第021話:絶品渓谷グルメと、女神のデレ
「よし、お騒がせバグも直ったことですし、川で魚でも釣りましょうか。今日のお昼ご飯のおかずにね」
虹のかかる美しい川のほとりで、アキラはアイテムボックスから釣り竿を取り出した。
川の中を覗き込むと、透明な水の中を、丸々と太った魚たちが元気に泳いでいるのが見える。
「アキラ様、釣りですの? でも、川魚は泥臭くてあまり美味しくないと聞きますが……」
「大丈夫。俺の『幸運』チートがあれば、一番美味しいやつが勝手に釣れますから」
アキラが針に餌をつけてヒョイと川に投げ入れた。
すると、糸が水面に落ちた瞬間、ウキがものすごい勢いで水中に引き込まれた。
「お、さっそくヒット」
アキラが竿を軽く引き上げると、バシャバシャと激しく水を跳ね上げながら、虹色に輝く斑点を持つ巨大な魚が飛び出してきた。
【解析:『虹岩魚』を収穫しました】
【特徴:渓谷の清流にしか棲まない伝説の川魚。身が非常に締まっており、脂がのって絶品。レア度:高】
「おお、大物だ。しかもUIによれば伝説の魚らしい。これならご馳走になりますね」
アキラがその後も竿を垂らすと、わずか十分足らずで十匹以上の『虹岩魚』が面白いように釣れた。入れ食い状態である。
釣れた魚を見たフィリアとエルナは、「美味しそうですわ!」と大興奮していた。
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お昼時。
アキラは魔導コンロの上に大きな鉄鍋を用意し、調理を開始した。
鱗と内臓を綺麗に取った虹岩魚をオリーブオイルでパリッと焼き、マリーナで仕入れた新鮮なアサリやトマト、そしてハーブをたっぷり投入する。仕上げにバルカンで貰ったドワーフの白ワインを注ぎ、蓋をしてじっくりと蒸し焼きにした。
ジューーー、コトコト……。
鍋から、魚介の濃厚な旨味とハーブの爽やかな香りが、湯気と共にキャンプ地に広がる。
「いい匂い……! アキラさん、この匂いだけでお腹が鳴っちゃいそうです!」
リアが鍋を覗き込み、よだれを垂らしそうな顔で待っている。
「はい、完成です。アキラ特製『虹岩魚とアサリのアクアパッツァ』です。熱いうちにどうぞ」
皿に盛り付けられたふっくらとした白身と、旨味が凝縮されたスープを、リアはスプーンで掬ってハフハフと口に運んだ。
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「おいひいいいいいいいぃぃぃ!」
リアの顔が一瞬にしてとろけた。彼女は頬を押さえ、身悶えするようにテーブルを叩く。
「何ですかこの美味しさは!? 白身が信じられないくらいふっくらしていて、アサリと魚のスープが絡み合って……! 神界の冷たい合成レーションとは天と地ほどの差があります!」
「ふふ、アキラ様の料理は悪魔的な美味しさですわよ」
「アキラの料理……世界一」
フィリアとエルナが自慢げに言い、セシリアも「全く、アキラさんにお料理を任せると、胃袋が掴まれすぎて困るわね」とスープを美味しそうに楽しんでいる。
リアはスープまで綺麗に平らげると、突然アキラの前に膝をつき、彼の両手をぎゅっと握りしめた。その瞳は完全に潤んでいる。
「アキラさん……! 決めました! 私、アキラさんのお嫁さんになります! アキラさんの奥さんになる人は世界一幸せです! もう神様辞めてもいいです!」
「え? いや、神様を辞められても困りますが……」
アキラが引き気味に苦笑する。
その瞬間、背後からピキピキと凍りつくような音が響いた。
「ちょっと、リア様? 女神様といえど、アキラ様へのプロポーズは抜け駆けが過ぎますわ!」
「アキラは、エルナのもの……。神様でも、だめ……」
「そうね。借金持ちの駄女神様を我が家の家計に入れるのは、大赤字だからお断りだわ」
フィリア、エルナ、セシリアがそれぞれの視線でリアをロックオンし、笑顔のまま凄まじい威圧感を放つ。
リアは「ひゃんっ! みんな目が怖いです!」とアキラの背後にそそくさと避難した。
アキラは、背中にぴったり張り付く女神と、目の前の可愛いヒロインたちの視線を受け流しながら、冷たいお茶を飲んでのんびりとため息をついた。




