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オメガだとわかって絶望したのに、気づけば四人の夫に愛されています  作者: チュチュ


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嘘つきの本音


その日、陽向は神殿主催の茶話会に招かれていた。


異世界から来たΩとして、社交の場に顔を出すのも、この頃はすっかり慣れてきていた。


貴族の夫人たちに囲まれ、当たり障りのない世間話を交わしていたときのことだった。


「宰相様も、隅に置けませんこと」


扇で口元を隠しながら、一人の夫人がそう切り出す。


「異世界の珍しいΩ様に近づかれたのも、やはり権力図をお考えのうえなのでしょうね」


「重婚のお相手次第で、この国の力関係も大きく変わりますもの」


「さすが宰相様、抜け目がありませんわ」


くすくすと笑い合う夫人たちの会話は、陽向に向けられたものではなかった。


けれど、その一言一言が、鋭い針のように胸に刺さっていく。


「……あの、それって」


思わず口を挟むと、夫人たちは初めて、しまったという顔をした。


「あら、失礼。噂話が過ぎましたわね」


取り繕うような笑みを浮かべて、話題はすぐに逸らされた。


けれど、聞いてしまった言葉は、もう消えてくれなかった。


その日は、まともに会話も頭に入らないまま、時間だけが過ぎていった。


夕方、屋敷に戻ると、ちょうどヴィンスが訪ねてきていた。


いつものように優雅な足取りで、笑顔を浮かべて近づいてくる。


その笑顔を見た瞬間、陽向の中で何かが冷たく固まった。


「陽向様、顔色が優れないようですが」


いつもの穏やかな笑顔で近づいてくるヴィンスに、陽向は思い切って切り出す。


「僕に近づいたのって、この国の権力図を見極めるためだったんですか」


ヴィンスの表情が、一瞬だけ止まった。


その反応だけで、十分な答えだった。


「レオさん、聞いてました?」


陽向の問いかけに、そばにいたレオが低く唸るような声を上げる。


「……そういうことか」


みるみるうちに、レオの顔つきが険しくなっていく。


「貴様」


拳を握り、ヴィンスに詰め寄ろうとするレオを、陽向は慌てて止めた。


「待って、レオさん」


「これだけのことをされて、黙っていられるか」


「殴っても、何も解決しません」


理性を総動員して、陽向はレオを押しとどめる。


その間も、ヴィンスは一言も言い訳をしなかった。


「最初は、そうでした」


静かに、そう認めた。


「稀少なΩが、重婚制度の中でどう扱われるか。それを見極めるのが、宰相としての務めだと思っていました」


淡々と語るその声には、いつもの余裕とはまた違う響きがあった。


「今は違うと言っても」


ヴィンスは、小さく笑った。


「あなたは、信じないでしょうね」


いつもと同じ、完璧な微笑みだった。


けれどその笑顔は、どこか寂しく見えた。


陽向は、何も言えなかった。


怒りと、それだけでは片付けられない何かが、胸の中でぐちゃぐちゃに絡み合っている。


「今日は、お引き取りください」


やっとの思いで、そう告げた。


ヴィンスは、深々と一礼すると、それ以上何も言わずに屋敷を後にした。


その背中を見送りながら、陽向は自分の中で、はっきりとした結論を出す。


少なくとも今は、この人を二人目には選べない。


たとえ本当の気持ちがどこかにあったとしても、政治的な計算から始まった関係を、そのまま受け入れることはできなかった。


信じたい気持ちと、簡単には信じられない気持ちが、心の中でせめぎ合っている。


その夜、陽向はなかなか眠りにつけなかった。


ヴィンスの寂しそうな笑顔が、何度も頭に浮かんでは消えていった。


あの笑顔の下に、本当は何が隠れているのだろう。


それを知りたいと思う自分がいることに、陽向自身、少し戸惑っていた。

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