第015話:悪徳商人の罠と、呪縛の契約書
掃除を終えたセシリアが、ギルドの裏手でゴミを整理していた。
そこに、アキラとフィリア、そしてエルナが近づいていく。
「お仕事、お疲れ様です。これ、差し入れにどうぞ」
アキラが、冷たい黄金リンゴジュースを差し出した。
セシリアは一瞬驚いて警戒の目を向けたが、アキラの人畜無害な笑顔と、隣にいるエルフの少女、そして背中に可愛い白い翼(※大聖堂を離れてからは、普段は魔法で隠しているが、アキラたちの前だけでは少し出している)を持つ大人しそうな少女を見て、少しだけ肩の力を抜いた。
「……私に、ですか? お気遣いは嬉しいですが、見ず知らずの旅人から物をいただくわけにはいきません」
「まぁまぁ、冷たいものでも飲んで落ち着いてください。さっきの毛皮の商人とのやり取り、少し見ちゃいましてね」
アキラが強引にコップを握らせると、冷たさに驚きつつも、セシリアは一口喉を潤した。その瞬間、彼女の目が見開かれる。
「……美味しい。全身の疲れが、すっと引いていくような……」
「黄金リンゴの特製ジュースですからね。疲労回復には一番ですよ」
セシリアはコップを見つめ、小さく自嘲気味に笑った。
「お優しいのですね。私はセシリア。見ての通り、没落した貴族の娘で、今は借金のためにここで酷使されている身です」
「さっきの商人から『契約』で縛られている、とフィリアが言っていましたが」
「ええ……。実家が悪徳商人ガストンに騙され、法外な金利の借金を背負わされたのです。その際に交わされた『契約魔導書』の力で、私の魔力は制限され、もし期限までに返済できなければ、私のすべてが彼の奴隷となるよう、魂に契約が刻まれてしまっています」
セシリアが手首をさする。そこには、うっすらと黒い契約の紋様が浮かんでいた。
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「その『契約魔導書』とやらは、どこにあるんですか?」
アキラが何気なく尋ねる。
「ガストンが常に持ち歩いている彼の個人金庫の中です。教会の承認を得た正式な魔導契約書なので、たとえ彼を倒しても、契約書自体を破棄するか、借金を完済しなければ契約は消えません。物理的に破ろうとしても、強力な魔法障壁で守られていますから……」
セシリアは諦めたようにため息をついた。
だが、アキラの『デバッグUI』は、すでにマッピング情報から街の奥にあるガストンの商会ビルをスキャンし、ターゲットのデータを補足していた。
【クエスト目標『ガストンの契約魔導書』をロックオン】
【バグクラス:『不当契約(システム改ざん)』】
【バグレベル:8】
「なるほど。つまり、その本さえ『クリーンアップ』しちゃえば、契約自体が消えるわけですね」
「え……? 何を言っているのですか? あれは国と教会の法で守られた絶対の契約書ですよ?」
セシリアが不思議そうに眉をひそめる。
アキラはいつものようにのんきに笑い、エルナとフィリアに頷いて見せた。
「大丈夫ですよ。俺たちの旅に、奴隷契約なんていう不快なデバフ(バグ)は邪魔ですからね。ちょっとガストンさんのところへ行って、契約書をデバッグしてきましょう」
「アキラが行くなら、絶対、消える」
「アキラ様のバグ取りの技術、見せていただきましょう!」
フィリアとエルナが当然のようにアキラに同意するのを見て、セシリアは「この人たち、何を言っているの……?」と完全に置いてけぼりになっていた。




