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忌み指輪の召喚令嬢 ~ 辺境伯の娘は闇ギルドと手を結ぶ  作者: 佐藤猛山
第7章「星を望む者」

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9 魔の地を目指して

サルディアに集ったハイエルフと闇ギルドの一行は、ディードルグへ向かう

 ハイエルフの首領、マン・キンフは、サルディアの隠れ家の前に集まった闇ギルドの皆に語りかけた。


 「危険を顧みず来てくれた、勇敢なる友人達に感謝を――我らハイエルフは、この日を忘れず、永久に語り継ぐだろう」


 闇ギルドからは、エルヴィア、ネラ、アニス、ミノーク、ママナが参加した。

 他の者達は、砦の町に残っている。

 再び、町が急襲される可能性を考えてのことだ。


 「師匠のゴーレムがいれば、町は大丈夫だよ」


 ゲルヴの魔術は卓越したもので、ゴーレムまで作り出せるのだ。

 ただの石や岩が、巨人へと変わる様は圧巻だった。

 ゴーレムが門番に加わったことで、砦の防衛はより強固なものとなった。


 アニスが引き締まった表情で告げる。

 「――状況から見て、ダークエルフ達は城に潜伏していると思われる。正門以外にも、秘密の出入り口があるはずよ」


 城にはおそらく、抜け道や隠し通路があるはずだ。

 あの時、魔物を呼び出したダークエルフも、城から出てきたのだろうとエルヴィア達は考えている。


 「とはいえ、考えなしに突入するのも危険よ。まずは、奴らがこれ以上、魔物を呼び出せないように、怪しい石の輪を破壊する」


 それが、今回の遠征の最初の目的だった。

 魔物の出どころを絶ち、その後に城を攻略する作戦だ。


 「分かった。では、その場所まで案内してくれ」

 マン・キンフをはじめ、ハイエルフ達の表情から緊張が伝わってくる。


 「では、行きましょう。大丈夫、私達は必ず勝つわ」

 アニスの声に、静かな闘志が感じられる。


 ハイエルフと闇ギルドの部隊は、ディードルグへと通じる転送石(ポータル)に向けて、颯爽と歩き出した。


    †


 妖精(ニンフ)の泉を過ぎ、城の方角へ進む。

 目的地が近づくにつれ、部隊の緊張も少しずつ増している。


 先頭を行くアニスが、皆に呼びかけた。

 「途中に魔物がいないとも限らない。注意を怠らないように」


 警戒しながら、森の中を進んでいると――


 (あれは――?)


 前方に、人影らしきものが見える。


 アニスが腕を横に伸ばし、部隊の前進を制した。

 「なにかしら……?」


 不信な人物は、微動だにしない。

 ただ、じっとこちらを見つめているようだ。


 なんだかとても、気味が悪かった。


 「――どうする? 行ってみる?」

 エルヴィアが問うと、アニスは頷いた。

 「ええ……」


 部隊はゆっくりと前進する。

 そして人影の近くまで進み、少し間を空けて再び停止した。


 謎の人物は、まだ動かない。

 そして、その隣には――見慣れぬ〝獣〟の姿があった。


 「――あなたは、何者?」

 アニスが切り出す。


 その謎の人物は、見るほどに異様な風体だった。

 

 痩せ細り、ボロボロの服を着て、手には粗末な木製の杖を携えている。

 片目は潰されたかのように、赤黒く濁っていた。

 そして、なぜか――ずっと微笑を浮かべている。


 「この先へ行くのかい?」


 少女か少年か、判然としない声色――

 短く問うた後、そのまま黙り込む。


 皆が、困惑した。


 その人物はまるで難民のように汚れていたが――

 隣に鎮座する獣は、一切の汚れがない綺麗な白い毛並みで、幻想的なほどに美しかった。


 「そうだ――我々は、この先へ行かねばならぬ」

 キンフが謎の人物に言い放つ。


 少し間を置いて、謎の人物と獣は道を空けた。

 エルヴィア達は、不信感を覚えながら、おもむろに歩き出す。


 列の後方にいたネラが、なにを思ったか、謎の人物に話しかけた。

 「あのさ、行く場所がなくて困ってるなら、東の国境にある町へ行くといいよ」


 ネラの言葉にも返答はない。

 だが、部隊の全員が通り過ぎようかという時――


 「今夜は、星が降るよ」


 再び、鈴のような声が聞こえた。


    †


 ディードルグの城の目前――

 部隊は、森の端に待機し、城の外観を眺めていた。


 「あれは……多分もう、駄目ですねぇ」

 ママナが呟いた。


 ディードルグ城は――

 まるで陥落したかのように、壁は崩れ、塔は倒れ、炎や煙が上がっていた。


 「一体、どういうこと……?」

 アニスの言葉は、部隊の皆の心中を代弁していた。


 「ホントに、騎士団が突入したとか……?」

 ネラが言うが、それにしては妙に静かだ。


 エルヴィアは、さっきの謎の人物を気にしている。

 城への行く手をふさぐように立っていた――

 このことを知っていたのではないか?


 「どうする? 予定通り、魔物の元を潰しにいくか、それとも――」

 キンフが、アニスに問いかける。

 「城の様子を見に行くか?」


 アニスは少し考えてから答えた。

 「予定通り、森へ入りましょう。城には、なにかしらの〝危険な存在〟がいるかもしれないわ」


 部隊は、城の外周に沿って、森へ向かう。

 心なしか、皆の足取りは重い。

 エルヴィアの胸の内には、不吉な予感がへばりついて離れなかった。

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