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忌み指輪の召喚令嬢 ~ 辺境伯の娘は闇ギルドと手を結ぶ  作者: 佐藤猛山
第2章「外の世界へ」

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9 再会と決断

初めての探索を終え、エルヴィアはネラと共に闇ギルドの隠れ家へ帰る

 「いやはや、近頃は商売にも難儀しますね」


 サルディアの隠れ家の地下――

 パリオが下りてくるなり、独り言のようにこぼした。

 

 「前にも増して、ポーションの粗悪品が出回ってまして。このままでは安物に押し負けてしまいますな」

 

 奥でポーションを精製していたネラが、首だけを覗かせる。

 「こっちはちゃんと〝効く〟ヤツを作ってるのにぃ。パリオの売り込みが下手っぴなんじゃないのぉ?」


 「いえ、これは市場原理の問題でして――」

 パリオは金袋をテーブルに置いた。

 その音や膨らみ具合から、かなり入っているように感じた。

 「ここに、ネラの取り分を置いておきますよ」


 早速、気になっていたことを尋ねる。

 「ヴァーガルト卿、この青い石がなにか、知っていますか?」


 エルヴィアの手に光る宝石を見たパリオは、感心したような面持ちで答える。

 「ほう、これは恐らく〈トラーハ・ジェム〉ですね……どこでこれを?」


 モルディレインで遭遇したゴーレムのことを伝えると、パリオはやけに大げさな反応を見せた。


 「なるほど……まず間違いなく、〈古代人〉の仕業でしょうね」

 「古代人、ですか」

 「ええ。〈トラーハ・ジェム〉を用いて石造りのゴーレムを動かすなど、〈教会〉の司祭や魔術師(ウィザード)にも不可能でしょう」


 古代人の魔術など、御伽噺と思っていたが――


 「しかし、あなた方は現実に見たのでしょう? ならばそういった技術も存在するということです。良い知見を得ましたね」


 気づけば、ネラがいつの間にかテーブルの前に来ていた。

 「思ったより少ないなぁ……」

 「最近は戦や大規模な遠征もないですからね。ポーションの需要が落ち込んでいるんですよ」

 ネラは売上に不満を感じているようだ。


 三人が互いの近況を話していると、カルスが地下へ下りてきた。


 「ふたりとも無事に帰ったか」


 数日、顔を合わせていないだけなのに、随分と久しぶりに感じる。

 先に帰ったドグやムースカリトゥとは会ったのだろうか。


 「奴らから大体の報告は受けた。エルも活躍したようだな。ギルドにとっても喜ばしいことだ」

 カルスはそう言うと、金袋を開いた。


 「今回の報酬だ。なかなか重要な情報を持ち帰ってくれたし、取り分には多少、色をつけておく」

 

 カルスから硬貨を受け取る。

 報酬は、武器を売った金よりずっと多かった。

 その金の重みは、探索という仕事の価値を語っていた。


 「お前達が出会った妖精(ニンフ)だが、ディードルグから逃げてきたと言ったそうだな」

 「うん、言ってた」

 ネラが金を数えながら、カルスの問いに答える。


 「実は、南方が少しキナ臭い。ディードルグ城伯の仲介役と連絡が取れなくなってしまった。こちらの動きに気づかれた可能性がある」


 それはつまり――〝死体の偽装〟が露見した、ということだろうか?


 「それはまだ分からん。他の問題で立て込んでいる、とも考えられる」

 「あ、そう言えば、妖精(ニンフ)はディードルグに魔物が出た、みたいなこと言ってたね」

 「それは俺も気になっている」


 カルスは口元に手を当てて考えている。


 「パリオ――西の方はどうなってる?」

 「商人ギルドは、これといった動きはありませんね」

 「ふむ、予想より動きが鈍いな……」

 「私の感触では、商人達はまだ東方進出に本気ではないかと」


 ディードルグ城伯と商人ギルドの思惑は、必ずしも一致していないのか。


 「焦っているのは城伯だけなのか……」

 斜め下に視線を落とし、カルスが呟く。

 「――辺境伯殺しも、城伯の先走りの結果か?」

 「そうかもしれませんな。やり口があまりに強引すぎる」


 カルスの表情が険しさを増していく。

 

 「一度、俺もその妖精(ニンフ)に会ってみようと思う」

 

 「えぇ?」

 ネラは、カルスの言葉に面食らう。

 「案内を頼めるか?」

 「うぅん、アタシは精製があるからなぁ……」


 妖精(ニンフ)の泉から汲んだ水で、作りたいものが沢山あるらしい。


 「エルはどうだ? 行けるか?」

 カルスに問われ、少し考える。


 前回と同じ経路を進むなら、多分やれるだろう。

 準備資金にも余裕がある。


 「同行します――」

 エルヴィアは、短く答えた。


 「私も、ご一緒してよろしいかな?」

 

 パリオが手を上げる。

 突然、どうしたのだろう。

 

 「いやなに、偶には東方の景色を眺めるのもまた一興かと。それに――ふたりで進むには少々、危険な土地だ」


 カルスは小さく鼻を鳴らした。

 「では、エルとパリオに頼もう。必要なものがあれば言ってくれ」


 傍らで、ネラが目を丸くしていた。

 「帰って早々、また東方(あっち)に? 頑張るねぇ……」

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