第6話 おいしいよね
気になるけれど顔を上げられないもどかしさ。
「リテクス、面を上げなさい」
「はい」
ここへ来るまでは明るい軽やかな声だったのに、トーンを落として固い声になった。
「そなたの隣にいるのがそうか」
「はい」
「そうか」と王様が呟くように言うと無言になってしまった。
俺は何のためにここへ連れてこられたんだ ?
「調べによるとこの者は、貴族間で流行中の未許可薬を所持していたと報告が上がってきていたな。その者が所持していたものを検分したところ不可解なことが発見されたらしい」
「不可解な事と申しますと…… ? 」
ただのラムネ菓子がなんで不可解なモノに…………なるわな、この世界だったら !
砂糖なんてめったに手に入らない世界なんじゃないのか。
あったとしても、黒糖とかみたいに茶色で真っ白い甘味料なんて、王様でも入手が難しいのでは。
背中を冷たい汗が流れる。
水さえ飲めなかったあの時を思い出して、自然と溢れ出てくる唾を飲み込んだ。
(もう一度牢の中に入るなんてごめんだ)
王様は言うのをためらっているのか、それとも性格なのか一言の間が長い。
「ものすごくさらっとした甘味だったそうな」
「えっ ! 口にされた方がいるのですか !? 」
リテクスが大声を出してしまい、貴族たちの怖い顔が一斉にこちらを向いている気配がする。
彼は慌てて口を塞いでいる様だがもう遅いって。
危なかったよ。声に驚いて顔を上げそうになっちゃったし。
そしたら後ろにいる脳筋騎士くんにまた痛い思いさせられるんだろう。
そんなの嫌だ。
「皆にも見せてやろう」
王様の発言から少し間があって足音が聞こえる。
心なしか王様の声が嬉しそうに思えたのは俺の気のせいだろうか。
「調べさせている時に研究所に邪魔してな。面白くなさそうな顔をしてるので話を聞いてみた。そしたらほぼ百パーセントが糖類で、問題となっている薬は一切出てこなかったそうだ」
(こちらにもパーセントという表現があるのか、現実世界と単位が同じなんだな)
布ずれの音の中、リテクスさんが「あっ ! 」とまた声を上げる。
周りの様子が見れないので、貴族たちがどんな反応をしているかも分からないが、今回は不穏な空気は伝わってこない。
「陛下、お口になさらないでくださいよ」
壮年男性の柔らかくもよく通る声が呆れたように制した。
「おいしくてな。口どけがいい」
食べたんかい。
心の中で突っ込みを入れてしまったではないか、俺にしては珍しい事だぞ。
しかも、発言からして今回が初めてではないな。
読んで頂きありがとうございます。
再び小説を書くようになってからお菓子を食べるようになってしまいました。
・・・セーブしなくてはいけませんね。
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