するトラップが多いということなんですね、で、僕かロザリーを解読係として連れていきたい、と」


「そう。で、出来るだけ少人数の方が攻略しやすいタイプのダンジョンだから、人数を増やしたくないので、どちらか一人だけ、ということなんだ」


私達はまだ、ダンジョンに潜ったことはなくて、野良の魔獣とか、ダンジョンからあふれた魔物の討伐しかしていない。

でも知識としては知っている。


トラップ系、つまり罠だらけのダンジョンは、罠察知と解除の能力のある者の指示通り、足を下ろすタイル一つにすら気を使って進まなくてはならない、一時も気を緩めることが出来ないダンジョンだ。


人数が多ければ、罠にかかる危険が高くなるし、中にはご丁寧にメンバーをダンジョン内に散り散りにさせるトラップもある。

一人になっても生き抜けるだけの力量のある者しか足を踏み入れるべきではないところなのだ。


「あ、私が行きます」

「僕が行くってさっき言ったけど?」


カミーユが怖い目で私を睨む。


「え、だって私ゆくゆくはドラゴンキラーになることを目指しているし。すっごくいろんな経験できそうじゃないですか」


「それで死んだら元も子もないだろ。先輩、僕でいいですよね」


「ああ、確かに攻撃力でみれば断然ロザリーだけど、その、君は結構うっかり、だし、回復も苦手だろう?トラップにかかって一人で飛ばされた先が深層だったとき、生き残れる可能性はカミーユの方が上だと僕も思う」


「うっかり、じゃなくて、ガサツ、ってちゃんと言っていいんですよ、先輩」


むう、カミーユなんでこんなに機嫌悪いのよ、悪口言わないで。

思わず口を尖らせたけど、先輩の見立てにぐうの音も出なかった。


私はいつも回復役にいてもらってこそ、大暴れできるのだ。

一人でダンジョンの深層に飛ばされて、強敵ばっかりにエンカウントし続けたら、何度目かの戦闘で死ぬな、確かに。

こっちがダメージを受ける前にやっつけられるなら話は別だけど、私はまだそこまでの強さがないことは分かってる。あと5年たってからだったら私で大丈夫だったのに…。


カミーユは私ほどの強大な魔力を持っているわけではないけど、魔術師の中では多い方ではあるし、攻撃系も防御系も補助系も回復系も、満遍なく使える、お利口さんなのだ。


「はあ、これも適材適所、かあ…残念!もっと鍛えなくちゃ」


私が諦めたのが分かって、なんでかカミーユがホッとした顔をした。


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