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カミーユとロザリーの話  作者: 十月猫熊
第2章 カミーユのお話
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番外編 2人の結婚初夜

久しぶりのロザリー視点です。


結婚式を終えて、両方の親族での昼食会を済ませたら、私とカミーユは、カミーユの別荘に向かった。


きついドレスから楽なワンピースドレスに着替えたので、ホッとしている。

結婚に当たって、私もカミーユも、なんと3週間も休暇を貰ってしまった。


カミーユは、ダンジョンから帰ってきてから、なんだかんだと魔術師庁での報告やら魔術師の塔の研究に協力したりということもあって、実は休みなんて全く無いに等しかったのだ。


まあ、私もカミーユのマントに刺した刺繍の件で、魔術師の塔から共同研究を持ち掛けられていて、今そのことについては所長が検討してくれている。


とにかくそんな訳で、カミーユには結婚休暇の1週間だけでなく、なんやらかんやらとくっついてきて、それだけの長期になったらしい。

で、私もそれに合わせる配慮をされたようだ。


カミーユはダンジョンから出てきて、ようやく休める、という感じだから、私もゆっくり休ませてあげたいって思っている。


カミーユは、私と一緒に住み始めるまで、実は侯爵家のタウンハウスに執事のフレデリクさんと侍従のブノアさんと暮らしていたらしい。


ブノアさんは学院にも5年いたから、私も会ったことが何度もあったけど、執事のフレデリクさんは実は会ったことが無くて、でもハーレ伯爵の筆頭執事だから、挨拶をするときは少し緊張してしまった。


でもフレデリクさんも、やっぱりいい人で、とても親切だ。


私が伯爵夫人として、何をしたらいいかわからない、と怯えていたら、どうしても、なこと以外はフレデリクさんが代理でこなすので、私はカミーユのそばに居て、今まで通り研究所で働いていればいい、と言ってもらえて大感激をした。


これはカミーユも言ってくれていたので…まあ、そのどうしても、なことが何かは気になるけど、それはそのときに当たって砕けることにした。


ハーレ伯の紋章の入った馬車を走らせて半日。すっかり暗くなってから、別荘についた。


先に来ていた使用人たちによって、暖炉に火が入っていて食事もできていた。


友人たちと来ていた時より、食事も豪華だった。


よく考えたら当たり前か!

今日はこの人達の主であるカミーユが結婚した日の晩餐だったんだもんね!


食後のお茶も飲んで、今日の疲れに眠たくなっていたら「奥様」とメイドの女の子に呼びかけられて、はて?とキョロキョロして、「は!私のことか!」と思わず言ったら、メイドさん含め、皆ににこやかに微笑まれた。


うん、訓練された人たちだから微笑んでるけど、心の中ではお前以外に誰がいる、と突っ込んでいるに違いないと思って赤くなる。


奥様って…うーん、でもそうだよね、私だよね、慣れるしかないんだよね…。


「ロザリー、もう眠いんでしょ、お風呂入ってきたら?」


カミーユに言われて、そうだな、と頷く。

どうやらメイドさんはお風呂まで案内する為に私に声をかけてくれたようだ。


「えっ、いや、ほんとに、あの!ええと…」


友人たちと泊まりに来たときは客室の浴室を使っていたので、メインの浴室は初めてなんだけど。

魔道具を使って常にお湯が流れ出ている水瓶があって、そこからのお湯が、あれ?5人は一緒に入れるよね?という広さに溜まっている。

わーすごーい、と眺めていたら、いつの間にか増えていたメイドさんたちに、着ていた服を剥かれたのだ。


いいところの貴族は、お風呂も着替えもメイド任せで自分ではしないものだと知っていたけど、私は貧乏男爵家の娘なので、幼い頃以外、一人で入ってきたので、焦る。


「奥様、こちらにおかけくださいませ」

「奥様、御髪を失礼いたします」

「奥様、手をこちらに…」


私が焦っている間に、メイドさんたちによって、私は泡だらけにされていく。

泡を流され、お湯に放り込まれた後、今度は椅子のあったところに簡易寝台が運び込まれてきた。


私がびくびくしていたら、準備が整ったところで寝台にうつ伏せに寝るように促され、薄い布を一枚かけてくれた後…思いがけない至福の時間が訪れた。


いい香りのする油を塗りこみながら、マッサージをしてくれたのだ!


ああ、早朝からお姉様にたたき起こされて、お姉様の連れてきた侍女さんやメイドさんたちに髪を結われて化粧をされて、死ぬかと思うほどにコルセットを締め上げられた疲れがとれていく…。


髪にも何かを塗られて、温風の魔法が使える子がいるらしくて乾かしてくれて。

ああ、天国がここに…。


うとうとしていたら、いつの間にか終わっていたらしく、寝ぼけたまま、寝衣を着つけられてガウンを着た。


すぐに寝室に案内されて、ベッドの脇には冷たい果汁とか水とかチョコレートとかフルーツがあって、用があったら呼び紐を引くように言われて、皆は下がっていった。


…すごい。お嬢様になった気分だ。


ベッドの脇に下がっているこの紐を引くと、彼女達が控えている部屋のベルが鳴る仕組みなのだ。


以前、カミーユが私と結婚することがカミーユにとって玉の輿なんだといっていたけど…やっぱりそんなわけあるか!

侯爵家次男で、既に伯爵のカミーユに、男爵家の次女が嫁いだ方が、なんてったって玉の輿だろうに!


私、長い付き合いでカミーユはカミーユでしかないって思ってたけど…いや、お金持ちの子だって充分分かってたけど…だって学院でも寮は特別室だったし…なんか、本当に自分がカミーユと結婚したっていうのがピンとこない。


同居人になって3カ月でダンジョンに潜って2カ月も会えなくなって、でも戻ってきて2日で婚約して、1か月後には結婚、て…。


春に一人暮らし始めて、カミーユと同居始めたのって一人暮らしはじめて半月後くらい?

それで秋には結婚してるって、人生何が起こるか分かんないね!


ちょっとだけ寝たせいで眠気がどこかへいってしまったので、一人物思いにふけってしまった。


せっかくなので、ベッドに座って冷たい果汁を飲んで、ちょっと足りなくてお水も飲んで、それから美しくカットされていたリンゴをかじっていたら、カミーユが入ってきた。


「晩餐の時にワインもエールも出さなかったけど…何か飲む?」

カミーユもお風呂に入ってきたのだろう、寝衣の上にガウンを着ている。


「あー、どうしようかなあ、でも今日はいらないかな」


「フレディが、結婚祝いにくれたお酒があるから、それを一口だけ飲まない?」


「そういうことなら」

執事のフレデリクさんがくれたものだったら、味見はしておこうかなって思った。


ガウンのポケットに入れてあったその瓶は、小さめであったけれど、私でも知っているお酒の産地として有名な土地のラベルのものだった。


寝室に置かれているキャビネットには、お酒やグラスも置かれていて、そこから小さなショットグラスを取り出すと、カミーユがそれにお酒を注いでくれた。


ベッドサイドに椅子を一つ持ってくると、カミーユはそこに座る。


「じゃあ、僕達今日から夫婦だからね?分かってる?」


「分かってるよ!奥様、でしょ」


「そうそう。じゃ、僕達の結婚に、乾杯」


カミーユがそう言ってグラスを渡してきたので、私もそれを受け取って、口をつける。

甘くてとろり、として、でも、びっくりするくらいに酒精が強かった。


「何これ!目が覚めたよ!」


「うん、びっくりした。こんなに強いとは思わなかったな…」


カミーユも改めてラベルを見ている。


でも、味自体はすごく美味しいので、私はリンゴを食べながら、ちびちびとお酒をなめる。

カミーユも、ラベルに書かれていることを読んで満足したのか、私が食べようとしたリンゴを横取りしたりしながら、一緒に晩酌を楽しんだ。


ショットグラス一杯だったのに、かなりお酒が回ったようで、手足もポカポカして暑いくらいだ。


私がガウンを脱いで、軽くたたんでベッドの足元に置いて、ふと顔を上げたら、カミーユがじっと私を見ていたので動揺する。


ダンジョンから出て来てから、時々こういう変な感じになるようになったのよね…背中がぞくっとするし、なんか怖いっていうか…。


私はその居心地の悪い雰囲気をどうにかしようと、とりあえず何ができるかと考えたけど、何も思いつかない。


困っていたら、カミーユが「チョコレートもあるけど、食べる?」と聞いてきた。


チョコレートは甘すぎるから寝る前にはちょっとなあ、と思ったけど、カミーユが食べるなら私も一つくらいは付き合おうかな、という気持ちになって、「うん、食べる」と返事をしたら。


カミーユはチョコレートを一つとると、自分の口に入れ、ベッドに座る私の横に移動してきた。


何をしたいのだ?と不審な顔で思わず少し高いところにある顔を見上げたらきゅうっと抱きしめられて、そして後頭部に手が回り、あ、しまった、と思った時にはキスをされていた。


カミーユの口の中にあった、半分とろけたチョコレートが押し込まれる。


こんな食べさせられ方は嫌だーと文句を言いたいけど、チョコレートとともに入り込んできた舌にくすぐられると、背中がゾクゾクして、とろけたチョコレートを飲み込むときにカミーユの舌を吸うみたいになってしまう。


婚約してからのこの一カ月、カミーユは毎日寝る前にはキスをして、やだ、やめて、って毎回言うんだけど全然やめてくれなくて、で、私が苦しくなってぐったりすると、いつものように抱き込んで眠る毎日を送ってきた。


まあ、だからその流れなのかと思ったのだけど…。


いつも通りにぐったりしても、全然やめてくれる気配がない。

いつもと違ってチョコレートの味がするので、長いのかも?


そして気が付いたら、ぐらり、と体が傾いて…ぽすん、とベッドの上に倒れこんでいた。


ようやく離れてくれたカミーユが、私の顔の両脇に手をついて、上から覗き込んでいる。


じーっと見つめられるので、私も見返す。


はあ、相変わらずの妖精さん…。

なんて整った奇麗な子なんだろう…。


いや、もうカミーユのことをこの子、とか思っちゃダメか、旦那様なんだからね。


ぼんやりとその奇麗な緑の目を見つめていたら、みるみるうちにその目つきが…最近時々見ることがある、何とも言えない力のこもったものになっていく。


その目つきで見られると、また背中がぞくっとしてしまうのだ。


「ねえ、ロザリー、今から何するか分かってるよね?」


「ん?何だろ?」


「……結婚した二人が最初に迎える夜でしょ」


「ああ!初夜だよね」


一応、学院での授業に、正しい子孫のつくり方というものがあった。

男女別々に分けられて生物学的にどうすれば子供が出来るのか、といったことを、医学的な見地から教えられるものだった。

各家庭にゆだねられていた昔は、一般的には変態的と言われる行為が当たり前として教育されていたりと、間違った知識が伝わることも多く、最低限の知識だけは、という内容だった。

なので、なにをどうしたら子供が出来るかは、ちゃんと把握している。


が。

キスだって、唇を触れ合わせるという認識だったのに、カミーユがしてくるものは全く違うものだ。


それに、結婚の日取りが決まってからというもの、お母様とお姉様がさかんに、あの知識だけでは足りないのだからと指南書のようなものを読むようにすすめてきていた。


ああ!しまった。


長期休暇をとるために、仕事を詰め込んでいたし、結婚ってこんなに色々面倒くさいの?もうやめたい!と思うほど手続きがいっぱいあった。


ただ、新居は、カミーユが住んでいた侯爵家のタウンハウスをもうしばらく使わせてもらうことと、平日は私のあの狭い部屋に住むことになっていたので、そっち関係の手配がないだけ楽なのだと言われて、気が遠くなったりもしていて…。


つまりは。

後回しにした結果、指南書を読んでない!


対外的に影響がない、自分とカミーユに関わることだけだから、と思ったことが油断につながった。

私としたことが。


お母様は「昔から『男性のいう通りにしていればいつの間にか終わります』、と言われているけど…まあ確かにその通りなんだけど、なんでもいう通りにしていればいいってものではないと思うのよ」と言っていたし、お姉様も「慣れないうちはひたすら耐えるしかないけど…でもね、嫌なものは嫌!ってはっきり言った方が私はいいと思うの」と言っていた。


こ、この程度の予習で、いまから実践とか!

いや、無理じゃない?


「何を急に慌てだしてるの?言っとくけど、逃がさないけど?」


「いや、その、逃げるつもり…はないけど、その、えー、延期というのはどうかな?」


延期、という言葉を聞いたとたんに、カミーユに眉間にみたこともないくらいのしわが寄った。

私は慌ててそのしわを伸ばすべく、そこを指でなでつける。


「僕がどれだけ今日を待ってたと思ってるの?」


「ひいっ」


久しぶりにカミーユから冷気が駄々洩れて、殺気と紙一重の圧に、実際に寒いのも手伝って、全身に鳥肌がたった。


「わ、わかった、ごめん、延期なし!っていうかさ、ほんとごめん、初夜の予習してこなかったんだよぅ」


私は相変わらずカミーユの両腕と、さらにはさらさらと零れ落ちてきた青い髪で作られた檻の中にある自分の顔を、両手で覆った。

予習しておかなかったことが、恥ずかしかったのだ。


ああ、もう、本当に私としたことが。

家の中を奇麗に片付けるとかはどうでもいいけど、こういうところだけ、完璧主義なんだよね。


「……そんなこと?」


「ええ?そんなことって…学院で習ったこと以上のこと、私知らないよ?それで挑んで大丈夫なわけ?」


気の抜けたような声を出されて、おそるおそる、顔を覆っていた手を外してみれば。

カミーユの表情は若干穏やかになっていた。


「うん…そうだね。ロザリーが僕のこと信じてくれれば、別にロザリーは知らなくても大丈夫かな?僕がちゃんと知ってるから」


「え、でもさ、ダンスとかって、ちゃんと男女ともにステップを覚えてないと踊れないじゃない?そういうものではない…のかな?」


「あーもう、うるさい。僕が今日聞きたいのは、ロザリーの可愛い声だけだからね」


そういうと、またカミーユの綺麗な顔が迫ってきて、口づけされて…。


そのあとのことは、えー。

まあ。

なんとかなったというか、ならなかったというか。

いや、なんとかなった、のか。


前にカミーユが言っていた、この世には私の知らないことがたくさんある、ということを思い知った、ということだけにとどめたい。


結婚したらこれをすると知っていたら…いや、恐らく大抵の人はする前に知ってるんだろうけど…あんなにぼんやりと結婚を受け入れたかどうか怪しい気がする…。


純潔を失う、というのは思っていたよりハードだな、と朝日の差し込む寝室のベッドの上で、カミーユに抱き込まれながら、しみじみと嚙み締めた、新妻になった私なのだった。


ロザリー編カミーユ編合わせて、長い話を最後までお読みいただいて、有難うございました!

なろうには初投稿でした。

無事に完結できたのも、読者様がいてくださったお陰です。本当に感謝です。

需要は無いのかもしれませんが、実はマルセルさんのお話とアランさんのお話の草稿ができています。

近いうちに書き上げたら投稿します。もしよろしければそちらもよろしくお願いします。

最後に、いいね、ブクマ、評価、感想をくださった皆様、本当に有難うございました!!

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[良い点] 完結ありがとうございます! 毎日楽しませて頂きました(◍•ᴗ•◍) 刺繍のマントが気になりすぎて、 ロザリー編に戻ったり カミーユ編に戻ったり ウロウロしながら楽しみました!
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