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忌み指輪の召喚令嬢 ~ 辺境伯の娘は闇ギルドと手を結ぶ  作者: 佐藤猛山
第6章「薄明の兆し」

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1 収穫祭の夜

 東の地にも秋が来た。


 闇ギルドの面々は、その殆どが東の地の拠点へ移っていた。

 オリド・ガードの捜索から逃れるのが当初の狙いだったが、結果的に拠点での生活の基盤はさらに安定した。


 エルフやドルイドとの交流も続いている。

 狩猟によって獣の肉などは入手できたが、野菜や麦は彼らが作ったものを分けてもらっていた。

 代わりに西側の調理法や、酒の醸造法を伝えたりして、良い関係を保っている。


 「パンとハーブエールは、かなり好評だね」

 ネラは食文化の伝達に大きく貢献している。

 「〝蒸留器〟があれば、もっと色々できるんだけどねぇ」


 足りない物は、主にネラやアニスが西側で調達してくれているが、毎度長い距離を行き来するのも大変そうだ。

 生活する分には困らなくなったが、まだまだ不自由を感じることも多い。


 そして、いまひとつの問題は――


 「今回も、空振りだったわ……」


 探索の成果が、出ていないことだ。

 ママナがギルドに加入してから、共に〈遺物〉を求めて東の地を散策しているが、未だ発見できていない。


 「まあ、そう簡単に見つかるもんでもないでしょ」

 ネラはそう言うが、エルヴィアは成果を出せないことに焦りを感じている。

 

 ダークエルフの存在がずっと気になっているのだ。

 

 もし、先に彼らに〈遺物〉を奪われたら――

 次の襲撃に耐えられないかもしれない。


 エルフやドルイド達にも尋ねてみたが、〈遺物〉に関して目ぼしい情報は得られなかった。

 せめて、なにかしらの糸口があればいいのだが――


 「情報ねえ……あ、そうだ!」

 ネラが人差し指を立てる。

 「あのね、そろそろドルイドの村で収穫祭があるんだよ」


 その話は、秋に入る頃に聞いていた。


 「収穫祭……」

 「アタシが村にいたのは、ずっと前だから忘れてたよ。その異人はさ、色々な品を持って交換しに来るみたいなんだ」


 異人――

 それは初耳だった。


 「アタシが村にいたのは、ずっと前だから忘れてたよ。その異人はさ、故郷から色々な品を持って交換しに来るみたいなんだ」


 異民族との交易、ということか。


 「今年はアタシらも祭に参加していいみたいだし、その異人なら〈遺物〉のこと、知ってるかもしれないよ」


 それは確かに、良い考えかもしれない。


 「ネラ、それは名案ね。ママナも誘って、収穫祭に行ってみましょう」


    †


 数日後――

 拠点で暮らす闇ギルドのメンバーは、皆でドルイドの収穫祭に集った。


 お祝いにパンや酒、干し肉などを渡し、大層喜ばれた。


 エルヴィア達は酒宴の席に招かれ、夜は大いに飲み食いを楽しんだ。

 宴にはエルフも何人か参加している。


 「――あ、あれだよ、ばあちゃんの近くに座ってる人」

 「ああ、例の異民族ね?」


 夜なので、はっきりとは見えないが――


 露出の多い褐色の肌。

 顔や身体に描かれた紋様。

 篝火に照らされたその姿は、どことなくネラに似ている気がした。


 「はあぁ、なるほどぉ!」


 隣に座っていたママナが突然叫んだ。

 エルヴィアは驚いたが、周りは賑やかな声が飛び交っていて、誰も気にする者はいなかった。


 「どうしたの、ママナ」

 「あの方々、多分〝ディ〟ですねぇ」

 「〝ディ〟……?」

 「〈ディ〉の民です。いわゆる〝古代人〟のことですよ」


 古代人――?


 「前に話したでしょう。かつて我らの先祖が弾圧した先民達ですよ」

 「まだ――生き残っているの?」

 「生き残ってるもなにも、〝ネラ様〟だってその末裔のはずですよ。なんたって、魔女なのですから」


 古代人は魔術を自在に操る者達と聞いている。


 「そうですよ。彼らは迫害され、各地へ散り散りとなった。あそこに座っているのは、おそらくは東方へ追われた方々の子孫でしょうね」


 ディの民――

 彼らなら、〈神の遺物〉の在り処を知っているかもしれない。


 「興味深いですねぇ! 東方へ移ったディと話したことはないのです。ちょっと、行ってみましょう!」


 ママナは立ち上がり、すたすたと歩いていく。

 エルヴィアも慌てて後を追った。


 「こんばんは」


 ママナは、ディの民と思しき、ふたりの男女の前で膝をついた。


 「我が名はママナ。こちらはエルです――」


 褐色の男女はママナを見る。

 顔立ちは、随分と若い。

 そして少々、表情が硬い。


 「我らは、失われた知識を探し求める者。失礼とは存じますが、あなた方は偉大なるディの一族ではありませんか?」


 若いふたり組は、互いの顔を見つめている。

 どうやら困惑しているらしい。


 「これこれ、怖がらせちゃいけないよ――」


 隣に座っていたドルイドの長が、ママナを嗜めた。


 「ママナは、そんなに怖いですかぁ?」

 「お前が、というより――その髪と瞳の色さね」


 白金(プラチナ)の髪。

 そう――貴族は、彼らを虐げた者達の子孫なのだ。


 「すまんなぁ、先に言うておくべきだった。このふたりは、危険な者達ではない。我らの友人じゃ」


 長の言葉で、若いふたりの顔が少しだけ和らいだ。


 「それで、こやつらに何用だい?」

 ドルイドの長は、エルヴィアに尋ねる。


 どう切り出すべきか――

 いきなり〈遺物〉のことを訊いても、警戒されかねない。


 エルヴィアは、しばし考えてから口を開いた。


 「お、お酒はいかがですか――」

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