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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第1章 ロザリーのお話
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私が、カミーユの妹代わりを務めることを決意したところで、薄手のバスローブを着たカミーユが「お風呂洗っといたからね」とリビングに戻ってきた。

私はパジャマにガウンを羽織っているけど、カミーユは着られるものが少ないので仕方がない。


私は手にスカーフを巻いて、手をわきわきさせながら、「ここへお座りなさいませー」とソファーに呼んだ。


さっきと逆の立場で、ソファーに座るカミーユの後ろに立って、温風が出るように魔力を込める。


風を出しながら、髪をわしゃわしゃさせて、そういやこの子の髪を触るのは初めてかも、と気が付いた。


いつも後ろで一つに結わえたり三つ編みにしている、背中の中ほどまである髪は、サラサラした見た目通り、柔らかくてそれでいてコシはしっかりあって、寝ぐせなんてつきませんよ?とでもいいそうな髪で、触り心地もバツグン。

私の絡まりやすいふわふわした猫っ毛とは大違い。


くそう、う、羨ましくなんてないんだからね!


またしても敗北感に襲われながらも、スカーフの魔法陣はうまくいっていることが確認できた。


「うん、風量といい、温度といい、いい感じだったよ」

実験台君も満足してくれたようで何より。


「寝る前に、果実酒かなんか飲む?」


そういやご飯の時にお酒出さなかったな、と思い出して聞いてみると、「今日はいらない」、というので、私もやめておく。

だって、既に眠い。


「じゃ、もう寝ようと思うんだけど…カミーユはまだ起きてる?」


大人が寝るには少々早い時間なんだけど、私にとって睡眠は何より優先。

さっき今日はソファーで寝ようと思ったけど、眠くなってみたらやっぱり無理。

足伸ばしてのんびり寝たい!


「あ、本が少しあるから、何だったら眠くなるまで読んでていいけど…」


これといった反応がないので、同意とみなして、ライトの魔法を切る。

ランプだけになって少々薄暗い中、「行こ?」とバスローブの袖を引っ張ると、びっくりさせたみたいで、びくっとされた。


「言っとくけど、私ですら寝るのには小さいソファーだから、ソファーで寝るのは無しだよね?そういう押し問答は面倒だから却下だよー」


ふぁ、とあくびが出る。


ランプを持って、ほらほら、と寝室に追い立てて、ベッドサイドテーブルにランプを置く。


「この本ならきっとカミーユも興味あると思うんだけど、もうこれ読んだ?」


寝室の窓際にある棚に、今はまだ数冊しかない本があって、その中から先月買ったばかりの本を手渡す。


「私はもう寝るから、奥ね。でランプ側がカミーユってことで」


もそもそ、とベッドに上がって毛布にもぐりこんで、ランプ側の毛布をめくる。

ほれ、ここに寝てくれ。

今さら床に寝るとか言い出して、押し問答で寝る時間を減らさないでよね。


一瞬何か言いたげにして、それからはあ、とため息をついて、ベッドに上がってきたのに安心して、毛布を掛けてやる。


「おやすみー」

そう言って私は目を閉じる。


「うん、お休み、いい夢を」

そう聞こえてから、本が開かれる気配がして、で、私はすぐに眠ってしまったのだった。


寝落ちする寸前に気が付いたけど、一人じゃないベッドって、あったかくていいね!



春の、暑くもなくて寒くもない、今の時期って、いつまででも寝られるよね!

毛布をはぎ取るお姉様の襲来もなければなおさらね!


一瞬意識が浮上しかけて、今がいつでここがどこかも分かんなかったけど、確かなのは、今日は、仕事は休みってこと。

うん、安心してまだ寝ていいってことだ。


目も開けないまま、少しだけ寝やすい体勢になろうとして、違和感を感じ、意識が覚醒に向かい始める。


なんだろ、何か変…?


仕方なく薄目を開けると、目の前になんかある。


ん?さらによく嗅ぐ匂いもする。なんだっけ、この匂い…。


もう少し寝たいのに、目が覚める方に向かっていくので、あきらめて、ちゃんと目を開けると、近すぎるために焦点が合わないものの、『人』がいて、しかも私を抱き枕のようにがっちり抱え込んでいることがわかった。


そうか、この匂いはカミーユの匂いだ。魔力の波動からも間違いない。

そんで、寝返りをうとうとして身動きとれなかったから目が覚めちゃったんだ…。


私の至福の朝寝を妨害するとは許すまじ、と怒りを覚えかけたけど、昨日、まだ疲れが残っているのに、多分あのソファーでどうにか寝て、家事までしてくれたんだろうな、と思うと、ここで怒ってはならんなー、という気持ちになった。

僅かに動いた左手で、まだ眠ってるカミーユの頭をよしよし、と撫でた。


私も、寝る前に本を読むとき背中に当てていたクッションを、朝起きたら抱きしめてる、なんて良くあることだし、寝ているときの行動まで責任なんて持てないよねぇ。


うんうん、不可抗力。

よし、私ももう少し寝よう、若干窮屈だがいける、と目を閉じた。


あっさりと寝た。



次に目を覚ますと、昨日の再現ですか、と思うばかりの、昼近い時間で、いい匂いが漂っていた。

私はまずパジャマから部屋着に着替えて、リビングに顔を出す。


「あ、起きた。ご飯、食べるよね?」


訊かれた私はうんうん頷きながら、洗面所に向かい顔を洗う。


寝癖の付いた髪を撫でつけて、戻ってみると。


ソーセージとパンケーキにオムレツ、野菜がたっぷり付け合わせについて、さらにカットフルーツまであった。


「昨日は、朝、一昨日の残りを一人で食べさせてもらってた。今日は僕も寝すぎちゃったから簡単なものになっちゃったな。僕もさっき起きたんだ。春ってやっぱりよく眠れる気がする」


「うんうん、そうよね」


いかにもブランチ、という食事を前に顔がほころぶ。


さっきはよくも抱き枕にしてくれやがったな、などと文句は言わない。

少々腕がしびれたくらいだし、それでこんなご飯作ってくれるんだったら、腕しびれてもいいです。


それに、カミーユも疲れてるんだしね。


「うはー美味しそうー!いただきまーす」


早速オムレツにかぶりつくと、バターのコクと卵のとろりとした味わいが広がって、なにこの絶妙な焼き加減!

天才なの?


はぐはぐとオムレツを味わい、パンケーキもカットして口に押し込むと、これもふわっとした食感に、ちょっと甘めの生地がオムレツに合って、もう止まりませんー。


フルーツまでたどり着いたところで、カミーユが今日はコーヒーを淹れてくれて、お腹いっぱいだわー、と幸せを感じながらコーヒーをすする。


「外出禁止って明日の朝の10時まででしょ?どっちみち遅刻だけど家に帰ってからだともっと遅くなるから、あの服、明日まで取っておきたいんだけど、いい?」


カミーユがもともと着ていた服は、昨日洗濯をしたあと畳まれて、棚の上に載せられている。

それを指しての話だ。


つまりは明日の朝、一緒に出勤ということになる、と。

で、今日はその薄手のバスローブにシーツ巻き付け、でお過ごしになりたい、と。


「うん、時間の無駄だし、いいんじゃない?今日もどっちみち出かけられないんだから、何着てようが別に問題ないよね」


カミーユさんが見るに堪えないお姿でしたらね、勘弁してください、なんだけど、この人、昨日のミニスカワンピで私よりきれいな新妻になってたからね、バスローブの方がまだ膝丈だし性別関係ない服だし、マシだよね。


食後、今日は何しようか、って話の結果、やっぱりまずは掃除だよね、って言われて掃除をすることにした。


風を操って、天井や壁の埃をおとして、床の埃と共に外に吹き飛ばすという生活魔法を実演してもらって、めちゃくちゃ興奮した。


実家にも取り入れなくちゃ!いや、アンヌはやっているのかも。


そして次は洗濯を一緒にすることになった。


もちろん自分のパンツは死守したけど、細くっても男の子なんだねぇ、ぎゅーっと絞ってくれると、びっくりするくらいに水気がなくなってる。

あ、パンツ以外の下着も遠慮しましたよ、デリケート素材だから力任せに絞ったらダメになるじゃないか。


で、干し終えたところで、次は窓を拭こうって言われて。


窓拭きも、水魔法をうまいこと使って汚れを浮き上がらせて、あとは雑巾でふき取っていくだけだなんて、素敵!

力を入れて磨かなくていいなんて。


でも、私はスカーフを巻いて制御していても、水魔法でうっかり窓を割ってしまって、がっくりうなだれた。


このスカーフだけじゃなくて、力の段階に応じて何種類か作らなくちゃダメみたい。


ええ、どうせ私はオーガキラーですよ。

多分、自信あるけど、かなり近いうちにドラゴンキラーになると思う。


「なんかさ、すんごい力持ちのマッチョなお兄さんが力加減できなくて卵を割ろうとして握りつぶす、みたいなことよね、私」


「そうだねぇ、その通りだねー、あはは、分かってるね。学生時代の『制御力バカ子』のあだ名を忘れちゃだめだよね」


「そ、そんな名前で呼んでたのはカミーユくらいじゃない!」


「面と向かってはそうだったけどさ。みんな命が惜しいからそりゃあ直接は言わないよね」


なんてこった!私は結構みんなと仲良くできてたと思っていたのに、みんなは腹の中でバカ子って思っていたのか…。


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