第17話 陛下はお菓子がお好き
リテクスさんに連れられて来たのは執務室前。
ノックをして帰ってきた声は間の抜ける声だ。
「入って来るがよいぞー」
何か緊張感がどこかへ行ってしまった感じがする。
「陛下、ちゃんと仕事なさってましたか ? 返事が早すぎて心配になりましたよ」
「いやあ、面白そうだったんでな」
のほほんとしている陛下の両脇で、側近の方々が忙殺されている様子。
自分の分は終わらせ、あとは各部署へ持っていくだけらしい。
「茶でも飲みながら話そう」
リテクスさんは呆れた顔をしながら、俺と幼馴染みに席を勧めてくる。
立ったままでも仕方ないので言葉に甘えることにした。
「カヌレが今、流行しそうでな。共に食そうぞ」
陛下はにこにこしながら魔術とやらで、カヌレが入っているのであろう箱を出した。
「また勝手に城下へ行かれたのですね」
隣で怒気を放っているが、優雅にカップに口をつけている。
毒見なのかな。よく当たり前のようにできるよな。
「それで、君がもう一人の日本人か。この世界に来て驚いただろう」
「え、えぇ。まあ……」
驚いているのは陛下の態度にもだと思う。
ため息をつきながら魔術を発動させるリテクスさんは、急に疲れに襲われたように見えた。
「今、防音魔術を張ってもらったから何を話しても大丈夫だぞ」
「は、はあ。わかりました」
なんだか歯切れの悪い返事をする幼馴染みと、陛下の自己紹介を見守りながら用意してくれたカヌレを一口。
うまい。
うまいんだけど、この味どこかで口にしたような。
まったく同じ味かは食べ比べてみないとわからないけど、有名なケーキ屋のカヌレにそっくりな味だ。
「陛下、地下牢で横になっていたのはこの世界の僕になるのでしょうか ? 」
「外見は同じだが性格は別物、よってそなたとは別の人間ということになる。我は転生だが、お主らは転移。それも誰かの気まぐれによる発動魔術か、自然と何らかの理由でこちらとそちらの世界が繋がってしまっているのだろう」
よかった、ドッペルゲンガーじゃなくて。と、胸を撫で下ろす幼馴染み。
いやいや、もっと別のことに注目しようよ。
俺の部屋のクローゼットが、なぜこの世界に繋がっていたのかを不思議に思おうよ。
「で、お主らはいつ元の世界に戻るのかわからぬのだろう ? 」
「はい。何がきっかけなのかわからないのですが、何らかの拍子に元の世界に戻るんです」
んー。と、考え込む陛下。その間もお菓子を口に運ぶのを忘れない。
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