第022話:思い出の写像と、旅はどこまでも
楽しい有給休暇の三日間は、あっという間に過ぎ去っていった。
最終日の夕暮れ時。青空から夕日の茜色へとグラデーションを描く渓谷の空に、アキラたちのデバッグによって生まれた巨大な七色の虹が、美しく架かっていた。
「うぅぅ……いやです、帰りたくありません! 神界に戻ったら、また山のような書類仕事とクレーム対応の日々なんですよ! 残業確定なんです!」
リアは芝生の上にのの字を書きながら、子供のようにじたばたと駄々をこねていた。
アキラはその姿に苦笑しながら、手にした『写像水晶』を見つめる。
「まあまあ、有給はいつか終わるものですよ。また仕事を頑張って、有休を取ればいいじゃないですか」
「そうですわよ、リア様。また遊びにいらっしゃれば、アキラ様の美味しいお料理をいつでも食べられますわ」
「うん。エルナも、リアにまた会いたい」
フィリアとエルナが優しく声をかけ、セシリアも「仕方ないわね。その時までに、リア様の分の食費も家計簿に入れておいてあげるわ」と肩をすくめた。
リアはうるうると瞳を潤ませ、嬉しそうに立ち上がった。
「みんな……! ありがとうございます! 私、絶対に仕事を爆速で終わらせて、また有給もぎ取ってきます!」
────────────────────
「それじゃあ、帰る前に、みんなで記念の写像を撮りましょうか」
アキラが写像水晶を適当な岩の上に固定し、自動撮影の機能を作動させた。
「はい、みんな並んでくださいね。はい、チーズ」
アキラが輪の真ん中に立つと、エルナが左腕をぎゅっと抱きしめ、フィリアが右側から嬉しそうに寄り添う。セシリアはアキラの少し後ろから、お姉さんのような落ち着いた笑みを浮かべ、リアはアキラの正面からひょっこりと顔を出して、とびきりのダブルピースを決めた。
パシャリ。
水晶の光が瞬き、彼らの笑顔と、背景の美しい渓谷、そして空に架かる七色の虹が、一枚の美しい『思い出の写像』として保存された。
【写像:『旅人たちと女神の休日』を保存しました】
【旅の記録マップに登録完了】
「うふふ、宝物にしますね!」
リアはアキラから受け取った写像のコピーを胸に抱きしめ、満足そうに頷いた。
彼女の体の周囲に、ゆっくりと神界へと帰還するための白い光の粒子が舞い上がる。
「それではアキラさん、みんな! また会う日まで、お気楽な旅を楽しんでくださいね!」
「ええ、リアさんもお仕事頑張ってください」
リアは満面の笑みで手を振り、光の粒子となって、ゆっくりと夕空の彼方へと消えていった。
────────────────────
女神が去り、静けさを取り戻した渓谷に、夜の帳が降り始める。
アキラはデバッグマップを起動し、さらにその先にある未開のフロンティアへと視線を向けた。
「さて、次はどこへ行こうか」
「南の砂漠エリアに、とても綺麗なオアシスがあるそうですわよ、アキラ様!」
「オアシス……。エルナ、いっしょに泳ぎたい」
「砂漠のオアシスね。新しい食材やスパイスが手に入りそうだから、いい市場があるといいわね」
フィリアが砂漠のオアシスマップを覗き込み、エルナがアキラの手を優しく握り、セシリアが旅の予算を計算しながら歩き出す。
アキラは彼女たちの賑やかな声を聞きながら、心地よい夜風を浴びて、一歩を踏み出した。
女神に頼まれた観光マップ作りは、まだ始まったばかりだ。
アキラとヒロインたちの、お気楽でストレスフリーなバグ取り旅行は、これからもどこまでも続いていく。




