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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第1章 ロザリーのお話
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その夜、私達は依頼主である伯爵家の、そこのお嬢様の寝室の隣の部屋にこもって、聞き耳を立てていた。


みんな黙りこくって、それぞれに視線も合わせないようにしてたりする。

なんか、ものすごーく気まずいのだ。


なんと、お嬢さんは私と同じ歳。つまりは、学院で私やカミーユと机を並べた仲間だったのだ。


ご両親から日中のうちに聞き取りをして、庭でお茶をする彼女を気付かれないように遠くから見て、とり憑かれているのに間違いがないことを確認、私達は客間で仮眠をとらせてもらっていた。


彼女は、私達が屋敷に来ていることなんて気がついてもいない。


そこまで仲の良い子ではなかったけど、顔を合わせれば雑談をする程度には顔見知り。

あー、いたたまれない。


所長も先輩も、現地入りしてから私とカミーユが被害者と同学年であったことに気が付いたらしくて顔をしかめていた。

うっかりにもほどがありますよ。


私達は今回のようにデリケートな仕事の場合、フードを深くかぶって髪を隠し、さらに仮面をつける。

ローブで体形も性別も分からなくして、依頼主からはどの魔術師が今回この件を受けたのかが分からないようにする。

もちろん守秘義務は絶対だ。

ちなみに、もっと強い守秘義務が課されるときは、魔法で宣誓をする。


だからご両親は、まさか娘のかつての同級生が依頼を受けているなんて気がついてはいない。

私達も心から気が付いて欲しくないと願っている。


夜番のメイドさんが夜間控えているための部屋に私達が詰めているので、お嬢さんがベッドに入っていつものようにこの部屋に下がってきたメイドさんは、深刻な顔で私達に黙って頭を下げて、自室に下がっていった。


私に言わせれば、ここに控えていたらお嬢さんの様子がおかしいことに気が付いていただろうに、どうしてここまで手遅れになる前に手を打たなかったんだ、あなたは仕えていたお嬢さんが大事ではなかったのか、と詰め寄りたくなる。


まあ、何かと事情もあったのかもしれない。今さらだ。

命だけは私達で救ってあげられる。


あとは、彼女がぐっすりと眠るのを待つだけだ。


私まで眠たくなってきた頃、声が漏れ聞こえてきた。


知っている彼女の声だというのに、なんだか知らない人の声のような…何を話しているのかは分からないけど、耳にしたとたんにいたたまれなくなって、今すぐここから走って逃げたい!と思わせるような艶のある声だった。


所長が私達を見回し、私達は頷く。

事前の作戦通りにうまく行きますように。


私は、昼間のうちに仕込んでおいた、実体化を解いた夢魔も逃げ出すことが出来ない結界を発動させる。


それと同時に四人でそっと寝室に踏み込む。そっと、なのはやっぱりその、気をつかって、ね。


ベッドの上では、横たわるお嬢さんに、黒い影のようにも見えたけど誰かが覆いかぶさっていて、ひゃー!と思いながら、間違いなく夢魔が実体化していてベッドの上にいるのを確認したので、ベッドの周囲に広めに展開していた、逃亡防止とは別の結界を狭めていく。


この結界は、聖なる力の一種でもあるので、うっすらと発光している。

光の幕がまるく二人を包んでいく。


一人で倒すのだったら、この状態で私はベッドにスタスタ歩いて行って、夢魔をも切り裂く祝福を受けた剣でもって物理的に淫魔を刺し殺さなくてはならなかったらしい。


いやーヒト型をとってる魔物を刺すのはキッツいですよ。魔物って分かっててもね。


で、ヒトの形をしたものを刺し殺すのは、私の心に負担がかかるから、いうのと、立場上の利害があって、今日は男三人が色々やってくれる手はずになっているんですが、ね。


ちなみに、部屋に足を踏み入れた瞬間から、部屋の中での物音も、行使した魔法も部屋から洩れない結界を私が張ってます。

つまり、今回は私が結界係。


私がさらに結界を狭めたので、うっすら光る程度の結界の光が届いてしまい…暗闇に慣れた私達の目には、その程度の明かりでも、ベッドにいる二人がよく見えてしまった。


「ぎゃ!」

「ひっ!」

「うわっ」

「あー…」


…えー、最初の悲鳴は私、次がカミーユ、次が先輩で最後が所長。


えーと、ですね…。

元クラスメートだった彼女に覆いかぶさっていた人物、いえ、淫魔は、カミーユの姿をとっていたのですよ。


被害者が同級生だった時点で、察しておけよ私達…。


幸いにして、角度と距離的に、具体的に二人の間でなされていることが見えていなかったのが私的には良かったけど、他の男三人は近づいていたからばっちり見えちゃったみたいで。


カミーユが段取りを無視して、ものすっごい威力の浄化魔法をぶっ放した。後先考えてないやつ。


淫魔さんにしてみたら獲物とむつみ合っていたら、いきなり辺りがぼうっと明るくなって、なんだ、と顔を上げた途端、悲鳴を上げる間もなくじゅっ、と蒸発。


元同級生にしてみたら、愛し合っている最中に、いきなり相手が蒸発。


「きゃー!」


そりゃあ悲鳴の一つも上げたくなりますよね。ホラーですよね。


彼女にしてみたら、もはや夢魔が見せる夢ではなくて、現実になっていたんだもの。


まあ、私の結界で彼女の悲鳴は漏れないし、先輩が素早く彼女を眠らせてくれた。

所長が、間違いなく淫魔が消滅したことを確認して頷いてくれたので、私は全ての結界を解いて、先輩がメイドやここの家の人を呼びに行った。


私はそっと裸の彼女に毛布を掛けて、床にへたり込んで顔を蒼白にしているカミーユに肩を貸して、私達も部屋を出た。


部屋に残った所長が、彼女の記憶を消す術を使っているはずだ。

私にはできない高等なもので、高い集中力を必要とするし、とても繊細な術なので邪魔をしたくなかった。



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