第004話:美味しいキャンプ飯と、お供の申し出
「あの、フィリアさん。とりあえず平伏するのをやめて立ち上がってください。恥ずかしいですから」
「はっ、古代魔法使い様のお言葉とあれば……!」
フィリアは緊張した面持ちで立ち上がった。
その瞬間、彼女のお腹が――ぐぅぅぅ、と非常に大きな音を立てて鳴り響いた。
「……あ」
フィリアの顔が一瞬にして真っ赤に染まり、長い耳まで赤くなる。彼女は恥ずかしさのあまり俯いてしまった。
「……何日も祈りを捧げていて、何も食べていなかったのです」
「なるほど。じゃあ、まずはご飯にしましょうか」
アキラは微笑み、アイテムボックス(デバッグインベントリ)から携帯用の魔導コンロとフライパンを取り出した。さらに、森への道中で幸運チートを使って手に入れていた『幻のハーブ』と、街で買っておいた鳥のモモ肉を取り出す。
「今から簡単な料理(キャンプ飯)を作りますね」
「そんな、古代魔法使い様自らにお料理をさせるなんて……! それに、ハーブの香りがとても芳醇ですが、これはいったい……?」
フィリアは不思議そうに、アキラの手元を見つめていた。
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ジューーーッ!
フライパンの上で、皮目をパリッと焼かれた鶏肉が美味しそうな音を立てる。
アキラがすり潰した幻のハーブと、現地で手に入れた塩コショウでシンプルに味付けをすると、周囲にたまらない香ばしい匂いが立ち上った。
「はい、完成です。『ハーブチキンのソテー・森の精霊風』といったところでしょうか。どうぞ、温かいうちに食べてください」
「い、いただきます……」
フィリアはフォークを使い、切り分けられた肉を恐る恐る口に運んだ。
ぱくり。
一口噛んだ瞬間、フィリアの動きが完全に止まった。
「ふぃ、フィリアさん……?」
「な、なんですか、これは……っ!? お肉が口の中でとろけて、ハーブの爽やかな香りと肉汁が爆発するように広がって……!」
フィリアは目を見開き、今度は夢中で次の肉を口に放り込んだ。
「美味しい……! 美味しいです! エルフの里の料理は味の薄い精進料理ばかりで、こんなに刺激的で奥深い味わいのお料理は食べたことがありません!」
「それは良かったです。おかわりもありますよ」
「はい! ぜひお願いします! (満面の笑み)」
アキラは嬉しそうに食べる彼女の姿を見ながら、前世の辛い仕事から解放され、本当に異世界に来て良かったとしみじみ感じていた。
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「ごちそうさまでした。一生の思い出になるほど美味しい食事でした……」
綺麗に平らげたお皿を見つめ、フィリアは満足げなため息をついた。
「ところで、アキラ様(いつの間にか様呼びが定着していた)。このような偉大な魔法と料理を扱えるお方が、なぜこのような辺境にいらっしゃるのですか?」
「ああ、実は女神様に『世界の綺麗な絶景や美味しいものの観光マップを作ってほしい』と頼まれて、旅をしているんです。この湖もその観光地の一つにしようと思いまして」
「観光マップ……。つまり、アキラ様は世界を旅されるのですね?」
「ええ、そうです」
フィリアはアキラをじっと見つめ、何かを決意したように立ち上がった。
「アキラ様。どうか、このフィリアもあなたの旅にお供させていただけないでしょうか! アキラ様の偉大な旅をお支えし、外の世界を学びたいのです!」
「え? でも、旅はのんびりですし、危険な魔王退治とかはありませんよ?」
「それが良いのです! アキラ様のおそばで、あの美味しいお料理をまた学びたいという不純な動機もありますが……!」
少し顔を赤くして正直に告白するフィリアに、アキラは苦笑しつつも、手を差し伸べた。
「いいですよ。一人旅より賑やかな方が楽しいですしね。これからよろしく、フィリア」
「はい! どこまでもお供いたします、アキラ様!」
アキラは『写像水晶』を取り出し、澄み渡った美しい湖と、満面の笑みを浮かべるエルフの少女の姿をパシャリと撮影した。
『リア:アキラさん! エルフの美少女をナンパしたうえに、こんな素晴らしい絶景を……! うらやましい! 私も今すぐ有給申請します!』
相変わらずの女神からのメッセージをスルーしながら、アキラはフィリアと共に、次の目的地である宗教都市サンクタスを目指して歩き出した。




