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忌み指輪の召喚令嬢 ~ 辺境伯の娘は闇ギルドと手を結ぶ  作者: 佐藤猛山
第6章「薄明の兆し」

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5 不意の報せ

エルヴィア達は細工人の村に一泊し、マユザ達に別れを告げる

 闇ギルドの一行は、細工人の村で夜を明かした。

 

 拠点へと帰るエルヴィア達を、マユザやオカル、村長らが見送ってくれた。

 必ずまた会いに来ると約束し、村を後にした。


 「思ったより、好意的な人達だったわね」

 アニスは村人に拒絶されると思っていたようだ。

 「一応、情報も得られたし……また地道に探索するしかないわね」


 〝スーラ=マナ〟という存在――

 情報としては、これが一番大きい。

 〈遺物〉を探すための糸口ではあるが、ずいぶんと謎めいた存在だ。


 それと、父のことも少しだけ分かった。

 同行していたという女の存在が気になるところだが、ルバエドあたりが事情を知っているかもしれない。


 「あとは色々な転送石(ポータル)の場所を教えてもらったのも大きいでしょ」

 ネラが言う。

 

 ディの民は、大抵は転送石(ポータル)で長距離を移動するそうだ。

 それらの場所を簡易な地図を描いて共有してくれたのだ。

 探索で役立つのは間違いない。


 「私は――彼らと交流できたこと自体が、一番の成果だと思う」

 

 それが、エルヴィアの偽らざる気持ちだった。

 今は細い絆も、やがて大樹の根のように太く強く育つことを、エルヴィアは願っている。

 

 「さあ、急ぎましょう。拠点の皆が、土産話を待っているわ」


    †


 拠点へ戻ったエルヴィア達を待っていたのは、予想外の報せだった。


 「大変なことになった」

 西側にいたカルスが、報告のために拠点までやって来ていた。

 「砦の町が〝魔物の群れ〟に襲撃された。今は、オリド・ガードと交戦中だ」


 「魔物ですって?」

 アニスが驚きの声を上げる。

 「あの辺に、〝群れ〟といえるほどの魔物が?」


 違和感がある――

 砦の町の周囲はおろか、このモルディレインのただ中でさえ、そこまで多くの魔物に遭遇したことはない。


 そもそも、魔物が徒党を組むなど、ありえるのか――?


 「詳細は不明だが、町が襲われているのは確かだ。俺も、この目で確認した」

 

 突然のことに、皆が困惑している。


 「混乱のどさくさに紛れて、俺もようやく、こちら側へ来れたんだ」

 「パリオや、ルバエドは無事ですか?」

 エルヴィアが尋ねる。

 「今のところはな。なにかあれば、こちらへ来ることになっている」


 それにしても、なぜ砦の町が襲われるのか。


 単純に、魔物が暴走したのか――

 あるいは、国境を陥落させるための陰謀?

 仮にそうだとして、それは誰の差し金だ?


 「オリド・ガードは、以前、分裂を起こしたこともあって、組織の足並みが乱れている。砦は落ちるかもしれん」


 もし、砦が落ちれば――

 西側の混乱は必至だ。


 「何者かが裏で糸を引いていることもありえるが……まずは、情報を集めなければどうにもならん」

 カルスの言い分はもっともだ。

 「俺は調査のために国境に戻ろうと思う」


 「まさか、ひとりで戻るつもり?」

 アニスが鋭い声で言う。

 「いや、そこまで無謀じゃないさ。それに、ママナが今、外部に助けを呼びにいってくれている」


 助けとは――誰のことだろう。


 「エルフ達だ。助力を求めるのは、ママナの提案なんだが――」


 やがて、拠点の入口に数人の人影が現れた。


 「皆さん、お帰りでしたかぁ」

 ママナと、エルフの首領のマン・キンフ、それに三人のエルフの男達だ。


 「なぜ、エルフの皆を――?」

 

 エルヴィアが尋ねると、ママナが答える。

 「以前、エルフの集落に、魔物や〝森の神〟が侵入したらしいじゃないですかぁ」

 「ええ」

 「それは、ダークエルフの仕業だったんですよねぇ?」


 そうか――

 今回の魔物の襲撃も、ダークエルフが関わっていると考えたのか。


 「魔物が集(・)団(・)で(・)動(・)く(・)というのはちょっと変だと思ったので。それで、ダークエルフの話を思い出したんですよぉ」


 マン・キンフが頷く。

 「報告、感謝する。我々も、ダークエルフの関与はあり得ると考えている」

 

 カルスが一歩、前へ出る。

 「俺は闇のギルドの代表、カルスだ――」

 

 カルスとキンフが向き合う。

 「ギルドの数人で、砦の町へ調査に向かうが、同行してくれるか?」

 カルスの問いに、キンフは頷く。

 「勿論だ。集落を守ってくれた恩は返さねばならない」


 カルスは少し考えてから、口を開く。

 「今回の襲撃、どうにも不可解だ。なにかしらの陽動かもしれない。エルフの集落も安全とは言い切れないぞ」

 「そうかもしれないが、だからといって知らぬふりはできない」


 キンフの意志は固いようだ。


 「私が残るわ」

 アニスが出し抜けに言う。

 「調査は皆に任せる。私はエルフの集落で、番犬役でもさせてもらうわ」


 マン・キンフが「いいのか?」と尋ねると、アニスは頷いた。

 「――ありがとう」


 「ギルドの者は、集まってくれ。砦へ行く者と、拠点に残る者を選抜する」

 カルスの指示で、皆の表情が引き締まる。


 西の方角をふと仰ぎ見る。

 いつの間にか、うっすらと広がる雲が、西の空を濁らせていた。

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