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忌み指輪の召喚令嬢 ~ 辺境伯の娘は闇ギルドと手を結ぶ  作者: 佐藤猛山
第6章「薄明の兆し」

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3 古代人の村へ

収穫祭の翌日、エルヴィアは古の民〈ディ〉の若者達のもとへ赴く

 エルヴィアは、ネラとアニスを伴い、再びドルイドの村を訪れた。

 

 「昨夜は本当に、すみませんでした……」

 ディの民の少女「マユザ」は顔を合わせるなり、首をすくめる。

 「あまり覚えてないんですけど、飲みすぎちゃったみたいで……」


 マユザは深刻な表情で詫びたが、エルヴィアは笑って水に流した。

 「いいえ、かえってよかったわ。おかげで、打ち解けられた気がするもの」


 隣に立つオカルも、神妙な面持ちだ。

 「実はこいつ、二日酔いでしばらく起き上がれなくて……そのせいで、ろくに話し合いもできていないんです」

 「ごめんなさいっ!」


 ひたすら恐縮するマユザ達を、ネラとエルヴィアがなだめた。

 互いに自己紹介を済ませ、ようやく話の本題に入る。


 「それで、ふたりの村に私達を連れて行ってほしいのだけど――」

 エルヴィアが切り出す。

 「躊躇するのは解るわ。だから、このネラとアニスを同行させようと思うの」


 魔女のネラは、ディの民の血を引く者であろうこと――

 そして、アニスという人外の存在をも仲間として受け入れたことを伝え、立場の異なる者との融和を重んじる姿勢を力説した。


 「私達は、決してあなた達を傷つけたりはしないと約束するわ」


 真っ直ぐな瞳で話を聴いていたオカルは、マユザに尋ねる。

 「お前はどう思う?」


 マユザもまた、真剣な顔で答える。

 「あたしは――連れていってもいいと思う」

 そして、短く溜息をつく。

 「大体、年寄り達は頭が硬いんだよ。じいさんの、そのまたじいさん達の昔話の受け売りで、アレコレ言ってるだけなんだから」


 マユザの言葉に、オカルも「まあなぁ」などと相槌を打つ。

 「ただ……連れていくのはいいですが、村の者と話せるかどうかは分かりません。結局、村のことを決めるのは村長ですから」


 「それで構わないわ――」

 それは、エルヴィアの本心だった。

 ディの村までたどり着ければ、いくらでも交渉の余地はある。


 「それにね――」

 マユザが思い出したかのように付け加える。

 「昔、白金(プラチナ)の髪の人が、村に来たことがあったらしいよ」


 それは、重要な話だ。

 聖職者が魔装品を求めてやって来たのだろうか――?


 「詳しいことは分かんない。でも、悪いことがあったわけじゃないみたい」


 ともかく、マユザ達は村までの案内を約束してくれた。

 エルヴィアはふたりの若者に深く感謝した。


    †


 昼過ぎ――

 準備を終えた一行は、ディの村へ向けて出発した。


 どのくらいの距離があるのか気になったが、オカルによれば、転送石(ポータル)を通るのですぐに着く、とのことだった。


 「転送石(ポータル)は、ディの民が作ったものなの?」

 エルヴィアが尋ねる。

 「昔は作れる人がいたらしいです。俺達の村にはもう魔女や魔術師はいないし、なにか知っているのは村長くらいだと思います」


 古代人の末裔といえど、時代の流れで失われるものもあるのだろう。

 今まさにこの時にも、古の知識が消えているのかもしれない――

 エルヴィアの胸中に、微かな寂しさが去来した。


 幾つかの転送石(ポータル)を経由し、一行はディの村の入口に到着した。


 「一度、村長に報告にいってきます。ここで少し待っていてください」

 オカルはそう言うと、マユザとふたりで村へ入っていった。

 

 外から村を見渡す。

 広さは、サルディアの町より少し小さいくらいだ。

 

 家はほぼ木造だったが、一部、黄色い石造りの建物も見える。

 初めて行った東の地の遺跡も、似たような石で造られていた気がする。


 しばらく待っていると、遠くにふたりの若者と、他数人の人影が見えた。

 オカルとマユザが、村の年寄りを連れてきたようだ。

 彼らはエルヴィア達の前まで来ると、歩みを止めた。


 「……妙な取り合わせの客人だな」

 左端に立つ仏頂面の年寄りが口を開く。


 「真ん中のは、聖職者ではなさそうだね」

 今度は右端の老婆がエルヴィアを睨めつけて言う。


 「ちょっと! 失礼だよ、じいさん達!」

 マユザが年寄りを窘める。

 「まずは挨拶でしょ! 自分達は口煩くいうクセに」


 ふたりの年寄りは、不満げに咳をする。


 エルヴィアは膝をつく。

 「私はエルといいます。このふたりはネラとアニス。まずは、お会いいただけたことに感謝を申し上げます」


 左の老爺が「ふん」と鼻を鳴らす。


 「ここへ来たのは〈神の遺物〉について、皆さんのお知恵を拝借するためです」


 エルヴィアは顔を上げ、年寄り達を見る。

 彼らの中心に立つ人物――

 おそらく、彼が村の長だろう。


 杖をつき、痩せ細ってはいるが、その目は静かな威厳を湛えている。

 

 「……〈神の遺物〉とは、〝神の象徴〟のことだな」

 村長らしき男が、低い声で言った。

 「それの、なにが知りたい?」


 「これを見てください――」

 エルヴィアは、外套から手を出して、骨の指輪を見せる。

 「これは、私の父の遺品です……この指輪ついて、ご存知ですか?」


 村長の目が、わずかに見開かれる。

 そして、空を仰いだ。


 「お前さん、〝ロルド〟の娘か――」

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