第030話:黄金ピザの宴と、美味しさの写像
お腹がいっぱいになった妖精リーネがアキラの頭の上で満足そうに羽を休める中、アキラは立ち上がって周囲の仲間たちを見渡した。
「よし、それじゃあ次は僕たちもちゃんとしたお昼ご飯にしましょう。せっかくですから、収穫したばかりの黄金小麦を使ってみますね」
「賛成! アキラの作るご飯なら、何でも大歓迎だよ!」
サリアが元気に手を挙げる。
「黄金小麦を使ったお料理……。一体どのようなものになるのか、今から楽しみで仕方がありませんわ」
フィリアも期待に胸を膨らませ、喉を鳴らした。
アキラがデバッグUIの加工機能で手早く小麦粉を作り、そこに塩と水、少しの魔力を通して即席の酵母を馴染ませてこねる。アキラのチート能力により、本来なら時間のかかる発酵プロセスも一瞬で完了した。
平らに伸ばした生地の上に、オアシス都市サフィールで仕入れた新鮮なスパイスを効かせた挽肉と、とろける乳干物を贅沢に載せる。
そして、アキラが土の魔法で即席の小さな石窯を作り出し、そこに火の魔法をエンチャントした薪をくべる。ピザを窯へ滑り込ませると、温室内にはあっという間に香ばしいスパイスと、焦げたチーズのたまらない香りが充満した。
「できました。『黄金の窯焼きキーマピザ』です!」
アキラが窯から取り出したのは、黄金色の生地の縁がぷっくりと膨らみ、表面の挽肉とチーズがジワジワと音を立てている、完璧な焼き上がりのピザだった。
「わあぁ……! 何これ、すっごく美味しそう!」
サリアが真っ先にピザを手に取り、大きく一口かじった。
「ふあ、ふあつ……! おいしいっ! 生地がね、モチモチなのに外側がカリッとしてて、小麦自体の甘みがすごいんだよ! ピリ辛のお肉とすっごく合う!」
「はぐ……。本当に……! 黄金小麦で作られた生地は、ただの小麦とは香りの深みが全く違いますわ! この生地だけでも何枚でも食べられてしまいそうですわね!」
フィリアも上品さを忘れ、ハフハフと息を吐きながら貪り食っている。
「アキラ、美味しい……。ちょっとピリピリするけど、チーズが甘くて、すごく好き」
エルナも小さな口でピザを食みながら、嬉しそうに目を細めた。
「ふふ、オアシスのスパイスをこんな風に活かすなんて、本当にアキラさんは料理の天才ね。これなら砂漠の旅の疲れも一気に吹き飛んじゃうわ」
セシリアが幸せそうに微笑みながら、家計簿の手を止めてピザを味わう。
「リーネも食べるの! あむ……ふみゅぅ、おいしすぎるのー! アキラはやっぱり、世界一の料理人だよ!」
頭の上のリーネも、アキラが取り分けたミニピザを両手で持って幸せそうに頬張っていた。
さらに食後、アキラは『氷結魔導箱』から取り出した冷たいクリームと果実、そして贅沢にカットした黄金マンゴーを重ね合わせ、甘い蜂蜜シロップをかけた『黄金のフルーツパフェ』をデザートとして振る舞った。
黄金マンゴーの濃厚な甘みと、ひんやりとしたクリームのハーモニーに、一同(特に甘いものに目がないフィリアとリーネ)は完全にノックアウトされ、温室の柔らかな芝生の上で、しばらくのんびりと寝転がって過ごした。
心地よい風が吹く中、アキラは懐から四角い魔道具――『写像水晶』を取り出した。
「さて、お腹もいっぱいになりましたし、今回の旅の記念に写像を撮りましょうか。リア様への報告用でもありますからね」
「写像ですわね! ぜひ、この美しい黄金の庭園を背景に撮りましょう!」
フィリアが張り切って立ち上がる。
アキラは写像水晶を適当な高さの石碑の上にセットし、タイマー機能を起動させた。
背景には、黄金色に優しく輝く自動農園と、クリスタルのように澄んだ水が吹き出る噴水。
アキラの頭の上にはリーネが誇らしげに胸を張って座り、両脇にはサリアとフィリアが華やかに並ぶ。アキラのすぐ隣で、彼の服の袖をぎゅっと握りしめて少し頬を赤らめるエルナ、そして一歩下がって穏やかに微笑むセシリア。
「はい、撮りますよ。3、2、1――」
チカッと写像水晶が柔らかな光を放ち、アキラたちの笑顔がその結晶の中に美しく記録された。
「うん、いい写像が撮れましたね」
アキラは完成した写像を確認し、デバッグUIを通じて女神リアへと送信した。
送信した直後、アキラの脳内にリアの悲鳴のような通信が響き渡った。
『ちょっとアキラぁ! またそんな美味しそうなピザとかパフェとか食べてる! それに何その可愛い妖精さん! 私も頭の上に乗せてもらいたい! もう有給休暇申請して、今すぐそこに行っちゃおうかなぁ!?』
「あ、リア様。お仕事頑張ってくださいね。それじゃあ」
アキラは脳内通信をそっとオフにし、微笑みながら写像水晶をポケットにしまった。
「さて、お腹もいっぱいになりましたし、遺跡のバグも無事にクリーンアップできました。リーネも仲間に加わりましたし、そろそろ出発しましょうか」
「うん! リーネ、アキラの頭の上が気に入ったから、どこまでもついていくの!」
リーネが嬉しそうにアキラの髪を毛づくろいする。
「次の目的地は『砂の都市』だよ。そこには珍しい魔導具や面白いマーケットがたくさんあるんだから!」
サリアが馬車の点検をしながら快活に笑った。
「まあ、楽しみですわね。次なる土地でも、素晴らしい景色と美味しい食べ物に出会えることを祈りましょう」
フィリアが祈るように胸元で両手を組む。
「アキラ……。砂の都市でも、隣にいてね」
エルナがアキラの袖を軽く引っ張る。
「はいはい、それじゃあ出発するわよ。アキラさん、荷物の積み込みをお願いね」
セシリアのハキハキとした声に促され、アキラは「はーい」と穏やかに返事をした。
黄金の光に包まれた迷宮都市を背に、アキラたちの馬車は、再び広大な砂漠の地平線へと向けてゆっくりと走り出した。




